高市早苗総理は2025年10月24日、衆参両院の本会議で就任後初となる所信表明演説に臨みました。
高市総理は、自民党と日本維新の会による新たな連立政権を樹立したことを強調し、「政治の安定」をもたらす考えを示しました。
また、「今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る」ことを目指し、日本の未来を切り拓く責任を担う決意とともに、「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と表明しました。
- 高市首相による所信表明演説の主要な内容や主張。
- 国内の各党(与党・野党)からの反応や論評。
- 各国(アメリカ・中国・韓国など)が高市首相および演説にどう反応しているか。
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高市首相の所信表明とは?主な内容とキーメッセージを整理

高市総理は演説の冒頭で、「強い経済」をつくるため、「経済あっての財政」の考え方を基本にすると強調しました。
どんな政策を打ち出したのか?5つの注目ポイント
高市内閣の基本方針と最重要政策は以下の5点に集約されます。
- 「責任ある積極財政」の宣言:
- 経済財政政策の基本方針として「経済あっての財政」の考え方を基本に据え、「責任ある積極財政」の下、戦略的に財政出動を行うことを力強く宣言しました。これにより、税率を上げずに税収を増加させることを目指し,、最終的に政府債務残高の対GDP比を引き下げて財政の持続可能性を確保する道筋を示しました。
- 物価高対策の最優先:
- この内閣が最優先で取り組む課題は「国民の皆様が直面している物価高への対応」であるとし、すでに経済対策の策定を閣僚に指示し、必要な補正予算を国会に提出すると明言しました。
- ガソリン・軽油の暫定税率廃止の決意:
- いわゆるガソリン税の暫定税率について、各党間の議論を踏まえ、今国会での廃止法案の成立を期すことを表明しました。また、軽油引取税の暫定税率の早期廃止も訴え、廃止までの間は補助金で価格引下げに対応するとしています。
- 防衛力強化の前倒し:
- 外交・安全保障政策の基軸である日米同盟をさらに強め、防衛力強化を進めるため、国家安全保障戦略に定める対国内総生産(GDP)比2%水準を、補正予算と合わせて今年度中(2025年度中)に前倒しで達成するための措置を講じることを表明しました。
- 成長戦略の肝は「危機管理投資」:
- 中長期的な経済戦略として「危機管理投資」を成長戦略の肝に据え、経済安全保障、食料安全保障、健康医療安全保障、国土強靭化など,、多様なリスクに対して官民連携で戦略的投資を行うことの重要性を強調しました。
「戦後体制からの脱却」は何を意味するのか
高市総理は、憲法改正について、自らが総理として在任している間に国会による発議を実現してもらうため、憲法審査会における党派を超えた建設的な議論が加速することを期待すると述べました。
また、皇室典範の改正についても、安定的な皇位継承の在り方に関する各党各会派の議論が深まり、改正につながることを期待するとしています。
さらに、今年は昭和100年、来年は昭和100周年であることに触れ、昭和が経験した未曾有の変革(戦争、終戦、復興、高度経済成長)を振り返り、この機会を国家的な節目と捉え、平和の誓いを継承する機会としたいと表明しました。
経済・安全保障・社会政策、それぞれの強調点は?
