誉田哲也『妖シリーズ』全3巻徹底解説|齢400歳、紅鈴(べにすず)の運命は?

  • URLをコピーしました!
 *本記事を含め、当サイトでは広告を掲載しています。

誉田哲也(ほんだ てつや)氏のデビュー作で、後の「姫川シリーズ」へと繋がる原点とも言える伝奇ミステリ「妖(あやかし)シリーズ」。ダークな吸血鬼伝説と日本の妖怪文化が融合した、唯一無二の世界観の作品です。

主人公は圧倒的な美貌と孤独を背負うヒロイン・紅鈴(べにすず)。彼女は齢400歳。もちろん人間ではありません。人の血を喰らい不老不死を続けてきた異形「闇神(やがみ)」一族。

この「妖シリーズ」シリーズ3作は、紅鈴の壮大な愛と別離、そして出遭いの物語を描いています。

本記事では、シリーズの『妖の華』『妖の掟』『妖の絆』の3冊を徹底解説。紅鈴と闇神(やがみ)の運命、シリーズを貫くテーマ、姫川シリーズとの繋がりまで、ファンならずとも必読の内容をお届けします。

スポンサーリンク

この記事で分かること!
  • 誉田哲也氏『妖シリーズ』のワクワクポイント!
  • 『妖シリーズ』3冊それぞれのあらすじ、魅力
  • 『妖シリーズ』と『姫川シリーズ』の関連性
  • 『妖シリーズ』と触れあうお得な方法!

なお、『妖シリーズ』の3冊は、すべて、「聞く読書・Audible」で、今すぐ聞くことができます!

【PR】AmazonのAudible
会員なら対象作品が聴き放題!

無料体験後は月額¥1,500

目次

誉田哲也「妖シリーズ」とは

誉田哲也(ほんだ てつや)氏は、『ストロベリーナイト』などで知られる大人気作家。その誉田氏が2003年に発表したデビュー作『妖の華』から始まる「妖シリーズ」は、現代日本を舞台にしたダークファンタジーであり、吸血鬼伝説と日本的な妖怪観を融合させた独自の世界観が特徴です。

主人公は、妖艶な美貌とスタイルを持つ紅鈴(べにすず)。彼女は人間ではなく、「闇神(やがみ)」と呼ばれる異形一族の存在です。生き血を喰らいながら何百年も生き続ける種族であり、時代を超えて人間社会の闇に生きてきました。

ところで、本シリーズは、刊行順と物語の時系列が逆転している点が特徴です。第1巻『妖の華』が現代、第2巻『妖の掟』はその前日譚、そして第3巻『妖の絆』は江戸時代へと遡ります。

シリーズを追うごとに紅鈴の過去と、彼女が背負う運命が明かされていく構成になっています。

紅鈴(べにすず)と闇神(やがみ)という存在

紅鈴(べにすず)は、闇神(やがみ)という不老不死の種族の一人。闇神は人間の血を吸う(より正確には喰らう)ことで生き続け、日光に弱いという点は西洋の吸血鬼と共通しています。しかし、闇神は単なる怪物ではなく、時に人間社会に溶け込み、愛や孤独、葛藤を抱えながら生きています。

ところで、紅鈴の最大の特徴は、その美貌と圧倒的な存在感。現代では風俗嬢、江戸時代では遊女として生きることで、効率よく生き血を得ていますが、無差別な殺戮者ではなく、時に人間を助けたり、愛したりする複雑なキャラクターです。

また、紅鈴が血を喰らう場面では、彼女には頭に二本の角、口には牙が生え、そして得物を捕食するのです。その容姿のギャップを想像すると・・・恐ろしい。

ところで、闇神が新たな仲間を増やすには「血分け」という儀式が必要となります。この血分けですが、一般的な吸血鬼の物語では、吸血鬼に血を吸われた者が新たに吸血鬼になる・・・というイメージですが、闇神は違います。闇神が人間の血を喰らうときには、その人間の血をほぼことごとく飲み尽くします。血を飲み尽くされた人間は、当然、死ぬ・滅びます。ですから、闇神が単純に人間を捕食することで、捕食された人間が新たな闇神になることは、ないのです。

闇神が新たな仲間を増やすには手順を踏んで「血分け」をすることしか方法が無いのです。そして、齢400歳の紅鈴が生涯で血分けをしたのは、欣治(きんじ)という一人の青年だけ。つまり、運命の青年・欣治と紅鈴との絆が、シリーズ全体の大きな軸となっています。

