禁止だらけの公園、子どもはどこで遊べばいい?日本の公園から自由が消えていく理由

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近所の公園に行くたびに、看板が増えている気がしませんか。

「ボール遊び禁止」「自転車乗り入れ禁止」「大声禁止」——。気がつけば、子どもの頃に当たり前にやっていた遊びのほとんどが、今の公園ではNGになっています。さらに最近は「年齢制限」まで登場し、子どもたちが自由に動き回れる場所は、じりじりと狭くなっています。

昨日(2026年2月24日)、ABEMA Primeがこの問題を特集し、東京科学大学の北村匡平准教授が「2000年代以降から禁止事項の看板がとにかく増えた。場所によっては服装まで指定されていて、子どもにとって楽しくない場所になっている」と警鐘を鳴らしました。

なぜここまで公園は窮屈になってしまったのか。誰が禁止を決めているのか。そして、解決策はあるのか。背景を整理しました。

この記事でわかること
  • 「うちの近所の公園もこんな感じ」——禁止が増えた理由と仕組み
  • 子どもの遊び場が減ることで、実際に何が起きているのか
  • 日本以外はどうなのか、解決に向けた動きはあるのか
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目次

第1章 看板の数が物語る「現代の公園」のリアル

自治体の6割が、街区公園でのボール遊びを「何らかの形で制限」している

「ボール禁止」は体感的な話ではなく、数字でも裏付けられています。

千葉大学の寺田光成・木下勇両氏が行った研究(2020年、J-STAGE掲載)では、47都道府県の人口上位8市と東京23区を対象に調査を実施し、回答した276自治体のうち約6割が街区公園でのボール遊びを何らかの形で制限していることが明らかになっています。「制限あり」の内訳は、特定の公園のみ禁止が約40%、全公園を一律禁止が約20%。しかも東京は他都市と比べて、この「全公園一律禁止」の割合が際立って高いといいます。

なお、この研究が対象にしているのは「街区公園」、つまり住宅街の中にある身近な小規模公園です。大きな運動公園は含まれていません。毎日の生活に一番近い場所での話であることを踏まえると、数字の重さが際立ちます。

ボールだけではありません。自転車乗り入れの禁止、大声・歌唱の禁止、飲食禁止、ペット禁止——。そして最近では、遊具ごとに「3〜6歳用」「6〜12歳用」といった年齢制限シールが貼られ、年齢外の子が乗ることも「推奨しない」扱いになっています。

「年齢制限シール」は日本独自の文化だった

ABEMA Primeの取材に対し、東京科学大学の北村匡平准教授は「年齢制限シール」について、こう指摘しています。「2002年ごろから公園施設業の業界団体が年齢別シールを作った。これは世界でも非常に珍しく、海外にはほとんどない」と。

確かに、遊具の安全基準として年齢ゾーニングの考え方自体は理解できます。しかし「目安としての表示」が、いつの間にか「それ以外は禁止」という空気へと変質しているのが問題です。

都市公園法には「遊び方の禁止基準」がない

ここで重要なのが、禁止事項の多くは「法律で決まっている」わけではないという事実です。

都市公園を規定する「都市公園法」には、遊び方についての禁止項目や明確な基準は特段設けられていません。ボール遊びの禁止も、自転車の乗り入れ禁止も、各自治体が独自に判断して決めているものです。つまり、その気になれば変えられるルールでもあります。

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第2章 なぜ禁止が増え続けるのか——「苦情」が動かす管理の論理

管理部署に届くのは「苦情」ばかり

TOKYO PLAY代表の嶋村仁志氏は、公園管理の現場の実態をこう語っています。「自治体で公園を管理する部署の方と話すと、市民からのご意見のほとんどは苦情だという話をよく聞きます」。

喜んでいる声は届かない。困っている声だけが届く。その構造の中で、行政は「苦情をゼロにする」方向に動きがちです。ボールが当たったという苦情があれば「ボール禁止」に。自転車が危ないという声があれば「自転車禁止」に。対処がエスカレートしていった結果が、今の禁止看板だらけの公園です。

1990年代の法改正と訴訟リスクが転換点になった

北村准教授によれば、この現状には歴史的な背景もあります。かつての「児童公園」は、1990年代の都市公園法の運用変更を経て、幼児から高齢者まで全世代が使う「街区公園」へと役割を変えました。

それと同時期に、箱型ブランコなど動きのある遊具での死傷事故や訴訟問題が相次ぎ、管理側は一気にリスク回避に舵を切りました。危険な遊具を撤去し、禁止事項を増やし、万が一の事故責任を減らす方向へ。その流れが2000年代以降、禁止看板の急増という形で可視化されてきたのです。

