★本記事は敬称略で進めます。
東京五輪柔道男子100kg級金メダリスト、ウルフ・アロン。その輝かしい実績を引っ提げ、彼がリングに足を踏み入れた瞬間、多くの格闘技ファンが胸を躍らせたはずです。しかし、デビュー戦を見て、「あれ? 受け身が危なっかしいのでは?」「技のバリエーションが少ない」と感じた方も少なくないでしょう。
柔道の頂点を極めた男が、なぜプロレスの基礎である「受け身」や「ロープワーク」で苦戦しているように見えるのか? そこには、柔道とプロレスという似て非なる競技の、決定的な構造の違いが存在します。
本記事では、ウルフアロンの技術的な課題を徹底検証。さらに、プロレス界のレジェンド・小川直也や恩師・鈴木桂治が下した「本音の評価」を紐解き、彼がプロレスラーとして本当に通用する才能を持っているのか、その真価に迫ります。
- ウルフアロンの受け身が「下手」に見える技術的な理由と背景
- 「技が少ない」と言われる現状と、今後のプロレスラーとしての将来性
- 小川直也や武藤敬司らが語った、忖度なしの「評価」と「期待」
なお、ウルフアロンについては、次の記事もどうぞ。


ウルフアロンの受け身は本当に下手なのか?プロレスデビュー戦で見えた課題と光
輝かしい金メダルの実績とは裏腹に、リング上の動きに違和感を覚えたファンも多いはず。ここではデビュー戦で見えた「受け身」や「ロープワーク」の具体的な課題点を洗い出します。
「バンプ(受け身)」の違和感はどこから?柔道との決定的な違い
プロレスは受けの芸術です。
プロレスファンが最も気になったのは、マットに背中を叩きつける「バンプ」のぎこちなさではないでしょうか。柔道の受け身は「身を守るため」に行いますが、プロレスの受け身は「技の威力を観客に伝え、かつ安全に着地する」ためのものです。
ウルフ選手の受け身は、どうしても顎が上がり気味で、背中全体ではなく「点」で落ちているように見える瞬間があります。これは長年のプロレスファンから見ると「首へのダメージが蓄積する危険な落ち方」に見え、ヒヤリとする原因となっています。
ロープワークに見る「不慣れさ」と身体能力の高さのギャップ
ロープワークはプロレス独自の最もユニークで素敵なテクニックです。
リングを対角線に走るロープワークでも、歩数の合わせ方や反転のタイミングに迷いが見られました。トップロープに背中を預ける際、体重を乗せきれていないため、跳ね返りの勢いを殺してしまっています。
しかし、特筆すべきはそのスピードです。ステップこそぎこちないものの、初速の速さとダッシュ力は重量級離れしており、「身体能力はすごいのに、使い方がもったいない」という歯痒さを感じさせました。
観客をヒヤリとさせたシーンの検証:技術不足か、慣れの問題か
プロレスは観客も当事者です。
そんな当事者をハラハラさせてしまうシーンがありました。
試合中、相手の投げ技に対してとっさに身体を捻って着地しようとする場面がありました。これは柔道家としての防衛本能ですが、プロレスでは逆に大怪我につながりかねない動きです。
「下手」というよりは、まだ「プロレスラーの身体」になりきれていない、というのが正確な評価でしょう。技術そのものがないわけではなく、プロレス特有のムーブメントへの「翻訳」が完了していない段階と言えます。
なぜ柔道金メダリストでも「プロレスの壁」にぶつかるのか
世界一の格闘家であっても、プロレスのリングには魔物が棲むと言われます。なぜ柔道の技術がそのまま通用しないのか、両競技の決定的な構造の違いからその理由を分析します。
「投げるプロ」と「受けるプロ」:背中をマットにつけることへの本能的拒否
柔道において、背中を畳につけることは「一本負け」、つまり敗北を意味します。ウルフ選手は人生の大半を「いかに背中をつけないか」に費やしてきた男です。
一方、プロレスは「背中をマットにつけて技を受ける」ことが前提の競技。この本能的な拒否反応は、一朝一夕で拭えるものではありません。彼が時折見せる受け身の迷いは、金メダリストとしての防衛本能が優秀すぎるがゆえの副作用とも言えるのです。
競技柔道にはない「魅せるための間」と表現力の難しさ
柔道はコンマ一秒を争う勝負ですが、プロレスには観客に技の痛みや感情を伝えるための「間(ま)」が必要です。
ウルフ選手はまだ、技を食らった直後にすぐに起き上がろうとしたり、痛みを表現する前に次の動作に移ろうとしたりする傾向があります。この「競技者としての真面目さ」が、プロレスというエンターテインメントの中では「淡白」「塩(しょっぱい)」と映ってしまう原因になっています。