全3巻の紹介

以下、全3巻の紹介です。

第1巻『妖の華』:現代の闇に生きる紅鈴

誉田哲也氏処女作は、2003年、ウルフ・ノベルズで刊行。その後、2010年、文春文庫で発刊されました。

_/_/_/

物語の舞台は現代。ヤクザに追い詰められた青年ヨシキは、謎めいた美貌の女性・紅鈴(べにすず)に命を救われます。しかし、紅鈴は人間ではなく「闇神(やがみ)」という異形の存在。時を同じくして、喉を猛獣に食いちぎられたような変死体が発見され、警察は紅鈴を重要参考人として追い始めます。

紅鈴は、過去にたった一人だけ血分けをしたパートナー・欣治(きんじ)を失ったばかり。彼女の孤独と哀しみ、そして人間社会で生きる苦悩が、ノワールな雰囲気とともに描かれます。暴力団抗争、警察の追跡、そして闇神としての宿命。現代社会の闇と、紅鈴の孤高の戦いが交錯する一冊です。

この作品は、第2回ムー伝奇ノベルス大賞優秀賞を受賞し、誉田哲也のデビュー作としても高く評価されています。また、後の姫川シリーズのキャラクター「井岡」も登場し、シリーズ間の繋がりを感じさせる点も魅力です。

第2巻『妖の掟』:現代の前日譚、闇神と人間の交錯

シリーズ第2巻『妖の掟』は、第1巻『妖の華』から17年の時を経て、2020年、文藝春秋で発刊されました。その後、2022年、文春文庫で発刊。

シリーズ第2巻『妖の掟』の特徴はシリーズ化まで17年の時を要したことと、そして、これが第1巻『妖の華』の前日談だということです。

_/_/_/

『妖の華』の三年前を描く前日譚。情報屋の辰巳圭一(たつみ けいいち)は、ヤクザに暴行されていたところを紅鈴(べにすず)と欣治(きんじ)に救われます。二人の正体を知らぬまま、圭一は彼らと奇妙な共同生活を始め、やがてヤクザの組長三人殺しという事件に巻き込まれていきます。

紅鈴と欣治は、圭一のために殺しを引き受けますが、その背後には警察や闇神の存在を知る者の影が迫ります。人間社会の闇と、闇神としての生き方、そして紅鈴と欣治の絆がより深く描かれる一冊です。

スポンサーリンク

この巻では、闇神という存在の謎や、紅鈴と欣治の関係性がより明らかに。姉弟のようであり、恋人のようであり、それ以上の存在である二人の絆が、読者の心に強く残ります。現代社会の裏側を描くノワールとしても完成度が高く、誉田ワールドの真骨頂が味わえます。

第3巻『妖の絆』:江戸時代、紅鈴と欣治の運命の出会い

シリーズ第3巻『妖の絆』、第2巻から2年後の2022年に文藝春秋から発刊。まだ、文庫本化はされていません。

この第3巻の特徴は、第2巻の前日譚なのですが、第2巻の現代から、江戸時代に遡ることです。

_/_/_/

シリーズは一気に時代を遡り、江戸時代へ。親を失い、貧しさに喘ぐ少年・欣治(きんじ)と、吉原で遊女として生きる紅鈴の出会いが描かれます。紅鈴(べにすず)は、遊女として男たちを相手にしながら生き血を得ていましたが、欣治との出会いによって初めて「守りたい」という感情を抱きます。

欣治は母を吉原に売られ、絶望の中で生きていましたが、紅鈴に「俺を鬼にしてくれ」と懇願。ここで「血分け」の儀式が行われ、欣治は紅鈴の唯一無二のパートナーとなります。

本作では、闇神の血分けの秘密や、紅鈴自身の過去、そして欣治との純粋な絆が丹念に描かれます。現代を舞台にした前2作とは異なり、江戸の遊郭文化や闇社会の描写も濃密。紅鈴の孤独と、欣治への愛情、そして二人が歩む運命の始まりが、切なくも美しく綴られています。

シリーズを通じて描かれるテーマ・世界観

「妖シリーズ」は、単なる吸血鬼小説やバイオレンス・アクションではありません。紅鈴という不老不死の存在が、時代の移り変わりとともに人間社会の闇や愛、孤独、そして生きる意味を問い続ける物語です。

紅鈴(べにすず)と欣治(きんじ)の関係は、恋人、家族、同志といった枠を超えた深い絆。彼女が人間とどう向き合い、何を守り、何を失っていくのか。シリーズを追うごとに、紅鈴の過去や闇神という存在の謎が解き明かされ、読者は彼女の心の奥底に触れることになります。

