「豊昇龍の不振は無理な推挙が原因」は嘘!?いくつかの分析

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2026年9月13日から始まる大相撲秋場所(会場・両国国技館)。

残念ながらというか、予想通りというか、横綱・豊昇龍は初日からの休場となりました。

休場の原因は、7月下旬に受けた右膝手術(右膝内側側副靱帯損傷の部分断裂の修復手術)の影響による調整の遅れと伝わっています。

横綱昇進してから豊昇龍は今場所で10場所目となります。

その10場所中、豊昇龍の優勝は無し。

また、10場所中、4場所が途中休場、そして、今場所は全休になりそうです。

つまり、10場所中、半分の5場所が休場。

普通に考えて「とんでもない戦績の横綱だ」と思われていることでしょう。

そして、世間では、「この情けない横綱を作り出したのは無理な推挙が原因だ」ということもささやかれています。

実は、筆者 TOPIOも同じように考えていました。

ひょんなことがあって、現役2人を含む、直近20代の横綱の戦績をまとめてみました。

それで、はっきりしたのです。

「豊昇龍の不振は無理な推挙が原因だ」は、正しくないと。

以下、その分析した表と、分析結果です。

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目次

直近20代の横綱の戦績をまとめてみた

以下、直近20代の横綱の戦績をまとめてみました。

第75代・大の里から第56代・若乃花(2代目)までの20人です。

以下に、その戦績などをまとめた表を載せます。

その前に、「横綱昇進の基準(目安)」「昇進実現までのプロセス」を改めてここに書いておきますね。

横綱昇進の基準(目安)

  • 成績の基準
    • 大関での2場所連続優勝、またはそれに匹敵する成績(準優勝や直近の安定した好成績)。直近3場所の合計勝利数なども総合的に見られます。
  • 品格と力量
    • 単に強いだけでなく、相撲内容のすばらしさ、気迫、素行や常識ある生活態度など、横綱としての「品格」が求められます。

昇進実現のプロセス

  1. 審判部の推薦
    1. 本場所終了後、日本相撲協会の審判部が横綱にふさわしい力士を推薦します。
  2. 横綱審議委員会の諮問・答申
    1. 有識者でつくる「横綱審議委員会(横審)」が開かれ、昇進が妥当か審議され、答申が出されます。
  3. 番付編成会議と理事会
    1. 横審の答申を受けて、番付編成会議と理事会で正式に昇進が決定します。
  4. 伝達式
    1. 決定後、使者が力士と師匠のもとへ赴き、昇進を伝える口上(伝達式)が行われます。

横綱昇進の基準(目安)のところに「目安」と書いた理由

横綱昇進の基準が固定された絶対的なルールではなく、あくまで「目安(内規)」とされている理由は、横綱が「勝率や勝利数などの数値だけで機械的に自動昇進する地位ではない」と日本相撲協会によって定義されているためです。

横綱昇進については、主に以下の3つの公的な理由に基づき、その都度「総合的な判断」が行われます。

横綱審議委員会(横審)の内規における裁量

1950年(昭和25年)に設立された横綱審議委員会の内規には、「大関で2場所連続優勝、またはそれに準ずる好成績」と明記されています。

この「準ずる成績」という文言は、固定された数値(何勝以上など)ではなく、その時々の土俵の状況を考慮するための裁量の余地としてあえて残されています。

  • 対戦相手の質や相撲内容
    • 同じ13勝や14勝であっても、対戦した相手の地位や、勝った際の相撲内容(圧倒的だったか、際どい勝利だったか)が考慮されます。
  • 千秋楽(最終日)の状況
    • 優勝を争う直接対決で勝ったのか、すでに優勝が決まった後での勝利だったのかなど、精神的な力量も評価の対象になります。

