2025年12月1日、日本の小売業界の勢力図を塗り替える歴史的な出来事が起こりました。
ドラッグストア業界の売上高トップであるウエルシアホールディングス(HD)と、2位のツルハホールディングス(HD)が経営統合に合意し、新生ツルハHDが誕生したのです。
この経営統合は、日本の小売業界、特に急速に成長を遂げたドラッグストア市場における新たな時代の幕開けを告げるものです。統合会社は、親会社であるイオングループの強力な支援を受け、単なる小売チェーンの枠を超えた「ライフストア」への進化を目指します。
このメガ統合によって、私たちの生活やポイ活、そして日本のヘルスケアの未来はどう変わるのでしょうか?
本記事では、ツルハとウエルシアの経営統合の全貌を、その驚異的な規模とインパクト、隠されたイオンの壮大な戦略、そして私たち消費者や株主に及ぼす具体的な影響に至るまで、徹底的に深掘りし、わかりやすく解説します。
- ウエルシアとツルハの経営統合の最新情報と概要
- 経営統合の目的、規模、イオンとの関係などの詳細
- 経営統合が消費者や株主にどのような影響があるのか
2社統合で「何が変わる」のか?【規模とインパクト】
ウエルシアHDとツルハHDの統合は、単なる業界再編のニュースではなく、国内市場における競争を一変させる巨大なインパクトを持っています。
圧倒的No.1!「売上高2.3兆円」超の巨大チェーン誕生
今回の経営統合により誕生する新生ツルハHDは、名実ともに日本国内のドラッグストア業界において圧倒的なナンバーワンの地位を確立します。
統合会社の規模は、直近の業績を合算すると、以下の通りです(2025年2月28日現在)。
- 国内店舗数: 5,659店舗
- 売上高: 2兆3,124億円 (ツルハHDは2024年5月期実績を合算)
- 従業員数: 11万6,343人
この規模は、業界3位以下の企業を一気に引き離すものであり、ドラッグストア市場全体(市場規模9兆2022億円)のシェアの約25%を占めることになります。
特に、国内店舗数が約5,600店舗に達することは、日本全国を網羅する広域なネットワークの実現を意味します。これは、両社がこれまで築いてきた地域的な強みを持ち寄り、文字通り「全国ネットワーク」が完成したことを示しています。
中期目標は「売上高3兆円」「アジアNo.1」
新生ツルハHDは、この巨大な基盤をテコに、さらに野心的な中長期目標を掲げています。
統合後6年間(2032年2月期)の定量目標
- 売上高: 3兆円
- 営業利益額: 2,100億円
- 営業利益率: 7%
この目標は、単に国内市場での成長に留まらず、世界市場におけるプレゼンスの向上を目指すものです。統合後の規模は、世界のドラッグストアランキングにおいて、世界No.3の背中が見える位置に立ちます。
特に、ツルハグループの鶴羽順社長は、「日本NO.1からアジアNo.1ドラッグチェーンとなりたい」と、明確にグローバル展開への意欲を示しています。この目標を達成するため、ASEAN地域を中心にM&Aも駆使して展開国を拡大していく方針です。
3年で500億円の巨大な「シナジー」効果
このメガ統合の経済的な裏付けとなるのが、具体的なシナジー効果の予測です。
イオン、ツルハHD、ウエルシアHDの3社の資本業務提携により、統合後3年間で合計500億円ものシナジー効果を見込んでいます。内訳としては、ウエルシアHDとの統合で400億円、イオンとの業務提携で100億円の効果を期待しています。
このシナジー創出の主な領域は、競争力の根幹に関わる部分です。
- サプライチェーンの効率化
- 間接コストの削減
- 店舗開発の効率化
- 商品調達の効率化
- 物流の効率化(イオンとの共同物流含む)
特に、物流分野では、3社のスケールを活かした連携が図られ、コスト競争力強化に直結すると見られています。
📢 業界売上高No.2のツルハが存続会社となる理由
今回の経営統合では、ドラッグストア界売上高No.2のツルハが、同No.1のウエルシアを飲み込む形になります。また、ウエルシアは上場廃止になります。
どうして、小が大を飲み込むような形になるのでしょうか。
ツルハが存続会社となる理由は?