近隣住民の高齢化が「音に対する不寛容」を生んでいる

もう一つの背景が、少子高齢化です。

公園の周辺に暮らす人々の年齢構成が高齢化すると、子どもの声や遊ぶ音を「うるさい」と感じる層が相対的に増えます。加えて地域のコミュニティが希薄化すると、「知らない子どもの声」は「うるさい雑音」として受け取られやすくなります。嶋村氏が指摘するように「顔を知っているなじみの子の声なら、むしろ元気だねと受け取りやすくなる」というのは、その裏返しでもあります。

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第3章 遊び場を失った子どもたちに何が起きているか

子どもの遊び場は「近所」から消えた

「ボール遊びができる公園を探したら、自転車で15分かかるところしかなかった」「結局ゲームやテレビになってしまう」「ボール遊びをする場所がない」——。これは子育て中の親世代へのアンケートで実際に寄せられた声です。

禁止事項が増えた結果、最も割を食っているのは徒歩圏内の小さな公園です。大きな運動公園まで行けばボールが使えても、毎日の放課後にそこまで行く子どもは多くありません。近所の公園で気軽に体を動かせなくなったことが、子どもたちを屋内に向かわせています。

「遊ぶ場所がない」は、子どもの意欲や体力の問題ではなく、物理的な環境の問題です。

「遊び不足」は個人の問題ではなく「環境問題」

TOKYO PLAYの嶋村氏はこの状況を、「子どもの遊び不足は、今や個人の努力だけではどうにもならない”環境問題”だ」と表現しています。「環境問題」という言葉をあえて使うのは、これが意欲や家庭の方針の問題ではなく、遊べる場所そのものが失われたという空間・社会構造の問題だからです。

その影響は、データにも表れています。文部科学省の調査では、外遊びの時間が多い幼児ほど運動能力が高い傾向がある一方、外遊びの時間が1日1時間未満の幼児が全体の4割を超える JSPOことがわかっています。スポーツ庁の「全国体力・運動能力調査」でも、小中学生の運動時間は2019年までの数年間と比べて低い水準が続いています。 S-re

身体への影響だけではありません。公園で他の子どもとぶつかりながら交渉する経験、転びながら身体の使い方を覚える経験——それらは管理された安全な環境では起きにくいものです。都市化や少子化が日常的に外で遊ぶ場所や仲間を減少させた MEXTと文部科学省の答申も指摘しており、遊び場の問題は体力だけでなく、社会性や自律性の育ちとも切り離せません。

総務省の調査で小中学生の本音が明らかに

総務省行政評価局が2021年にまとめた「子どもの居場所に関する調査報告書」では、小中学生へのアンケートで「過ごしにくい」と答えた理由の3割が「近隣の大人からのクレーム」「ボール遊びができない」「ルールが厳しすぎてつまらない」でした。

また、公園ルールの決め方については、9割以上の小中学生が「大人や他の利用者と一緒に意見を出し合いたい」と答えています。禁止を押しつけられているという感覚、そして決定に参加できないという閉塞感は、子どもたちにも明確にあります。

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第4章 海外はどう対処しているか——ドイツの法整備と「プレイパーク」

ドイツは「子どもの声は騒音ではない」と法律で定めた

日本でしばしば公園閉鎖の引き金になる「騒音クレーム」。これを法律で正面から否定した国があります。ドイツでは2011年の連邦イミッション防止法(BImSchG)改正により、子どもの遊び声・泣き声は原則として「騒音ではない」と明文化されました。「騒音トラブルになりうる」から遊ばせない、という日本型の予防的禁止とは、発想の出発点が異なります。

視点を変えれば、北欧にも示唆的な考え方があります。スウェーデンやフィンランドには「自然享受権(アッレマンスレット)」という慣習法があり、私有地や国有地でもハイキングやキャンプなどアウトドア活動を自由に楽しめる LANTERN権利が、スウェーデンでは憲法上の権利として保障されています。 NAVIA「自然はみんなのもの、独占すべきでない」という前提に立ったとき、近所の公園を特定の大人の「静寂の権利」で独占することの不自然さが見えてきます。

日本でも広がる「プレイパーク(冒険遊び場)」の取り組み

禁止事項の少ない遊び場をつくる動きが、日本でも広がっています。「プレーパーク(冒険遊び場)」と呼ばれる場所で、土を掘る、火を使う、木に登るといった、通常の公園では禁止されがちな遊びが許容されています。現在、全国に400カ所以上あり、市民活動によるものだけでなく、自治体が事業として取り組む例も増えています。

根底にある考え方はシンプルです。「危ないからダメ」ではなく、子どもが自分で判断してリスクをとる経験こそが、生きる力を育てるというものです。プレーワーカー(プレーリーダー)と呼ばれる大人が常駐し、禁止はせず、見守ります。