公的に求められる「品格」の審査

相撲協会の規定において、横綱は単に強い(力量がある)だけではなく、「抜群の品格」を備えていることが必須条件とされています。

  • 数値化できない要素
    • 土俵上での礼儀、品位のある立ち振る舞い、社会的な責任感などはデータとして客観的に数値化できません。
  • 外部有識者による審議
    • そのため、相撲界の身内だけで決めるのではなく、社会の様々な分野から集まった外部の有識者(横綱審議委員会)が意見を出し合い、人間性や風格を含めて「横綱にふさわしいか」を多角的に審議します。

相撲界全体の状況と責任

横綱は一度昇進すると大関以下のように「負け越しても番付が落ちない(降格がない)」という、大相撲で唯一の絶対的な地位です。

その代わり、成績が振るわなくなれば「引退」しか道がありません。

  • だからこそ、「本当に今、横綱に上げて本人がその後も横綱の責任を全うできるか」という将来的な見通しを含め、その時代の横綱の人数や本場所の安定性を考慮して慎重に判断されます。

このように、大相撲の歴史と伝統を守るための安全弁として、あえて「自動的なシステム」にはせず、委員会と理事会による審議の余地(目安)が設けられています。

直近20代の横綱の戦績

まず、表の見方について、まず、注記しますね。

  • 直近20代の横綱は、最新の大の里から降順で記載しています。
  • 「四股名」欄は、原則「○・四股名」と記述しています。○は代数の数字だけです。
    • 「○☆四股名」のように「☆」がある横綱は、昇進前直近2場所連続優勝をしている場合です。
    • 「○★四股名」のように「★」がある横綱は、昇進前直近2場所いずれも優勝していない場合です。
  • 「横綱での優勝」欄は、左にある幕内優勝回数のうち、横綱として優勝した回数です。
  • 「全勝優勝」欄は、幕内優勝回数のうち、全勝優勝を果たした回数であり、横綱昇進前の回数も含みます。
  • 「横綱-3勝敗」欄は、横綱昇進3場所前の勝敗です。
    • 優勝した場合には「○-○ 優」と表示しています。
    • 優勝を逃すも優勝同点の場合には「○-○ 同」と表示しています。
    • 優勝を逃すも優勝次点の場合には「○-○ 準」と表示しています。
  • 「横綱-2勝敗」欄は、横綱昇進2場所前の勝敗です。
    • 「優」「同」「準」の注記は前掲の通りです。
  • 「横綱-1勝敗」欄は、横綱昇進1場所前の勝敗です。
    • 「優」「同」「準」の注記は前掲の通りです。
  • 「直前2場所勝敗」欄は、横綱昇進前2場所の勝敗の合算です。
  • 「直前2場所勝率」欄は、横綱昇進前2場所の勝敗合算の勝率です。
  • 「直前3場所勝敗」欄は、横綱昇進前3場所の勝敗の合算です。
  • 「直前3場所勝率」欄は、横綱昇進前3場所の勝敗合算の勝率です。

直近20代の横綱の戦績(大きな表です!)

