【深掘り】トランプが再現した「パナマの悪夢」:1989年と2026年、二つの拘束劇が語る恐るべき共通点

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2026年1月、マドゥロ大統領が米軍の手によって拘束されたという報に、ある種の人々は強い既視感(デジャヴ)を覚えました。それは、1989年12月にブッシュ(父)政権下で行われた「パナマ侵攻(ジャスト・コーズ作戦)」です。

他国の指導者を「麻薬犯罪者」として軍事力で連行する。この、国際秩序の常識を覆す劇薬ともいえる手法が、なぜ36年の時を経て復活したのか。かつての「ノリエガ将軍」と現代の「マドゥロ氏」。二人の独裁者の運命を比較することで、トランプ政権が描く「21世紀の覇権」の正体を浮き彫りにします。

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酷似する「大義名分」:麻薬撲滅と民主主義の旗印

1989年と2026年、どちらの作戦においても米国が掲げた理由は驚くほど似通っています。

「国家元首」の称号を剥ぎ取るロジック

パナマのノリエガ将軍も、ベネズエラのマドゥロ氏も、米国からは「一国の正当なリーダー」としてではなく、国際的な「麻薬カルテルの首領」と定義されました。

1989年、米国はノリエガ氏をメデジン・カルテルとの共謀罪で起訴し、100万ドルの懸賞金をかけました。一方、2026年のトランプ政権はマドゥロ氏を「太陽のカルテル(Cartel of the Suns)」のトップとして起訴し、その懸賞金は5,000万ドル(約78億円)という天文学的な数字に跳ね上がっていました。

「自国民の保護」という免罪符

パナマ侵攻時、米国は「パナマ在住の米国人の生命を守る」ことを侵攻の直接の引き金としました。今回の「サザン・スピア作戦」でも、トランプ大統領は「米国内で麻薬被害に遭う若者たちを救うための自衛権の行使だ」と主張しています。どちらも「自国民の保護」を盾にすることで、他国への武力介入という国際法上のハードルを強引に突破しようとしたのです。

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作戦の変遷:物量作戦から「電子の首絞め」へ

軍事的な手法には、36年間のテクノロジーの進化が色濃く反映されています。

1989年:2万6,000人の「面」の制圧

パナマ侵攻では、米軍は2万6,000人という大規模な地上部隊を投入し、パナマ国防軍と正面から衝突しました。街は炎に包まれ、ステルス機F-117が実戦初投入されたものの、まだ「圧倒的な力による力押し」の側面が強い作戦でした。

2026年:最新鋭兵器による「点の摘出」

今回のベネズエラでの作戦は、より「外科手術的」でした。空母「ジェラルド・R・フォード」を起点とした広域ジャミング(電波妨害)によってベネズエラ全土の通信をマヒさせ、相手が気づかないうちに特殊部隊がターゲットだけを「摘出」する。36年前は「戦争」の色彩が強かったのに対し、今回は「広域的な法執行(逮捕)」という演出がなされています。

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トランプ大統領がパナマ侵攻から学んだ「成功体験」

なぜ、トランプ大統領は批判を覚悟でこの「パナマ方式」を選んだのでしょうか。そこには、1989年の作戦がもたらした「圧倒的な結果」への信奉があります。

抵抗勢力の完全無力化

パナマ侵攻の結果、ノリエガ政権は崩壊し、パナマ国防軍は解体されました。その後、パナマは米国の影響下で安定した民主国家へと移行しました(少なくとも米国の視点では)。トランプ大統領にとって、この「独裁者の首をすげ替え、国家のOSを書き換える」という成功体験は、泥沼化したイラクやアフガニスタンでの失敗を上書きする、唯一の「機能するモデル」に見えているのです。

「力による外交」の誇示

ノリエガ氏がマイアミの法廷に引きずり出された映像は、当時の独裁者たちを震え上がらせました。トランプ大統領はマドゥロ大統領を米国の法廷で裁くことで、「アメリカに敵対し、麻薬を流し込む者に安全な場所など地球上のどこにもない」という強烈なメッセージを、中国やロシア、北朝鮮といったライバルたちに突きつけようとしています。

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懸念される「36年前との決定的な違い」

しかし、歴史は単純には繰り返しません。2026年のベネズエラ情勢には、パナマの時にはなかった巨大なリスクが潜んでいます。

背後に控える「大国」の存在

1989年は冷戦終結直後であり、ソ連にパナマを助ける余力はありませんでした。しかし現在は、中国やロシアがベネズエラに多額の投資を行い、戦略的拠点として重視しています。米国の独断専行は、単なる中南米の政権交代に留まらず、世界規模の**「陣営間戦争」**を誘発する恐れがあります。

ネット社会と「ボートストライク問題」

パナマ侵攻時は、米軍による民間人犠牲の情報は限定的でした。しかし現在は、SNSを通じて現場の凄惨な映像が瞬時に拡散されます。「ボートストライク問題」で指摘されたような過剰な殺傷行為が明らかになれば、トランプ大統領の「正義」は瞬時に「戦争犯罪」へと指弾の対象が変わる脆さを孕んでいます。

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まとめ:トランプ大統領の「歴史リピート」が日本に問いかけるもの

マドゥロ大統領の拘束は、トランプ流の「アメリカ・ファースト」が、ついに「他国の主権」という最後の一線を越えたことを意味しています。

トランプ大統領は、1989年のブッシュ大統領が手にした「力による勝利」を、21世紀の最新兵器でもう一度再現しようとしています。しかし、その先に待っているのが、かつてのパナマのような安定なのか、それとも制御不能な「世界秩序の崩壊」なのかは、誰にも予測できません。

私たち日本人は、この「歴史の再演」を単なる遠い国のドラマとして眺めるべきではありません。国際法が「実力」によって書き換えられるこの時代において、私たちはどのようなルールを支持し、どのように自国を守るのか。ベネズエラの首都カラカスで起きた「12分間の急襲」は、その重い問いを世界に突きつけています。

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