ドラッグストア業界で売上高No.1のウエルシアホールディングス(ウエルシアHD)と、No.2のツルハホールディングス(ツルハHD)の経営統合は、ツルハHDを存続会社とする株式交換の形式が採用されました。
具体的には、ツルハHDが完全親会社となり、ウエルシアHDが完全子会社となります。統合の結果、ウエルシアHDは上場廃止となり、ツルハHDが上場を維持します。
売上高で上回るウエルシアHDではなく、ツルハHDが存続会社となる選択には、複数の戦略的な要因が複合的に影響していると考えられます。
1. イオングループ内での資本構成と主導権
両社はともに小売最大手イオンのグループ企業です。ツルハHDにはイオンが筆頭株主として約13.6%出資している一方、ウエルシアHDはイオンが約50.9%を保有する連結子会社です(2024年2月時点)。
報道によると、統合後の新会社は、イオンの持ち分法適用会社となる見込みです。
これは、イオンがウエルシアHDを連結子会社としていた現状から一歩引いた形になり、イオンの議決権比率が50%未満になることを意味します。
これにより、統合後の新会社はイオンの傘下でありつつも、より独立性の高い経営が可能になると見られます。
この資本構成を実現するため、ツルハHDを存続会社とするスキームが最も適していたと考えられます。
2. 統合後の成長戦略への適合性
新会社は、「アジアNo.1のグローバル企業」という目標を掲げ、売上高3兆円を目指します。
統合後の経営においては、ツルハHDが持つ地域密着型の店舗運営ノウハウや、調剤併設率の高さ(ウエルシアHDは業界トップ)といった、両社の強みを最大限に活かすことが重要となります。
ツルハHDは北海道・東北地方に強く、ウエルシアHDは関東・中部地方を地盤としており、両社の経営資源を統合しつつ、強固な財務基盤と安定したガバナンスのもとで新会社の成長を加速させるために、ツルハHDのガバナンス体制が適していると判断された可能性があります。
3. 経営の効率化とシナジーの早期実現
ツルハHDを存続会社とし、ウエルシアHDを子会社化することで、ガバナンスを一本化し、商品調達や物流、システム統合といった面でのシナジー効果を早期かつ最大限に引き出す狙いがあります。
ウエルシアの店名はどうなる?
経営統合後も、両社の店舗名(ブランド名)は、基本的にそのまま維持されます。
- 「ウエルシア」の看板が「ツルハ」に変わることはありません。
- 「ツルハドラッグ」の看板が「ウエルシア」に変わることもありません。
ただし、どちらも、「当面は」ということであり、中長期的にそうなるということではありません。
これは、それぞれの企業が長年にわたり築き上げてきた地域ごとのブランド力と顧客の支持を尊重し、統合による顧客離れを防ぐための戦略です。地方におけるツルハ、都市部や調剤併設型店舗におけるウエルシアといった、それぞれのブランドが持つ強みを活かし、地域に根差した店舗運営を継続する方針です。
統合によって生まれる新会社は、重複の少ないエリアをそれぞれカバーすることで、全国を網羅する巨大なネットワークを構築します。このマルチブランド戦略によって、競争の激化するドラッグストア市場でのシェア拡大を図る見込みです。
なぜ今、統合なのか?目的と背景にある「イオンの思惑」
この大規模な経営統合の背景には、国内の小売市場の飽和や、ドラッグストア業界の成長を牽引する新たな戦略、そして親会社イオンの壮大な小売プラットフォーム構想があります。
統合の公式な目的:収益力向上と経営基盤強化の具体策
両社が統合に踏み切った公式の目的は、国内市場の成熟化に対応し、持続的な成長を実現するための「収益力向上と経営基盤強化」にあります。
統合の最も重要な柱は、単なる小売店ではなく、「調剤を核とした医療・介護事業の連携により No.1のヘルスケアカンパニーを目指す」というビジョンです。
この背景には、ツルハもウエルシアも、すでに医薬品や化粧品の販売に留まらず、調剤を起点としたヘルスケア分野に重点を置いていることがあります。
経営統合により、以下の具体的な取り組みを通じて収益力と経営基盤が強化される計画です。
- 調剤併設化・機能拡充:
- 両社が持つノウハウを結集し、調剤薬局事業の強化(全国)を進めます。在宅やオンラインチャネルの強化、日常から高度医療まで対応できる相談機能の拡充も目指しています。
- PB商品の共同開発:
- スケールメリットを活かしたプライベートブランド(PB)商品の開発力が強化されます。これにより、調達力が向上し、原価競争力を高めることができます。
- デジタルマーケティングの推進:
- 決済・ポイントシステム、そして大規模な顧客データ活用によるデジタルマーケティングの連携が図られます。
巨大プラットフォーム化を狙う「イオンの思惑」とは?