それでは、現役2横綱を含む直近20代の横綱の戦績一覧を表示しますね。

大きな表なのでスクロールしてご覧ください。

代数・四股名
横綱在位
横綱勝率
幕内
優勝
うち
横綱での
優勝
全勝優勝
横綱
-3場所
勝敗
横綱
-2場所
勝敗
横綱
-1場所
勝敗
横綱
昇進場所
勝敗
直前
2場所
勝敗
直前
2場所
勝率
直前
3場所
勝敗
直前
3場所
勝率
75代☆大の里7場所.6845回1回0回10-512-3 優14-1 優11-426-4.86636-9.800
74代・豊昇龍9場所.6702回0回0回8-713-2 準12-3 優5-5-525-5.83333-12.733
73代・照ノ富士21場所.74010回6回1回12-3 優12-3 優14-1 準13-2 優26-4.86638-7.844
72代・稀勢の里12場所.5002回1回0回10-512-3 準14-1 優13-2 優26-4.86636-9.800
71代・鶴 竜41場所.6956回5回0回9-614-1 同14-1 優9-628-2.93237-8.822
70代☆日馬富士31場所.7279回5回3回8-715-0 優15-0 優9-630-01.00038-7.844
69代☆白 鵬84場所.87545回42回16回10-513-2 優15-0 優11-428-2.93338-7.844
68代☆朝青龍42場所.83625回23回5回10-514-1 優14-1 優10-528-2.93338-7.844
67代☆武蔵丸27場所.76312回7回1回8-713-2 優13-2 優12-326-4.86634-11.755
66代☆若乃花11場所.6165回0回0回10-514-1 優12-3 優10-526-4.86636-9.800
65代☆貴乃花49場所.81322回15回4回11-415-0 優15-0 優13-2 優30-01.00041-4.911
64代☆曙48場所.78011回8回0回9-614-1 優13-2 優10-527-3.90036-9.800
63代☆旭富士9場所.7104回1回0回8-714-1 優14-1 優13-2 準28-2.93336-9.800
62代★大乃国23場所.6622回1回1回15-0 優12-3 準13-2 準8-725-5.83340-5.888
61代・北勝海23場所.7678回6回0回11-412-3 優13-2 準11-425-5.83336-9.800
60代★双羽黒8場所.6920回0回0回10-512-3 準14-1 同3-4-826-4.86636-9.800
59代・隆の里15場所.6934回2回2回12-3 準13-2 準14-1 優15-0 優27-3.90039-6.866
58代・千代の富士59場所.84831回29回7回11-4 準13-2 準14-1 優1-2-1227-3.90038-7.844
57代★三重ノ海8場所.7053回2回1回10-513-2 準14-1 同11-4 準27-3.90037-8.822
56代★若乃花(2)28場所.7514回3回1回13-2 準13-2 同14-1 同11-427-3.90040-5.888
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いくつかの分析

前述の表に基づき、以下、いくつかの分析を載せますね。

強い横綱は誰?そもそも強い基準を何にするか…

筆者 TOPIOが今の大相撲界に期待しているのは「強い横綱」の登場です。

この「強い横綱」はいろんな基準があるでしょう。

いくつか考えられることを列挙しますね。

  • 横綱在位中の通算勝率の高さ
  • 横綱在位中の幕内最高優勝回数の多さ
  • 横綱在位場所数の長さ

前述した20人の横綱のうち、前述の視点で上位1〜5位の順位を載せてみますね。

比較という点で、豊昇龍の順位も載せます。

横綱在位中の通算勝率 1〜5位と豊昇龍

  • 01位 .876 白鵬
  • 02位 .848 千代の富士
  • 03位 .836 朝青龍
  • 04位 .813 貴乃花
  • 05位 .780 曙
  • 17位 .670 豊昇龍

横綱在位中の幕内最高優勝回数 1〜5位と豊昇龍

  • 01位 42回 白鵬
  • 02位 29回 千代の富士
  • 03位 23回 朝青龍
  • 04位 15回 貴乃花
  • 05位 07回 武蔵丸
  • 18位 00回 豊昇龍(3人が0で同位) 

横綱在位場所数 1〜5位と豊昇龍

  • 01位 84場所 白鵬
  • 02位 59場所 千代の富士
  • 03位 49場所 貴乃花
  • 04位 48場所 曙
  • 05位 41場所 鶴竜
  • 17位 09場所 豊昇龍(2人が9場所で同位)

3視点による豊昇龍の判定

豊昇龍は現役の横綱ですから、今後の活躍により、記録と記憶に残る優秀な強い横綱になる可能性があります。

ただし、直近までの横綱戦績によると、「強い横綱」とは判断できません。

昇進直近3場所の戦績がその後の活躍と相関しているか?