スタミナ配分の違い:短期決戦の柔道とロングマッチのプロレス
柔道は数分間の爆発的な無酸素運動の繰り返しですが、プロレスは15分、20分と続く有酸素運動の側面も持ちます。
序盤の動きはキレていても、試合中盤から一気に動きが止まる場面が見られたのは、このスタミナ配分の違いに慣れていないためでしょう。受け身を取り続けることで削られる体力は、柔道の乱取りとはまた違った種類の消耗を強いるのです。
辛口レジェンドたちの本音評価!小川直也と鈴木桂治は何を語ったか
ネット上では厳しい意見も飛び交う中、真のプロフェッショナルたちは彼をどう見たのでしょうか。小川直也、鈴木桂治、そしてプロレス界の神々が語った言葉には、ファンの予想を超える「真実」がありました。
「元暴走王」小川直也が指摘した、もっともな「欠点」と…
まずは、誰もが感じた「物足りなさ」について、プロの視点から冷静に分析された言葉を紹介します。
かつて柔道からプロレスへ転向し、トップを極めた小川直也氏は、ウルフ選手のデビュー戦についてこう語っています。
「やっぱり体形だよ。(入団発表から)半年あったんだから、もうちょっとちゃんと絞ってほしかったな」
引用元:東スポWeb
「オレは(転向発表から)1か月ちょっとでデビューしたけど、猪木さんには腹が引っ込むまで、柔道着を着てろって言われた。猪木さんは選手の腹が出ていることを許さなかった。だからオレは脱がなかったんだよ(中略)新日本のヤングライオンたちは、みんなシックスパックの腹筋ですごいじゃん。あれくらい目指してほしいね」
これは、ファンの声を代弁する痛烈な指摘です。
確かにリング上のウルフ選手は、柔道家特有の重心の低さはありましたが、プロレスの長い試合時間を戦い抜くための「レスラーの体」には仕上がっていないように見えました。
スタミナ不足や動きの重さは、この「絞りの甘さ」に起因している。元暴走王の目はごまかせません。
しかし、ここからが本題です。「体が絞れていない=ダメ」で終わらないのが、ウルフ・アロンという男の底知れないところなのです。
また、小川直也は、欠点の指摘だけでは終わっていません。ウルフのポテンシャルも見抜いていました。
「ウルフは今できることを精一杯やっていた。良かったんじゃない」
引用元:東スポWeb
「(ウルフのファイトぶりについて)試合は面白かったよね。オレが知っている新日本の試合、バチバチやり合うストロングスタイルじゃなかったけど」
プロレス界の神々(武藤・藤波・棚橋)が見た「ダイヤの原石」
小川氏が「現在の課題」を指摘したのに対し、新日本プロレスの象徴であるレジェンドたちは、彼の中に「とてつもない未来」を見ていたようです。
武藤敬司「及第点」
天才・武藤敬司は、ウルフアロンを逸材と評価しています。
「まあ、及第点じゃないの。たださ、恋愛と一緒であんまり最初良いと、次から減点、減点となるしね。本当はできるなら、少しずつ『こういう良いところがあるんだな』と行ったほうが、お客さまに良い感じになるんじゃないの。まあ、良いんじゃない。」
引用元:東スポWeb
「(ウルフの今後については)まだ、わからない。こういう逸材ってのは、去る時も早いからな、みんな。」
プロレスラーにとって、技術は練習で身につきますが、「華」だけは天性のもの。
この「華」はお客さま(観客)との関係性で築くものですが、これは努力だけではいかんともしがたい。
リングに立っただけで観客の視線を集めるオーラ。武藤敬司は、ウルフにこの「華」の萌芽が見えたのかもしれません。それが「良かった」「及第点」ということなのでしょう。
武藤にこれを言わせた時点で、ウルフ選手はすでにプロレスラーとしての合格ラインを超えているとも言えます。
棚橋弘至社長「伸びしろあり」
新社長であり現役レスラーの棚橋弘至は、冷静にウルフを評価しています。
「デビュー戦ですよ、適応能力というかちょっと常識の、僕らがプロレス見てきて測れるものをはるかに超えている。これからもっと伸びしろがある。ビックリしました」
引用元:東スポWeb
あの棚橋が、ウルフの適応能力に驚いています。ウルフの伸びしろ楽しみでなりませんね。
藤波辰爾「いい素質を持ってる」
ドラゴン藤波辰爾もまた、ウルフのポテンシャルを評価しています。
「彼も柔道っていうものに一切こだわらず、プロレスに本気で取り組んでいることがうかがえた。投げに関しては柔道というベースがある。デビュー戦でEVIL選手を相手にあれだけのいい試合をやったら、次はハードルが高くなるけど、頑張ってほしい」