このドラッグストア業界のトップ連合を主導するのは、国内最大級の流通グループであるイオンです。
イオンは、今回の経営統合を通じて、グループ全体のヘルス&ウエルネス事業を牽引する強固な中核子会社を誕生させようとしています。
イオンが描く壮大な戦略は、以下の3点に集約されます。
1. 「ドラッグ&フード」業態の確立
統合会社の重要な戦略の一つは、ドラッグストアに食品を強化した「ドラッグ&フード」業態の確立です。
これは、ドラッグストア市場の近年の傾向を反映した戦略です。最近の市場の伸びは、医薬品や化粧品よりも、むしろ食品の販売増加が顕著であり、食品を軸とした「生活利便性重視型」の企業(例:コスモス薬品)が高い成長率を示しています。食品の安売りで集客力を高め、来店客に医薬品や化粧品の購買を誘うこのモデルは、国内市場が飽和しつつある中で、成長を維持するための鍵となります。
イオンは、スーパーマーケット事業などで培ってきた食品に関する強力な知見と、巨大な物流インフラを提供することで、ツルハ・ウエルシアのドラッグ&フード化を全面的にサポートします。
2. 約1億人の「ヘルスケアデータ」プラットフォームの構築
今回の統合では、両社が持つ顧客データベースを統合し、イオングループのデジタル接点と連携させることで、巨大なマーケティング基盤が誕生します。
統合後のデータ規模
- ツルハグループの総会員数:
- 2,835万人(2024年11月現在)
- ウエルシアグループの総顧客接点数:
- 3,478万人(2024年11月現在)
- ツルハ+ウエルシアの総顧客接点数:
- 5,544万人(デジタル・アナログ合算、2024年11月現在)
これにイオンの顧客データを加えることで、総計1億人にのぼるデジタル顧客接点を持つ「日本で最もお客様を理解する企業」を目指します。
この膨大なヘルスケアデータを分析することで、個々の顧客に対し、調剤や購買データに基づいた最適なセルフケアの提案が可能となり、データドリブン経営の基盤が構築されます。これは、イオンが目指す、小売、金融、ヘルスケア、PBといった多岐にわたる事業を連携させる巨大プラットフォーム構想の中核となります。
3. 小売業界で異例の「上位企業同士の連合」スキーム
これまでのドラッグストア業界のM&Aは、上位企業が中堅以下の企業を吸収する「大が小を飲む」形が大半でした。しかし、今回のツルハとウエルシアの統合は、売上高で業界トップ2社が、イオンの主導のもと対等に近い形で連合する、異例のケースです。
経営統合のスキームとしては、ツルハHDを存続会社とする株式交換を行い、ウエルシアHDはツルハHDの完全子会社となります(2025年12月予定)。さらにイオンは、TOB(株式公開買付け)によりツルハHDの議決権割合を50.9%とし、ツルハHDを連結子会社とする予定です(2026年1月を目処)。
これにより、イオンの強力なガバナンスとリソースを活用しつつも、ツルハHDは上場を維持することで、市場における機動性と信用力を保つ構造を目指しています。
統合で変わる!消費者と株主への具体的な「影響」
今回の経営統合は、私たち一般の消費者だけでなく、両社の将来に期待する株主・投資家にも大きな影響を及ぼします。
消費者への影響:ポイント、価格、店舗展開はどうなる?