直近20人の横綱を分析する限り、全員が、直近2場所で連続優勝でなくても、それに準ずる成績であることがわかります。

過去と直近2場所含めて優勝のなかった双羽黒が横綱昇進したことは有名な話ですが、その双羽黒であっても、豊昇龍よりは良かったようです。

そこで直近3場所にも着目しました。目安にもありますからね。

  • 直近2場所の勝敗と勝率
    • 双羽黒 26勝4敗  .866 12位
    • 豊昇龍 25勝5敗  .833 18位
      • 同率が2人いて、豊昇龍は実質最下位
  • 直近3場所の勝敗と勝率
    • 双羽黒 36勝9敗  .800 11位
    • 豊昇龍 33勝12敗 .733 20位
      • 豊昇龍は最下位

これだけ見ると、昇進前の評価に問題があったのではと思うかもしれません。

しかし、豊昇龍の昇進基準は前述の目安によれば、問題なかったと言えるでしょう。

なにせ、データが少なすぎて、直近2場所、もしくは直近3場所の戦績が横綱になってからの活躍と相関しているか・・・とは断定できないのです。

したがって、豊昇龍の場合は、基準(目安)には合致していたと。

横綱昇進場所で休場した横綱は3人

晴れて横綱昇進を果たし、横綱として迎える最初の場所。

しかし、その晴れ舞台の場所に休場をした横綱が3人います。

横綱昇進時期降順で書きます。

  • 豊昇龍   5勝5敗5休
  • 双羽黒   3勝4敗8休
  • 千代の富士 1勝2敗12休

一度も優勝のないまま横綱昇進を果たした双羽黒。

ただし、昇進基準(目安)はクリアしていますからね。

しかし、昇進場所では怪我のため休場。

その後、通算8場所、横綱をつとめた後、引退します。

一方、豊昇龍は横綱で迎えた場所で、同じように休場。

今場所を含め10場所の横綱場所で半分が休場という状況です。

じゃあ、横綱で迎えた場所に休場すると絶望的かというとそうでも無い事例が千代の富士です。

千代の富士はふがいない昇進場所の戦績に奮起し、怪我を筋肉の鎧で固める改造(?)を実行。

以来、横綱での休場も何場所かあるものの、横綱になってから幕内最高優勝を29回実現し、かつ、全勝優勝を7回も達成しているのです。

横審たち、豊昇龍の横綱実現に関わった人たちに、横綱として迎える場所で彼が休場することが予想できたでしょうか。

その後の不調が予測できたでしょうか。

直近3場所の勝率は過去の横綱と比較して低いものの、そこそこ活躍した人たちもいました。

また、豊昇龍が千代の富士のように覚醒して筋肉ムキムキマンで怪我を抑えるように変身することはない!断言できる人はいるでしょうか。

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まとめ

現役2人の横綱を含め、直近20人の横綱の戦績等をまとめました。

自由に料理してください、分析してください。

筆者 TOPIOは、これまで「豊昇龍が弱いのは、困っているのは、不振なのは、彼の横綱昇進に関わった人たちの判断が甘かったからだ!」と思っていました。

ただ、具体的な数字を並べて比較してみると、昇進基準(目安)で豊昇龍は逸脱していないし、基準の評価も適正範囲内だったと思いました。

だから、前述の「豊昇龍が弱いのは、困っているのは、不振なのは、彼の横綱昇進に関わった人たちの判断が甘かったからだ!」は間違いだと判断したわけです。

それでは、彼の不振は何?

構造的にどういう問題が潜んでいるのか?

そういえば、今場所は豊昇龍含め、幕内では3人が初日から休場です。

これをどう捉えるか。

単に「怪我等のため休場者が3人」…。

こういう捉え方では何も変わらないと思うのです。

伝統も大切かもしれませんが、いろいろな制度、仕組み、基準を見直す時機に来ているのかもしれません。

_/_/_/

蛇足

多くの横綱が、晩年は休場を繰り返し、そして引退していきます。

それが多くのパターンのようです。

今の豊昇龍の度重なる休場が、この晩年パターンにあたるのかどうか。

わかりませんが、このパターンすらも今後検討すべき対象ではないでしょうか。

もっと言えば、横綱に降格はないというルールも・・・です。

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