- 経済・財政政策:
- 物価高対策に加え、医療・介護施設への対応として、診療報酬・介護報酬の改定時期を待たずに経営改善や従業者の処遇改善につながる補助金を措置するとしました。また、税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減するため、給付付き税額控除の制度設計に早期に着手するとしています。加えて、いわゆる103万円の壁について、今年の年末調整では160万円まで対応するほか、高校の無償化・給食の無償化についても来年4月からの実施を目指し制度設計を進めるとしました。
- 安全保障・外交政策:
- 日米同盟を基軸とし、トランプ大統領の訪日の機会に首脳同士の信頼関係を構築し、日米関係を更なる高みに引き上げたいとの意向を示しました。また、北朝鮮による拉致問題を「この内閣の最重要課題」と位置づけ、全ての被害者の早期帰国実現へ「あらゆる手段を尽くす」と決意を述べました。中国とは、建設的かつ安定的な関係を構築しつつ、経済安全保障を含む懸念事項についても率直に対話を重ね、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとしました。
- 社会政策・外国人対策:
- 日本の最大の問題である人口減少対策の検討体制を構築するほか、社会保障制度における給付と負担の在り方について、超党派での国民会議設置を呼びかけました。外国人対策については、一部の外国人による違法行為等に対し、「排外主義とは一線を画す」としつつも政府として毅然と対応すると強調し、土地取得等のルール検討を進めるために担当大臣を置いたと述べました。
与野党の反応:高市演説に対する各党の見解と論点
高市総理の所信表明演説は、連立を組む日本維新の会からは評価されましたが、連立を離脱した公明党や他の野党からは厳しい批判が相次ぎました。
自民・公明のスタンスと連立の行方
- 自民党(与党):
- 高市内閣は、NNNと読売新聞による世論調査で71%という高い支持率でスタートしました。これは歴代の内閣発足時と比較して、菅内閣(74%)や第一次安倍政権(72.4%)に迫る水準です。自民党議員からは「新しいことをやってくれそうという期待感が現れている」との声が聞かれました。
- 公明党(連立離脱):
- 連立を離脱した公明党の斉藤代表は、所信表明演説で「政治改革についての言及が一言もなかったこと」に驚きを示し、「信なくば立たず」と批判しました。特に、企業団体献金について全く触れられなかった点を「画竜点睛を欠く」と指摘しました。世論調査では、公明党の連立離脱を「妥当」と評価する意見が77%に達しています。
立憲民主・共産・維新など野党側の批判と提案
- 立憲民主党:
- 野田代表は、高市内閣の演説を「一事が万事、『決断と前進』という内閣のはずだが、『先送りと後退』の所信表明演説だ」と厳しく指摘しました。特に、ガソリン税の暫定税率廃止について、以前の「年内廃止」の合意から「今国会での成立を期す」へと後退したとし、「明らかに後退と言わざるをえない」と苦言を呈しました。経済対策についても「中身がない」と批判しました。
- 日本維新の会:
- 連立政権の一員である吉村代表は、演説を「高市カラーがよく出た内容」だと評価し、維新が「絶対に譲れない」としてきた社会保障改革と副首都構想が明確に示されたことを「大きな前進」と歓迎しました。一方、連立の絶対条件とした議員定数削減に言及がなかった点については、「国会で決めることで、総理として表明するものではない」と理解を示しつつも、臨時国会中の実現を強く求めていく考えを示しました。
- 国民民主党:
- 玉木代表は、演説の「強い気持ちは伝わってくるものだった」と一定の評価をしつつも、物価高騰対策について「年内に何かできるのか、具体像が見えなかった」と指摘しました。ガソリン税暫定税率の「年内約束通り実施」を改めて求めています。
- 日本共産党:
- 共産党は、高市総理が裏金問題について「決着済み」として不問に付している点や、企業・団体献金禁止に背を向けている点を批判し、高市新総裁では金権腐敗が二度と起きない土壌を整えるのは不可能であると指摘しました。また、多くの国民が求めた消費税減税を総裁選前に取り下げたことについても批判しています。
論点別に見る「対立軸」と「合意点」
- 対立軸:
- 最大の対立軸は、物価高対策の具体性(特にガソリン税暫定税率廃止の実施時期)と、公明党および内閣を支持しない層(支持しない理由の2番目)が優先課題として求める政治と金(政治改革)の不在です。
- 合意点:
- 物価高対策が最優先課題であるという点については、与野党共通の認識です,,。また、連立政権の政策として、日本維新の会が重要視する社会保障改革や副首都構想は所信表明に盛り込まれました。
各国の反応:高市首相と日本外交への見方
高市総理は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と決意を表明しましたが,、その保守的な外交姿勢に対し、各国からは期待と警戒感が示されています。
アメリカは歓迎?同盟深化と経済協力
高市氏の女性初の首相就任は、アメリカ主要メディアでも緊急報道されました。米国ロイター通信(中道系)は、「日本の政治におけるガラスの天井がついに破られた」と前向きに報じ、Foxニュース(保守系)は「日本に新たな鉄の女が誕生した」と好意的です。
高市総理は、日米同盟の抑止力・対処力を高め,、来週に控えたトランプ大統領の訪日の機会に首脳間の信頼関係を構築したいとの意向を示しました,。保守系メディアは「トランプと高市、二人のタカ派が同盟を再定義」と期待を寄せています。一方で、ワシントン・ポスト(リベラル系)は懐疑的で、ニューヨーク・タイムズ(リベラル系)は、外交が「ポピュリズム同士の演出そのもの」であるとの冷笑的な見方を示しています。
中国・ロシアの警戒感とメディア報道
- 中国:
- 高市首相が所信表明演説で防衛費増額の前倒しなどを訴えたことに対し,,、中国外務省の報道官は、「日本が平和的発展を進めているのか強い疑念を抱かざるを得ない」と警戒感を示しました。中国側は日本に対し、平和の道を堅持し、軍事安全の分野で言動を慎み、「国際社会から信頼を失わないよう促す」と述べました。高市総理の首相選出に際し、中国外交部は、歴史や台湾問題に関する政治的約束を守り、日中間の4つの政治文書の原則を遵守するよう日本側に求めています。
- ロシア:
- 高市総理は、ロシアによるウクライナ侵略について、力による一方的な現状変更の試みを許してはならないと強く非難しました。日露関係は厳しい状況にあるとしつつも、日本政府の方針である領土問題を解決し平和条約を締結することを堅持するとしています。
韓国・北朝鮮は沈黙?あるいは牽制?