ポイントサービスの統合とポイ活の行方
消費者にとって最も関心が高いのは、ポイントシステムの行方でしょう。
ウエルシアでは、毎月20日にWAON POINTを200ポイント以上利用すると1ポイント1.5円として利用できる、通称「ウエル活」というお得な仕組みがあり、多くのユーザーに支持されています。
統合後のポイントシステムの具体的な統一時期や詳細はまだ発表されていませんが、3社の資本業務提携の項目には「決済・ポイントシステム・デジタルマーケティング」の提携推進が明記されています。
すでにウエルシアはイオングループに属しており、WAON POINTサービスを導入しています。今後、ツルハグループとウエルシアグループの膨大な会員基盤(総顧客接点数5,544万人)と、イオンの持つ大規模な顧客データベース(総計1億人を目指す)を一元化し、マーケティングを推進することで、よりパーソナライズされた特典や、顧客体験の提供が強化されることが予想されます。
「ポイ活」ユーザーにとっては、巨大なヘルスケアプラットフォームが誕生することで、新しいお得なサービスが生まれる可能性があります。
プライベートブランド(PB)と価格競争力
経営統合により、ツルハグループの「くらしリズム」やウエルシアグループの「からだWelcia / くらしWelcia」といった既存PBに加え、新たに共同開発されたPB商品が誕生します。
2026年春には、新PBとして「からだとくらしに、+1」がスタートする予定です。
この巨大な規模を背景にした商品調達力と共同開発により、商品のラインナップが充実するだけでなく、低価格で高品質なPBが提供される可能性が高まります。
さらに、統合後のシナジー効果(3年で500億円)のうち、大部分は商品調達や物流の効率化から生まれると見込まれており、これは商品の価格競争力の強化に直結します。消費者にとっては、日々の買い物における家計の負担軽減につながることが期待されます。
店舗展開と利便性の向上
統合後の店舗数は約5,600店舗に及び、全国の生活圏を網羅します。これにより、これまで店舗展開エリアが異なっていた地域での相互補完が進みます。
店舗では、調剤薬局機能の強化に加え、ドラッグ&フード業態の確立が進められ、医薬品や日用品だけでなく、生鮮食品を含む食料品の品揃えが充実することで、地域住民の生活利便性が大きく向上します。
ただし、公正取引委員会は今回の統合を承認するにあたり、競争を実質的に制限しないよう、10店舗の売却を条件としています。これは、特定の地域で市場シェアが集中しすぎることによる消費者への不利益を防ぐための措置です。
株主・投資家への影響:今後の事業成長とリスク分析
統合スキームとガバナンス体制
ツルハHDとウエルシアHDの経営統合は、株式交換により行われます。
統合後の体制は、イオンがツルハHDの議決権の50.9%を取得し連結子会社としますが、ツルハHDは上場を維持する予定です。これは、イオンのグループ連結経営のメリットを享受しつつも、ツルハHDの市場における独立性を保つための工夫です。
また、経営体制については、引き続きツルハHDの鶴羽順社長が代表者としてグループを牽引します。ウエルシアからは、今年5月の定時株主総会において2名の取締役が受入れられ、執行役員も複数名就任する予定です。
公正性を確保するため、ウエルシアHDの取締役会においては、イオンの取締役兼代表執行役を兼任する岡田元也氏は、利益相反の可能性を考慮し、議案の審議・決議に参加していません。また、両社は独立した第三者算定機関を選任するなど、手続きの公正性確保に努めています。
高い成長目標とシナジー創出への期待
株主や投資家は、統合会社が掲げる2032年2月期までの売上高3兆円、営業利益率7%という高い目標に注目しています。
この成長の蓋然性を支えるのが、前述の3年で500億円に及ぶシナジー効果です。特に、イオングループ全体の資源(食品の知見、物流インフラ、デジタル技術)を活用した事業拡大は、大きな成長ドライバーとして期待されています。
潜在的なリスク(ディスシナジー)
一方で、大規模な統合にはリスクも伴います。ウエルシアHD側が検討したディスシナジー(負の側面)には、以下の項目が含まれていました。
- 調剤報酬減算のリスク:
- グループ内に敷地内薬局が存在する場合、調剤基本料の減算リスクが生じる可能性があります。
- IT投資の増加:
- 商品の帳合(仕入れ取引)統合に向けた追加的なIT投資が必要となる可能性があります。
- 人材のモチベーション低下:
- 経営統合に伴い、グループの従業員のモチベーション低下やモラルの低下の懸念があります。これは、異なる企業文化やシステムの統合において、しばしば見られる課題です。
