ノーベル賞・北川進氏のすごい功績と人柄、経歴をわかりやすく解説【音声解説付き】

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2025年のノーベル化学賞は、京都大学の北川進(きたがわ・すすむ)特別教授が、オーストラリアのリチャード・ロブソン教授、アメリカのオマル・M・ヤギ教授とともに受賞する旨が発表されました。

受賞の対象となったのは、金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks, MOF)、または多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer, PCP)と呼ばれる革新的な多孔性材料の開発です。

ところで…

ニュースで「MOF」という言葉を見ても、一体何がすごいのか、そして北川教授がどんな方なのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、私たちの未来を大きく変える可能性を秘めた北川教授の素晴らしい功績と、その魅力的なお人柄、これまでの歩みを、誰にでもわかるようにやさしく解説します。

この記事でわかること
  • 北川進教授の「ビール好きで穏やか」な素顔
  • CO2を回収する「多孔性材料MOF」の革新的な功績
  • 世界的に評価される輝かしい経歴と受賞歴

なお、ノーベル賞受賞に関しては、こちらのノーベル生理学・医学賞受賞が決定した坂口志文氏の記事もどうぞ。

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目次

本記事の音声解説♪

本記事をベースとした音声解説をつくりました。AIとやりとりしながらつくっています。

誤読についてはご容赦ください。

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  • ノーベル賞受賞が決まった坂口志文氏の業績についての音声解説
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ノーベル賞受賞!北川進氏はどんな人?

京都大学高等研究院の副院長および特別教授を務める北川進氏 は、その研究者としての姿勢と人柄の両面で注目を集めています。

穏やかな笑顔の裏にある「しぶとく粘る」探求心

北川教授は、8日夜の会見で、ノーベル賞受賞の喜びについて、「新しいことをするチャレンジは科学者の醍醐味で、辛いこともいっぱいありましたが、新しい物を作っていくことで30年以上、楽しんできました」と語っています。

ノーベル賞の選考委員長からの電話連絡があった際のエピソードもユーモラスに語られています。「最近、変な勧誘の電話がよく掛かってくるのでまたかと思って疑って不機嫌に取ったら、スウェディッシュアカデミーの選考委員長と名乗られた」とのことです。

若手研究者や学生に向けては、「ただやみくもに新しいものを作るのではなく、コンセプトを考え、ビジョンを示し、先を予測する。そこから真の飛躍が始まるのです。これぞ研究の醍醐味だと私は思っています」というメッセージを贈っています。また、「しぶとく粘る。いろんな経験をする。そうすれば、きっと「ダイヤモンドの鉱石」がすぐそばにあることに気がつくことができると思います」とも語っており、粘り強さの重要性を説いています。

私的な側面では、ビールを嗜むのがお好きとのことです。また、探偵もの、警察フィクションノベル、歌舞伎とスーパー歌舞伎、ヨーロッパのスリラー映画を趣味とされています。

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「分子のスポンジ」MOFとは?〜革新的な功績の解説

MOF(金属有機構造体)は、現代社会が直面するエネルギー、環境、水、健康といった地球規模の課題に対する統合的な解決策を提供する可能性を秘めた新材料です。

MOFの基本的な構造と従来の課題

MOFは、金属イオンまたは金属クラスターと、それを繋ぐ有機リンカー配位結合によって結合した、多孔性の結晶材料です。これは有機物と無機物のハイブリッド材料であり、分子レベルで無数の孔を持つ構造(ナノ細孔)を特徴としています。

1989年、リチャード・ロブソン氏が金属イオンを組み合わせて規則正しい結晶ができることを発表しましたが、初期に得られた構造体は、内部の溶媒分子を取り除くと構造が崩壊してしまうという問題を抱えていました。当時の多孔性材料としては、活性炭やゼオライトがありましたが、これらを凌駕する機能を構造的に柔らかい有機物で実現することは、当時の固定概念を覆すものでした。

北川氏がもたらした決定的なブレークスルー

北川教授は、1997年に決定的なブレークスルーをもたらしました。彼は、ゲスト分子(溶媒分子など)を除去した後も三次元構造が維持され、ガスを吸着・放出できる「多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer, PCP)」の概念を実証したのです。この研究を契機に、世界中でMOFの研究が指数関数的に増加しました。

北川氏は、コバルトやニッケル、亜鉛などのイオンを用いた多孔性配位高分子(PCP)によって、分子レベルで気体を取り込めることを実証し、MOF・PCP分野のパイオニアとして認知されています。彼は1998年には、MOFを柔軟にできるというコンセプトを提唱しています。

MOFが「分子のスポンジ」と呼ばれる所以は、その驚異的な表面積にあります。わずか1グラムのMOFの表面積が、テニスコート数面分からサッカー場ほどの広さに相当することもあります。この巨大な表面積と、金属と有機物の組み合わせで孔の大きさや形状を自在に設計できる(テーラーメード)技術が確立されたことが、北川教授の大きな功績です。

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世界が認めた知性!北川氏の華麗な経歴と受賞歴

京都大学から世界へ

北川進氏は、昭和26年7月4日生まれ。京都府ご出身です。

彼は1974年に京都大学工学部石油化学科を卒業し、1979年に京都大学大学院工学研究科石油化学専攻の博士課程を修了して工学博士となりました。

  • 職歴は、1979年に近畿大学理工学部の助手としてスタートしました。
  • その後、1986年から1987年にかけては、Texas A&M大学のCotton研究室で博士研究員を務めています。
  • 1992年に東京都立大学理学部化学教室の教授に就任。
  • 1998年、京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻の教授となり、京都大学に復帰しました。
  • 現在は、京都大学高等研究院の副院長、特別教授を務めています。