- 韓国:
- 高市総理は韓国を「重要な隣国」とし、首脳間の対話を通じた関係強化を図りたいと述べました。就任会見で高市総理が「韓国のりもドラマも好き」と発言したことが、韓国の保守系大手紙『中央日報』に「親近感を表明した」として報じられています。一方、革新系の『ハンギョレ新聞』は、日韓関係に否定的な影響を及ぼす恐れがあるとして警戒感を示しています。
- 北朝鮮:
- 北朝鮮による拉致問題について、高市総理は「この内閣の最重要課題」と位置づけ,、全ての被害者の早期帰国実現へ「あらゆる手段を尽くす」と決意を述べました。
外交姿勢に対する国際評価の変化とは?
高市総理は「世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す」と決意を表明し、その保守的な姿勢は、防衛費増額の前倒し決定など、強固な安全保障政策として国内外に発信されています。
国際的には、高市首相の誕生は、「変化への期待」と「現状を守ろうとする力」の間で揺れる時代を映し出す「鏡」として捉えられています。
高市総理が外交の柱とする「自由で開かれたインド太平洋」の下、基本的価値を共有する同志国やグローバルサウス諸国との連携強化に取り組む姿勢は、国際秩序の安定に向けた日本の主体的な貢献として注目されています。
今後の政治と外交はどう動く?シナリオと注目点
国内では法案提出と選挙への影響に注目
国内政治では、物価高対策の実行が最大の焦点です。高市総理は、物価高対策として必要な補正予算の提出,,と、ガソリン税暫定税率の廃止法案の今国会での成立を明言しています,,。これが実現できるかが問われます。 連立相手である日本維新の会は、連立の絶対条件ではないとしつつも、議員定数削減の臨時国会中の実現を強く求めており、この政治改革の行方も国内政局の注目点となります。
高市内閣は71%という高い支持率で発足しましたが、この高い支持率が自民党の支持率(32%)にまだ十分に繋がっていないため、国民の「様子見」の状況下で、高市総理がこの支持率を維持し、どのタイミングで「決断」(解散総選挙)を下すかが今後の政局の最大の注目点です。
国際的にはインド太平洋戦略とどう連動するか
高市総理は、外交の柱である「自由で開かれたインド太平洋」戦略を力強く推進し、時代に合わせて進化させるとともに、同志国やグローバルサウス諸国との連携強化に取り組むと表明しました。
就任直後の26日のASEAN首脳会議、28日のトランプ大統領との日米首脳会談、31日からのAPEC首脳会議と、重要な外交日程が連続しており、これらの場で日本が主体的な外交を展開し、国際社会での存在感を高められるかが、国際戦略の焦点となります。
読者が注視すべき「次の一手」とは?
読者が注視すべきは、高市総理が掲げる「責任ある積極財政」の具体策、特に物価高対策、防衛費増額、少子化対策といった「三重支出」を財政規律とどう両立させるかのバランスです。
今後の補正予算案の審議で明らかになる、給付付き税額控除の制度設計を含めた具体策の動向が重要です。
また、安全保障面では、従来の縦割りを越える国家情報局(仮称)の新設によるインテリジェンス機能の強化と、その権限強化に対する民主的統制(監督)の設計が論点となります。
高市首相の所信表明に対する国内外の反応に関するFAQ
- Q1. 所信表明演説が行われたのはいつですか?