これらのリスクをいかに乗り越え、統合効果を最大化できるかが、今後の新生ドラッグストアの成長の鍵となります。
統合後の課題と展望:新生ドラッグストアの未来図
ツルハとウエルシアの経営統合が目指すのは、単なるドラッグストアの最大手ではありません。それは、日本の超高齢社会が抱える課題を解決し、人々の生涯に寄り添う「ライフストア」という新たなビジネスモデルの確立です。
統合後の事業戦略と目指す「日本のヘルスケア基盤」
新生ツルハHDは、中長期的な成長に向けて、2つのフェーズに分けて変革を志向しています。
フェーズ1:価値創造基盤の構築(〜2029年2月期)
最初の3年間は、主にシナジーの最大化と、事業基盤の構築に注力します。
- ヒト・モノ・カネ・情報の統合:
- グループ全体でシナジー(500億円)を創出するための基盤を構築します。これには、物流システムや基幹システムの早期統合、顧客データベースの統合などが含まれます。
- 人材の強化:
- グループ横断的な教育体系を構築し、薬剤師、登録販売者、管理栄養士などの専門人材(合計約5万人)の量と質を強化します。
- ツルハHDが持つカウンセリング接客の「提案力」と、ウエルシアHDの「専門性」(ウエルシアモデル)という、両社の強みを組み合わせ、地域・店舗に合った形で展開します。
- グループ横断的な教育体系を構築し、薬剤師、登録販売者、管理栄養士などの専門人材(合計約5万人)の量と質を強化します。
フェーズ2:ライフストア実現の加速(〜2032年2月期)
基盤が整った後の後半3年間で、「ライフストア」の実現を加速させます。
「ライフストア」とは、生活の隅々まで入り込んだ店舗・サービス網を持ち、「誕生〜老後という生涯を支え続ける」、国内外のお客様の「人生そのものに寄り添う」店を指します。健康で健やかな生活を通じて、社会課題解決に貢献するインフラとなることを目指しています。
このライフストア構想の中核を担うのが、「介護領域の強化」と「海外市場への本格展開」という2つの拡大戦略です。
介護領域の強化:高齢化社会の課題解決リーダーへ
日本の超高齢化社会において、ドラッグストアは医療と生活の結節点としての役割が期待されています。新生ツルハHDは、「小売」×「介護」の新たなサービスを展開し、高齢化社会の課題解決リーダーを目指します。
- 居宅介護支援事業所併設店舗の展開:
- 店舗に介護支援の専門機能を併設することで、地域住民の生活を包括的にサポートする体制を構築します。
- 店舗と介護施設・サービス連携モデルの試行:
- 調剤・購買データを活用し、顧客一人ひとりに最適なセルフケアを提案するとともに、店舗を拠点として在宅・オンラインチャネルの強化を図り、介護施設やサービスとの連携を深めます。
海外市場への本格展開:アジアNo.1に向けたグローバル戦略
国内市場が飽和する中、海外市場、特にASEAN地域での成長は不可欠です。
ツルハHDは既にタイ、ベトナムに、ウエルシアHDはシンガポールに店舗を展開しており、今後はこの基盤を統合・強化します。
- ASEANへの集中出店と展開国拡大:
- M&Aも活用しながら、ASEANを中心に展開国を拡大し、既存進出地域での「勝ちパターン」を確立します。
- イオンの海外基盤の活用:
- イオングループは、中国やASEAN地域に強力な海外基盤を有しており、このネットワークとノウハウを活用することで、出店開発、商品調達、人材、システムの協業を行い、現地での基盤を早期に固め、出店・運営コストの効率化を図ります。
新生ツルハHDは、このグローバル戦略を通じて、アジアにおける圧倒的な存在感を示すことを目指しています。
ウエルシアとツルハの経営統合に関するFAQ
経営統合に関する読者の皆様からの質問にお答えします。以下のFAQは、本文の内容と重複しない、より詳細な疑問点をカバーしています。
- Q1: 統合後の新会社の名称はどうなりますか?
- A1: 2025年12月1日にウエルシアHDを完全子会社として新生ツルハHDが発足し、統合後の持ち株会社名(上場維持)はツルハホールディングスが引き続き使用されます。
- Q2: 統合は独占禁止法上の問題なく承認されましたか?
- A2: 公正取引委員会は2025年4月30日、競争を実質的に制限することとはならないとして統合を承認しましたが、競争環境を維持するために10店舗の売却を条件としました。
- Q3: イオンはどのようにツルハHDを連結子会社化するのですか?
- A3: イオンはまず、野村證券よりツルハHD株式を追加取得し(所有割合26.83%)、その後、2026年1月を目処にツルハHDに対してTOB(株式公開買付け)を実施し、議決権割合を50.9%として連結子会社化する予定です。
- Q4: 統合会社のトップは誰になりますか?
