日本相撲協会はなぜ「公益財団法人」なのか?年寄株の闇と不祥事続きで問われる存在意義

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繰り返される不祥事と世間の疑問…。

大相撲の世界で暴力事件やガバナンスの欠如といった不祥事が報じられるたびに、必ずと言っていいほど上がる声があります。

「日本相撲協会は、公益財団法人にふさわしくないのでは?」
「ただの株式会社や一般財団法人に降格させるべきだ」

厳しい規律と社会への貢献が求められる「公益財団法人」でありながら、時代錯誤な問題が繰り返される現状を見ると、世間からの厳しい目はごもっともです。

しかし、感情的に「降格させろ」と叫ぶだけでは、この問題の本質は見えてきません。

では、そもそもなぜ相撲協会は公益法人という立場にこれほど固執するのでしょうか。

そして、その看板を取り上げたとして、それで問題は本当に解決するのでしょうか。

今回は、日本相撲協会が公益財団法人であることの「メリット」を紐解きつつ、組織の根幹に巣食う「年寄株の闇」など、メスを入れるべき本当の問題点について、できる限り分かりやすくまとめました。

この記事でわかること
  • 相撲協会が「公益財団法人」に固執する理由と、そこから生まれる絶大なメリット
  • なぜ「ふさわしくない」と批判されるのか?(表面的な事件と構造的な闇の違い)
  • 年寄株の金銭授受や再雇用制度など、大相撲が抱える「本当の恥部」と今後の行方

なお、本記事と関連しているという点で、次の記事もお薦めです。

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目次

相撲協会が手放せない「公益財団法人」の絶大なメリット

日本相撲協会をはじめとする団体が「公益財団法人」の認定を受ける最大の理由は、ズバリ「強固な財務基盤の構築」と「社会的信用の獲得」です。

一言で言えば、「カネと看板」。

これが公益財団法人であることの核心です。具体的にはどういうことか、順を追って説明しましょう。

法人税が非課税になる(最大にして最強のメリット)

公益目的事業から生じた所得——たとえば本場所の入場料収入など——に対しては、法人税がかかりません。

これが最大かつ最強のメリットです。年間を通じて6場所が開催され、国技館をはじめとする会場には連日多くの観客が訪れる。

その入場料収入に税金がかからないというのは、団体にとって莫大な資金的メリットであることは言うまでもありません。

寄付金が集まりやすくなる

協会へ寄付をした個人や企業は、税法上の優遇措置(寄付金控除など)を受けられます。

これにより、スポンサーや篤志家からの資金提供へのハードルが大きく下がります。

公益財団法人への寄付は「社会貢献」として税制上も評価される仕組みになっているため、大口の支援者を集めやすい構造が生まれるのです。

国のお墨付きによる社会的信用

内閣府の厳しい審査をクリアした団体であるため、社会的なステータスが担保されます。

「内閣府が認めた公益法人」という肩書きは、メディアへの露出や行政との連携において、一般社団法人や株式会社とは比べ物にならない信用力を持ちます。

要するに、相撲協会にとって公益法人であることは、莫大な税金が免除され、かつ社会的な信用まで付与される、組織を維持・運営していくための「強力な特権」となっているのです。

これだけの恩恵があれば、手放したくないと思うのは当然と言えば当然です。

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なぜ「ふさわしくない」と批判されるのか?

これほど大きな税制優遇などのメリットを享受している以上、公益財団法人には「社会一般の利益(公益)を図る」という高い倫理観と厳格なガバナンスが、法律によって求められます。

見返りとして、それだけの責任と透明性を持て——ということです。

しかし、実際の相撲協会では次のような問題が繰り返されてきました。

  • 部屋内での暴力事件や「かわいがり(いじめ)」の慣行
  • コンプライアンス意識の欠如と、隠蔽体質とも取れる対応
  • 親方衆(年寄)の既得権益化と、外部の目が入りにくい閉鎖的な組織運営

国民の税金が免除されているということは、実質的に国民が相撲協会を支援しているも同然です。

そのような立場にある団体で、こうしたブラックボックスな実態が続けば、「公益法人としてふさわしくない」「優遇措置を剥奪すべきだ」という厳しい意見が出るのは、制度の趣旨から見て当然の成り行きと言えます。