また、日本の妖怪文化と西洋の吸血鬼伝説を巧みに融合させた設定も秀逸。闇神の血分けや弱点、社会との共存の仕方など、独自のルールが物語にリアリティと深みを与えています。

姫川シリーズとの関係と原点としての意義

「妖シリーズ」は、誉田哲也の代表作「姫川シリーズ」の原点とも言える作品です。特に、警察官・井岡の登場や、暴力団抗争、警察と闇社会の攻防など、後の姫川シリーズに繋がる要素が随所に見られます。

ちなみに、「姫川シリーズ」第1巻『ストロベリーナイト』は、2006年、光文社から刊行されます。この段階では、「妖シリーズ」はシリーズ化されていませんが、『妖の華』のエッセンス・世界観が『ストロベリーナイト』に活かされています。

誉田氏自身も、「妖シリーズ」で描いた世界観やキャラクター造形が、その後の姫川シリーズを生み出す土壌になったと語っています。紅鈴という孤高のヒロイン像や、闇社会のリアルな描写、そして人間の心の闇に迫る筆致は、姫川玲子らの物語にも通じるものがあります。

「姫川シリーズ」ファンにとって、「妖シリーズ」は必読の“原点回帰”とも言えるでしょう。

読者評価・おすすめポイント

「妖シリーズ」は、誉田哲也ファンはもちろん、吸血鬼やダークファンタジー、ノワール小説が好きな読者にも強くおすすめできるシリーズです。

  • 圧倒的な美貌と孤独を背負う紅鈴のキャラクター
  • 闇神という独自の吸血鬼像
  • 現代から江戸時代までを貫く壮大なスケール
  • バイオレンスと純愛、そして哀しみが交錯するストーリー

また、刊行順と時系列が逆転しているため、どの巻から読んでも楽しめますが、時系列順に読むことでキャラクターの心情や物語の奥行きをより深く味わえるでしょう。

シリーズ3巻の読む順番、お勧めは・・・

繰り返しますが、3巻からなる「妖シリーズ」は、発刊毎に、時代が遡っていくのです。

第1巻『妖の華』は現代。続く第2巻『妖の掟』は第1巻の3年前を描く前日談。そして、第3巻『妖の絆』の舞台は江戸時代まで遡ります。

なので、時系列どおりの理解を優先するならば、「第3巻→第2巻→第1巻」となるでしょう。

ところが、筆者 taoは、あえて時系列の逆、つまり、発刊順に「第1巻→第2巻→第3巻」と読み進めることをお薦めします。

理由は、この3巻シリーズ全体を作品と考えたとき、第1巻目の謎解きが第2巻であり、さらに第2巻の謎解きが第3巻であるという構造になっているからです。

恐らく、それは著者の誉田哲也氏が意図したことでもあるでしょう。

したがって、読むべき順番としてはこうなります。

  • 時系列にしっかり理解するならば「第3巻→第2巻→第1巻」
  • ミステリーのワクワク感を堪能するならば「第1巻→第2巻→第3巻」

『妖シリーズ』を堪能するお勧めはAudible!

『妖シリーズ』3冊ですが、第3巻『妖の絆』は、まだ文庫本化されていないので、ちょっと高いです。

この3冊を電子書籍で購入したとすると、本記事公開日現在、AmazomのKindleなら3冊合計で、税込 3,543円となっています。ここでお勧めはAudibleです。

Audibleは、Amazonがやっている聞く読書のサブスクサービス。

月額 1,500円(税込)で、12万冊の書籍が聴き放題というサービスで、筆者 taoも5年以上このサービスを使い続け、月に平均30〜50冊を聞いて楽しんでいます。

そして、このAudibleに『妖シリーズ』3冊がすべて「聴き放題作品」として取扱があります。

つまり、1,500円(税込)のサブスク料金で、電子書籍ならば 3,543円(税込)の3冊全部聞くことができます。月額サブスクサービスなので、1ヶ月のなかでじっくり聞き返すこともできます!

【PR】AmazonのAudible
会員なら対象作品が聴き放題!

無料体験後は月額¥1,500

まとめ

誉田哲也「妖シリーズ」は、紅鈴という唯一無二のヒロインを通じて、不老不死の孤独と愛、時代を超えた運命を描いた傑作です。

現代から江戸時代まで、闇神という異形の存在が人間社会とどう向き合い、何を守り、何を失ったのか。

その物語は、姫川シリーズの原点としても、ダークファンタジーの新たな地平としても高く評価されています。

ぜひ、紅鈴と欣治の数奇な運命を、あなた自身の目で確かめてみてください。

スポンサーリンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA

目次