引用元:東スポWeb
「今後は彼次第。本人は『まだ物足りない』くらいに思ったほうがいい。これから先は長いしスタートだから、今日のお客さんは〝ご祝儀〟みたいなもの。覚悟の上だろうけど、これからがウルフの試練になる。いい素質を持っているので、期待しています」
今の完成度ではなく、素材としての質が違う。レジェンドたちは、今の「不格好な姿」の向こう側にある完成形を想像して、武者震いしているのです。
柔道界からの「絶縁状」という名の「愛」
そして、最も心を揺さぶられたのが、柔道界からのメッセージです。
通常、現役の柔道家がプロレスのリングに上がることは、柔道界にとってデリケートな問題になりがちです。
しかし、全日本男子監督の鈴木桂治氏は、あえてリングサイドに姿を現し、こう言い放ちました。
「ウルフアロンのプロレスラーとしての成功を願って、鈴木桂治をオリンピックチャンピオンのコーチにしてくれた感謝の気持ちを込めて、二度と柔道界に戻ってくるなよ!という激励を込めて!」
引用元:デイリー
これは「破門」ではありません。「退路を断ってやった」という、師としての究極の愛です。
この言葉には、「中途半端な気持ちでやるなら許さない。やるなら頂点を取れ。」という含意があると思うのは筆者 taoだけでしょうか。
この言葉「二度と柔道界に戻ってくるなよ!」を聞いて、ウルフ選手の覚悟が決まらないはずがありません。
また、パリ五輪を共に戦った村尾三四郎選手や斉藤立選手らも、
「プロレス自体初めてだったが、アロン先輩がめっちゃかっこよかったです。最初から、完全にプロレスラーでした。やっぱすごいなと。デビュー戦で普通はここまでできないと思うので、やっぱウルフアロンは才能があるんだなと。人気者の証というか、スター性がある」村尾三四郎選手
引用元:デイリー
「すごく興奮した。かっこよかったです。(エンタメとして)全部巻き込んでやるというのが柔道にはなくて新鮮で、そういう場に立っているウルフさんがすごかった。試合中に『いくぞー』って叫んだところが印象に残った。プロレス初心者で初めて見たけど、新鮮だった。めちゃくちゃ楽しかった。でも痛そうでした」斉藤立選手
などと、その変貌ぶりに驚きを隠せませんでした。
彼らは知っています。ウルフ選手がどれだけ柔道に真摯だったかを。だからこそ、その彼が「プロレスラー」の顔をしていることに、誰よりも衝撃を受け、そして応援しているのです。
「下手」の先にある可能性!ウルフアロンはプロレスラーとして通用するか
一見して分かる技術的な未熟さは、裏を返せば巨大な「伸びしろ」でもあります。過去の転向組の事例も踏まえ、彼が単なるゲスト参戦で終わらず、トップレスラーになり得る可能性を考察します。
「技が少ない」は伸びしろ!デビュー戦で見せた基本技のポテンシャル
現状、ウルフ選手の持ち技は基本的な投げ技やタックルに限られています。しかし、その一つ一つの「重さ」は本物です。
大技に頼らずとも、シンプルなボディスラム一発で会場をどよめかせることができるのは、重量級の本物の格闘家だけが持つ特権です。今後、プロレス的なテクニックを吸収し、技のバリエーションが増えていけば、「重くて速い」という手のつけられないレスラーに化ける可能性があります。
過去の柔道転向組と比較してわかる、ウルフ独自の「愛嬌」と「華」
過去、多くの柔道家がプロレスに転向しましたが、成功した選手に共通するのは「キャラクター性」です。ウルフ選手はテレビのバラエティ番組でも活躍するトーク力と、愛嬌のあるキャラクターを持っています。
黙々と戦う武骨な柔道家タイプとは異なり、マイクパフォーマンスや観客へのアピールもこなせる素養がある点は大きな武器です。この「華」は、興行であるプロレスにおいて技術以上に重要な才能と言えます。
今後の展望:技術向上とキャラクター開花で「第二の暴走王」になれるか
受け身やロープワークの課題は、実戦を重ねることで必ず改善されます。重要なのは、彼がこの批判をどう受け止め、どう進化するかです。
小川直也氏のようにヒール(悪役)として覚醒するのか、それとも愛されキャラとしてベビーフェイスの道を歩むのか。どちらに転ぶにせよ、彼が本気でプロレスに向き合い、身体をプロレス仕様に改造し終えたとき、我々は「完成された怪物」を目撃することになるでしょう。
プロレスラー、ウルフアロンに関するFAQ
- Q1. ウルフアロンのプロレスデビュー戦の相手は誰でしたか?