ただし、ここで一つ重要なことを押さえておく必要があります。

暴力事件やコンプライアンス問題は確かに深刻ですが、それらはあくまで「表面的に見える問題」です。

相撲協会が公益財団法人として抱える「本当の恥部」は、もっと組織の深いところに根を張っています。

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公益法人として見過ごせない「年寄株(親方株)」の闇

相撲協会が公益財団法人として「ふさわしくない」と断じざるを得ない最大の理由。

それは、「年寄株(親方株)」を巡る多額の金銭授受の蔓延と、一部の既得権益化です。

そもそも「年寄株」とは何か

大相撲で引退後に親方として協会に残るためには、原則として「年寄名跡(年寄株)」を取得する必要があります。

いわば、協会に籍を置き続けるための「資格」あるいは「免許」のようなものです。

しかし、この年寄株は全105株と上限が厳格に決まっています。

つまり、どれだけ優れた力士でも、空き株がなければ親方にはなれないという仕組みです。

「売買禁止」は建前、裏では億単位の金が動く

協会は公式には「年寄名跡の売買は禁止」という建前をとっています。

しかし現実には、親方株の継承において数千万円から、時には億単位とも言われる多額の金銭授受が裏で行われているのは、角界における「公然の秘密」です。

誰もが知っているのに、誰も表立って口にしない。

改革しようとしても、既得権益を持つ側が組織の意思決定を握っているため、メスが入らない。

そうした構造的な腐敗が長年にわたって温存されてきました。

公益目的事業を行い、税制優遇を受けている法人の内部で、公式には認めていない巨額の裏金が動く既得権益システムが維持され続けている。

この不透明なカネのやり取りという「恥部」を放置したまま、社会的な信用が不可欠な公益財団法人を名乗り続けることには、大きな欺瞞があると言わざるを得ません。

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世代交代を完全に阻む「再雇用制度」と空き株不足

さらに、この年寄株の既得権益化を加速させ、大相撲の未来を決定的に奪っているのが「親方の再雇用制度」です。

65歳定年のはずが、実質70歳まで居座れる仕組み

現在、親方の定年は65歳と定められています。

しかし希望すれば最長70歳まで協会に残れる「再雇用制度(参与)」が導入されています。

一見するとベテランの知見を活かす良い制度のように聞こえますが、年寄株が「105」しかないという絶対的な制約の中でこれを運用すると、致命的な問題が生じます。

引退したくても「席」がない若手・中堅力士たち

引退した65歳以上の親方が株を保持したまま居座ることで、現役を退いて新たに親方になりたい若手・中堅の力士たちに回る「空き株」が極端に不足するという事態が起きています。

結果として、相撲界に多大な貢献をしてきた実績ある力士が親方になれず、やむなく角界を去らざるを得ないという深刻な人材流出が生じています。

将来の指導者候補が育たない、あるいは育っても外に出ていってしまうとなれば、競技レベルの低下にも直結しかねません。

若返りと組織のアップデートが必要な時代に、既得権益を手放さない一部のベテランによって、世代交代が完全に目詰まりを起こしている。

これは相撲協会が公益財団法人かどうかという以前に、組織として持続可能性を失いつつあることを示す深刻なシグナルです。

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公益法人格を剥奪すれば解決するのか?(3つの視点)

では、世間の声の通りに「公益法人をやめさせる」のが正解なのでしょうか。

実は、事態はそう単純ではありません。

この問題を考える上で、見落としてはならない3つの視点をまとめてみました。

視点1:「特権」ではなく「首輪」としての公益法人

実は、公益法人であることは相撲協会にとって「足かせ」でもあります。

常に内閣府の公益認定等委員会から監視されており、不祥事が起きれば報告義務が生じます。

外部の目が常に入る仕組みが、制度として担保されているわけです。

もし一般の株式会社になってしまえば、税制優遇は消えますが、同時に国からの厳しいガバナンス指導からも解放されてしまいます。

その結果、かえって密室経営や閉鎖的な体質が加速するという大きなリスクがある。

「公益法人格を剥奪すれば問題が解決する」という考えは、実はこの点を見落とした単純すぎる発想かもしれません。

視点2:「伝統」と「現代のコンプライアンス」の激突

相撲協会の公益認定の根拠は、「相撲道という日本の伝統文化の普及・継承」です。

この根拠自体は、今も有効だと言えるでしょう。

しかし問題は、師匠と弟子の絶対的な主従関係(部屋制度)といった「伝統」そのものが、現代の労働法規や人権意識と激しく衝突しているという点です。

「伝統だから」で許されてきた部分を、どこまで現代のルールに適合させられるか。この根本的なジレンマに、協会は今まさに直面しています。

伝統を守りながらコンプライアンスを徹底するという困難な両立を、外部の監視下で実現できるかどうかが問われています。

視点3:求められる「自浄作用」のタイムリミット

現状、内閣府が認定を取り消さないのは、協会がコンプライアンス委員会の設置や暴力根絶宣言など「組織改革の努力」を形の上では見せているからです。

しかし、本質的な体質改善が伴わず不祥事がループし続ければ、いずれ「公益に反する」として勧告が入り、最悪の場合は「認定取り消し」という伝家の宝刀が抜かれる限界点が来るでしょう。

組織改革の「ポーズ」と「実態」の乖離は、見る人が見れば一目瞭然です。タイムリミットは確実に近づいています。

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まとめ

抜本的改革なくして「大相撲の未来」も「公益」もない。

日本相撲協会の公益財団法人問題は、「税制優遇という特権を与え続けるべきか」という感情的な側面と、「国の監視下に置いてでも改革を強制すべきか」という実務的な側面が複雑に絡み合っています。

単純に「けしからん、剥奪しろ」という感情論で処理できる話ではないのです。

「不透明なカネが動く年寄株の売買」や「世代交代を阻む再雇用システム」は、まさに相撲協会が抱える旧態依然とした組織の恥部です。

ここから目を背け、表面的な暴力根絶宣言やコンプライアンス研修だけを繰り返していても、真の意味での大相撲の維持・発展はあり得ません。

組織の根幹に巣食う既得権益にメスを入れ、この恥部の改革に本気で手を付けない限り、将来的に日本相撲協会が「公益財団法人」として優遇を受け続けることは、もはや国民の理解を得られないフェーズに突入しています。

日本の誇る伝統文化である大相撲が、真の意味で「公益」に資するクリーンな組織へと生まれ変われるのか。抜本的な改革の行方を、私たちは厳しく見守っていく必要があります。

この記事のポイント
  • 相撲協会の公益法人最大のメリットは「法人税非課税」をはじめとする強力な税制優遇
  • 暴力事件や隠蔽体質が繰り返され、優遇措置に見合わないとして世間の批判が高まっている
  • 真の恥部は、裏金が動く「年寄株」と世代交代を完全に阻む「再雇用制度」にある
  • これらの既得権益システムを改革しない限り、大相撲の維持と発展はあり得ない
  • ただし、公益法人格を剥奪すると国の監視が外れて密室経営が加速するリスクもある
  • 現在は、国の監視下で相撲協会の「自浄作用」が厳しく問われている過渡期
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