お住まいの近くのプレーパークは、日本冒険遊び場づくり協会の全国マップから検索できます。

「0か100か」ではない解決策を探す動きも

現場レベルでは、禁止と自由の二択ではない工夫も生まれています。ボール遊びができる公園を市区町村がホームページで公表する、時間帯でゾーンを分ける、プレイリーダーと呼ばれる見守り専門のスタッフを配置する——といった試みです。

TOKYO PLAYの嶋村氏は「ボールの固さや遊び方、場所などで、お互いの存在に配慮し合う、0か100かではない解決策を見つけられるのが理想」と話しています。

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第5章 「誰のための公園か」を問い直す時期に来ている

苦情を言う大人も、困っている子どもも、どちらも公園の利用者

公園は誰のものかといえば、すべての住民のものです。近隣の大人も、子どもも、高齢者も、等しく利用する権利があります。しかし現状では、「声を上げやすい大人の苦情」が公園のルールをつくり、「声を上げにくい子どもの遊び」が削られていく非対称な構造があります。

総務省の調査で小中学生の9割以上が「大人と一緒にルールを話し合いたい」と答えていることは、子どもたちが排除を望んでいるのではなく、対話を求めているということを示しています。

子どもの遊び場が失われることは、地域全体の問題

子どもが公園から消えることは、子育て世帯だけの問題ではありません。公園は元来、世代を超えた地域のコミュニティが生まれる場所でもあります。そこに子どもの声がなくなれば、地域の活気そのものが失われていきます。

少子化対策が叫ばれる一方で、子どもが日常的に外で遊べる環境が整っていない——この矛盾に、いま社会全体が向き合う必要があります。

変えられるのは「仕組み」だけでなく「空気」でもある

都市公園法には、遊び方を禁止する基準は定められていません。つまり、多くの禁止ルールは行政の裁量で変えられます。しかし問題の根はもう少し深いところにあります。

禁止看板が増えるプロセスを思い返すと、たいていこうです。

誰かが苦情を入れる。担当者がリスクを避けるために看板を立てる。子どもが遊ばなくなる。公園が静かになり、さらに「異質なもの」への不寛容が高まる——。苦情を持ち込む側に悪意があるとは限りません。ただ、声を上げやすい大人と、声を持たない子どもの非対称が、長年かけてこの状況をつくってきました。ネガティブなスパイラル?

では、「看板を外す」にはどうすればいいのか。一枚増やすことは簡単ですが、一枚外すには住民の合意形成が要ります。そのプロセスで力を持つのは、行政でも専門家でもなく、日常的にその公園にいる地域の大人です。

あなたにできることは、大きなことでなくていいかもしれません。

公園で子どもが遊んでいたとき、にぎやかだと感じたとき——それを「苦情」ではなく「よい光景」として受け取ること。自分の子どもでなくても、近所の子どもが外で遊んでいたら、声を荒げるより先に少し立ち止まること。自治体や公園管理者にルール見直しを求める意見を出すこと。プレーパークの運営に関わること。

どれも「正解」ではありませんが、どれも「空気を変える」一歩になりえます。

子どもが自由に遊べる公園は、子どものためだけにあるのではありません。それは、この地域は子どもを歓迎しているという、社会全体のメッセージなのだと筆者 taoは考えます。

あなたはどう考えますか?

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まとめ

かつて子どもたちの声が響いていた公園が、今は禁止看板に埋め尽くされています。ボール、自転車、大声、そして年齢——「管理」という名のもとに、次々と自由が削られてきました。

その背景には、苦情だけが行政に届く構造、1990年代以降の訴訟リスクへの対応、地域コミュニティの希薄化といった複合的な要因があります。一つひとつは理解できる理由でも、積み重なった結果が「子どもにとって楽しくない場所」になってしまっています。

専門家や子どもたち自身からも「ルールを一緒に話し合いたい」という声が上がっています。禁止を増やし続けるのではなく、多世代が共存できる公園の在り方を、地域で問い直す時期に来ているのではないでしょうか。

この記事のポイント
  • 調査に回答した自治体の約6割が都市公園でのボール遊びを禁止しており、東京は特に一律禁止の割合が高い
  • 遊具への「年齢制限シール」は2002年ごろから始まった日本独自の文化で、海外にはほとんど例がない
  • 禁止ルールの多くは都市公園法に基づくものではなく、各自治体の裁量で決められたもの
  • 苦情を言いやすい大人の声だけが公園ルールを動かしてきた構造的な非対称性がある
  • 総務省の調査では小中学生の9割以上が「大人と一緒にルールを話し合いたい」と回答している
  • ドイツでは「子どもの声は騒音ではない」と法律で定め、日本でも「プレイパーク」など代替の動きが広がっている
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