- A1. 詳細な対戦相手は試合の公式発表をご確認いただきたいですが、デビュー戦から実績のある選手と激突し、そのポテンシャルを見せつけました。
- Q2. 現在の身長と体重は?
- A2. 身長は181cmです。体重は柔道時代は100kg級でしたが、プロレス転向にあたり増量し、現在は110kg前後のビルドアップされた体格になっています。
- Q3. 柔道は引退したのですか?
- A3. 正式な引退表明というよりは、プロレスへの「挑戦・転向」という形です。ただし恩師・鈴木桂治氏の「戻ってくるな」という言葉通り、現在はプロレス一本に絞って活動しています。
- Q4. 小川直也以外に評価しているレスラーはいますか?
- A3. 前述の通り、武藤敬司や棚橋弘至、藤波辰爾といったレジェンドが彼の「華」や「素材」を高く評価しています。
- Q5. ウルフアロンの得意技(必殺技)は何ですか?
- A5. 現時点では、柔道仕込みの「大外刈り」や「内股」などの投げ技が中心です。今後はオリジナルのスープレックスや関節技の習得が期待されます。
- Q6. デビュー戦の勝敗はどうなりましたか?
- A6. 勝敗の結果以上に、試合内容での「受け身」や「立ち振る舞い」が大きな話題となりました。詳細は各団体の試合結果ページをご覧ください。
- Q7. 今後、新日本プロレスのG1 CLIMAXなどへの出場予定は?
- A7. 現時点では未定ですが、ファンの間では「将来的にはG1にエントリーしてほしい」という待望論がすでに上がっています。
- Q8. ネットでの評判は「下手」一色ですか?
- A8. 「受け身が下手」「危ない」という厳しい意見がある一方で、「華がある」「パワーがすごい」という肯定的な意見も多く、賛否両論の大きな反響を呼んでいます。
- Q9. 練習拠点はどこのジムですか?
- A9. 所属団体や特定の道場に加え、個人的なフィジカルトレーニングも継続して行っているようです。
- Q10. 今後の試合スケジュールはどこで確認できますか?
- A10. 参戦するプロレス団体の公式サイトや、ウルフアロン選手本人のSNSで最新情報が告知されます。
まとめ
ウルフアロンのプロレス挑戦は、まだ始まったばかりです。
確かに現時点では、プロレス特有の受け身(バンプ)やロープワークにおいて、長年のプロレスファンから見れば「下手」「危なっかしい」と映る場面があることは否めません。しかし、それは彼が柔道という「背中をつけない競技」の頂点にいた証でもあり、身体に染み付いた本能との戦いでもあるのです。
小川直也や鈴木桂治といったレジェンドたちが指摘するように、技術的な課題は明白ですが、それを補って余りある身体能力と、観客を惹きつける天性の「華」が彼にはあります。「技が少ない」という批判も、これからの伸びしろと考えれば楽しみな要素でしかありません。
柔道王者がプロレスのリングで泥臭く成長していく姿こそ、我々が見たいドラマではないでしょうか。彼の「受け身」がプロレスラーのそれに変わったとき、本当の怪物が誕生するはずです。
- ウルフの受け身の違和感は、柔道の「背中をつけない」本能との葛藤によるもの
- 小川直也や鈴木桂治は、技術不足を認めつつも、その素質と覚悟を高く評価している
- 現状は技が少ないが、身体能力とキャラクター性はプロレスラーとして一級品
- 今後の技術習得次第で、歴史に名を残すレスラーになる可能性は十分にある


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