- A1. 2025年10月24日に衆参両院の本会議で行われました。
- Q2. 高市内閣が最優先で取り組む課題は何ですか?
- A2. 国民が直面している物価高への対応です。
- Q3. ガソリン税の暫定税率廃止はいつ実現する予定ですか?
- A3. 今国会での廃止法案の成立を期すとしています。
- Q4. 防衛費増額はいつ前倒しされますか?
- A4. 対GDP比2%水準を、補正予算と合わせて今年度中(2025年度中)に前倒しで措置を講じる方針です。
- Q5. 所信表明で憲法改正についてどのような言及がありましたか?
- A5. 高市総理が在任中に、国会による発議を実現してもらうため、党派を超えた議論が加速することへの期待を表明しました。
- Q6. 連立を組む日本維新の会は、所信表明を評価しましたか?
- A6. 吉村代表は、所信表明を「高市カラーがよく出た内容」だと評価し、特に維新の政策である社会保障改革と副首都構想が明確に示された点を「大きな前進」として歓迎しました。
- Q7. 連立を離脱した公明党の主要な批判点は何ですか?
- A7. 政治改革についての言及が「一言もなかったこと」、特に企業団体献金に触れられなかった点について、「信なくば立たず」と批判しました。
- Q8. 所信表明演説に対する高市内閣の支持率はどうでしたか?
- A8. NNNと読売新聞の世論調査では71%と、歴代内閣発足時と比較しても高い水準でスタートしました。
- Q9. 中国外務省は日本の防衛費増額についてどのような見解を示しましたか?
- A9. 「日本が平和的発展を進めているのか強い疑念を抱かざるを得ない」と警戒感を示し、「国際社会から信頼を失わないよう促す」と述べました。
- Q10. 韓国メディアは高市総理についてどのような報道をしましたか?
- A10. 高市総理の「韓国のりもドラマも好き」という就任会見での発言を、保守系大手紙は「親近感を表明した」と好意的に報じた一方、革新系は日韓関係に否定的な影響を及ぼす可能性に警戒感を示しました。
- Q11. 高市総理の経済政策「責任ある積極財政」の目標は何ですか?
- A11. 「経済あっての財政」を基本に、戦略的に財政出動を行い、税率を上げずとも税収を増加させることを目指し、最終的に政府債務残高の対GDP比を引き下げて財政の持続可能性を確保することです。
まとめ
- 高市総理は「経済あっての財政」を基本とする「責任ある積極財政」を宣言した。
- 最優先課題は物価高対策で、ガソリン税暫定税率の今国会での廃止を目指す。
- 防衛費のGDP比2%水準への前倒し(今年度中)を表明した,。
- 内閣支持率は71%と高水準だが、公明党と野党は政治改革の不在を批判した,。
- 中国は防衛費増額に対し警戒感を表明し、平和的発展の道を堅持するよう促した。
- 韓国メディアは高市総理の就任会見での親近感を示す発言を報じた。
- 中長期的な経済戦略の肝を「危機管理投資」に据えた,。
高市首相の所信表明演説(2025年10月24日)は、「責任ある積極財政」を経済の基本方針に据え,、物価高対策、防衛力強化、危機管理投資を柱とする「強い日本」の実現に向けた決意を明確に示したものとなりました,。演説では、最優先課題として物価高対策を挙げ、ガソリン税暫定税率の今国会での廃止法案成立と、今年度中の防衛費対GDP比2%水準への前倒し,を表明しました。
この所信表明は、高い内閣支持率(71%)という追い風を受けてスタートしましたが、国内では野党(立憲など)から物価高対策の具体性やスピード感の欠如を指摘され,、連立を離脱した公明党からは政治改革への言及がないことに懸念が示されました。
また、外交面では、日米同盟強化や「自由で開かれたインド太平洋」の推進を掲げましたが、防衛費増額の前倒しに対し、中国からは強い警戒感が示されています。今後、国内では補正予算と法案の審議、国際的には連続する首脳外交日程が焦点となります。


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