- A4: 統合後も引き続き、ツルハHDの鶴羽順氏が代表者としてグループを牽引します。
- Q5: 統合会社の調剤事業は業界で何位になりますか?
- A5: 統合会社の調剤売上高(ツルハHD 125,961百万円、ウエルシアHD 256,889百万円の合算)は、合計382,850百万円となり(ドラッグストアスーパーデータ2025より、2025年2月期/2024年5月期実績合算)、調剤売上高ランキングにおいてトップに躍り出ます。
- Q6: ツルハグループの「ハピコム」への関わりはどうなりますか?
- A6: ウエルシアHD、ツルハHDともにイオングループのハピコム(H&BC商品の共同仕入れ機構)の構成メンバーであるため、統合によりこの枠組みの中での連携がさらに強化されることが見込まれます。
- Q7: 統合会社の役員体制の独立性はどのように担保されますか?
- A7: 統合後(2025年12月1日時点)の取締役11名のうち、社外取締役が4名(監査等委員含む)就任予定です。また、イオンからの取締役派遣は非業務執行取締役1名に限定されるなど、経営の自立性・独立性が担保されるコーポレートガバナンス体制がとられています。
- Q8: 新しいプライベートブランド「からだとくらしに、+1」はいつから展開されますか?
- A8: 新PB「からだとくらしに、+1」は、2026年春に展開がスタートする予定です。
- Q9: 統合後の海外展開の具体的な地域はどこですか?
- A9: 現在、ツルハグループはタイ・ベトナム、ウエルシアグループはシンガポールに進出しており、まずはASEAN地域を中心にM&Aも活用しながら展開国を拡大していく方針です。
- Q10: 統合に伴うシステムの統合はいつ完了しますか?
- A10: 経営統合のフェーズ1(〜2029年2月期)において、両社の基幹システムの早期統合を進め、3年以内に受発注から実績までのデータを一元化し、データドリブン経営の基盤を構築する計画です。
- Q11: 統合会社が目指す「ライフストア」とは具体的にどのような店舗ですか?
- A11: ライフストアは、医薬品や食品、健康サポートなどをワンストップで提供し、顧客の誕生から老後までの生涯に寄り添い、地域社会のヘルスケアインフラとしての役割を果たす店舗・サービス網を指します。
まとめ
ツルハHDとウエルシアHDの経営統合は、日本のドラッグストア業界にとって歴史的な転換点です。両社が親会社イオンの強力な支援のもと、売上高2.3兆円超、約5,600店舗、そして総計1億人の顧客接点を持つ、国内市場で圧倒的な規模の企業が誕生します。
この統合の真の目的は、単なる小売競争に勝利することではなく、調剤や介護事業を核とした「ライフストア」へと進化し、超高齢社会の課題を解決する「日本のヘルスケア基盤」となることです。
目標は2032年2月期に売上高3兆円、営業利益率7%を達成し、アジアNo.1ドラッグチェーンとなること。これを実現するため、3年間で500億円の巨大なシナジー効果(商品調達、物流、コスト削減)を見込んでおり、特にイオンの知見を活かした「ドラッグ&フード」業態の確立に注力します。
私たち消費者にとっては、PB商品の拡充や価格競争力の強化、そしてポイントサービスやデジタルマーケティングの進化による利便性向上が期待されます。また、株主・投資家にとっては、上場を維持しつつイオングループの強靭な経営資源を活かす独自の統合スキームと、明確な成長戦略が注目に値します。
新生ツルハHDが、この巨大な規模を力に変え、目標とする「ライフストア」を実現し、日本の流通・ヘルスケアの未来をどのように変革していくのか、今後もその動向から目が離せません。
- ツルハとウエルシアの経営統合により、売上高2.3兆円超、約5,600店舗の国内最大のドラッグストアチェーンが誕生する。
- 2032年2月期までに売上高3兆円、営業利益率7%、アジアNo.1のグローバルチェーンを目指す。
- 統合の鍵は、イオンの支援を受けた「ドラッグ&フード」業態確立と、調剤・介護を核とした「ライフストア」への進化にある。
- 統合後3年間で、商品調達や物流効率化などから合計500億円のシナジー効果を見込む。
- 消費者には、新PB「からだとくらしに、+1」(2026年春開始)や、巨大データ基盤を活用したポイ活・デジタルサービスの充実が期待される。


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