ノーベル賞以前からの華々しい受賞歴

北川教授は、MOF研究が世界的に認められる以前から、錯体化学及び材料科学の分野で数多くの権威ある賞を受賞しています。

  • トムソン・ロイター引用栄誉賞(2010年、および2014年から2022年まで毎年Highly Cited Researchersに選出)。これはノーベル賞の有力候補とされる賞です。
  • 紫綬褒章(2011年)。
  • 日本学士院賞(2016年)。
  • 第10回江崎玲於奈賞(2013年)。
  • 英国化学会 de Gennes Prize(2013年)。
  • Chemistry for the Future Solvay Prize(2017年)。
  • 日本化学会学術賞(2002年)および日本化学会賞(2009年)。
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MOFが拓く未来の可能性

MOFの応用は、単なる吸着・貯蔵にとどまらず、人類が直面するエネルギー、環境、医療などの課題解決に大きく貢献すると期待されています。

CO2回収だけじゃない!広がるMOFの用途

MOFの最大の応用分野の一つが環境・エネルギー分野です。

  1. 二酸化炭素(CO2)の回収と分離: MOFは、気候変動対策として求められる、発電所や工場から排出されるCO2を効率的に捕獲・分離し、必要に応じて放出する技術に応用されます。従来の回収方法に比べてより少ないエネルギーで処理が可能です。また、北川氏の研究では、光照射によってCO2の取り込み量を可逆的に制御できる材料も開発されています。
  2. 水素・天然ガス(メタン)の貯蔵・輸送: 水素は次世代のクリーンエネルギーとして期待されていますが、貯蔵と輸送が課題です。MOFは、この水素を安全かつ効率的に貯蔵できる材料として研究が進められています。北川氏の研究室から発足したスタートアップ企業「Atomis」では、MOFを用いた大容量の天然ガスを圧縮する容器(CubiTan®)の開発が進められており、ガスの輸送・貯蔵問題を解決できると期待されています。
  3. 水不足の解決: オマル・M・ヤギ教授らが開発したMOFは、湿度が10%という極めて乾燥した環境でも大気中の水分を吸着し、太陽熱を利用して飲料水として回収できます。これは水不足に苦しむ地域に希望をもたらします。

応用範囲は化学工業や環境分野に留まりません。

  • 医療・生体分野: MOFの多孔性構造に薬剤を封入し、体内の特定の場所で放出する薬物送達システム(ドラッグデリバリーシステム)の研究が進められています。また、光によって一酸化炭素(CO)を放出する細胞培養基質としての応用や、人工イオンチャネルとしての機能も研究されており、ナノ・ミクロ科学の応用分野が広がっています。
  • 触媒・分離技術: MOFは、その調整可能な構造と金属中心を利用することで、より効率的で選択的な化学反応を実現する触媒として期待されています。また、イオン伝導性を有する配位高分子は、燃料電池の電解質としての実用化も検討されています。

MOFの数は爆発的に増加しており、1990年代初頭には数種類しか知られていませんでしたが、2023年時点では10万種類以上が合成され、数十万種類の構造が理論的に予測されています。今回のノーベル賞受賞は、分子レベルでの精密な設計によって持続可能な未来を創造できるという、化学の新しい時代の幕開けを告げるものなのです。

北川進氏に関するFAQ

ここまでの本文と重複しない形で、北川進氏に関する、よくあるQ&Aをまとめました。

  • Q1. 北川進氏の専門分野は何ですか?
    • A1. 無機化学、特に錯体化学が専門です。
  • Q2. 北川進氏のMOF研究はいつ頃からですか?
    • A2. 北川教授がこの分野の先駆けとなり、1990年代から注目され始めました。特に1997年に、溶媒除去後も安定でメタンを吸蔵・脱着できる多孔性配位高分子(PCP)を世界で初めて合成し実証したことが重要です。
  • Q3. 北川進氏の趣味は何ですか?
    • A3. ビールを嗜むのがお好きとのことです。その他、探偵もの、警察フィクションノベル、歌舞伎、ヨーロッパのスリラー映画などが趣味です。
  • Q4. 北川進氏から若い学生や研究者へのメッセージはありますか?
    • A4. 「新しいことにチャレンジすることは科学者の醍醐味」であり、「しぶとく粘る」ことが大事だとなどのメッセージを送っています。
  • Q5. 北川進氏の京都大学での役職は何ですか?
    • 京都大学高等研究院の特別教授であり、2025年現在、副院長も務められています。
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まとめ

北川進特別教授のノーベル化学賞受賞という快挙について、そのお人柄と功績、経歴を解説しました。

北川教授が確立に貢献した分子レベルのスポンジ「MOF(金属有機構造体)」は、極めて高い表面積と調整可能な構造を持ち、CO2の回収や水素貯蔵、水不足の解決など、地球環境問題の解決に大きく貢献する可能性を秘めています。

穏やかな笑顔の裏にある、たゆまぬ探求心と「しぶとく粘る」精神が、この歴史的な発見に繋がったのでしょう。北川教授の研究が拓く未来に、これからも注目していきましょう。

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