大相撲は、直径4.55mの土俵のなかの戦い。
土俵のなかで相手を倒したり、土俵の外に相手を出せば「勝ち」という、一見、単純な判定のようですが…。
実は、微妙な判定が多く、「正しい(?)審判」を下すために、土俵下には5人の勝負審判が配置されています。
東西に1人ずつ、行司溜まりに2人、正面に1人の計5人。
この5人で、際どい判定に白黒つけるわけです。
ご存知のように相撲の最初の審判は行司が下します。
しかし、その行司審判に疑義がある場合は、この5人のいずれかが「物言い」をつけて、勝負審判が協議をして、勝負を決定する、あるいは、「取り直し」を決定するわけです。
5人の目で見ても微妙な場合には、「ビデオ判定」も判断基準にします。
大相撲のビデオ判定導入は意外に古く、1969年5月場所、つまり、すでに55年以上前から。
このようにビデオ判定も含めて、行司&勝負審判5人体制の大相撲ですから、審判は常に適正!…と言いたいところですが、「疑惑の判定」は起きてしまいます。
そんな「疑惑の判定」が、今場所(2024年秋場所)で2つ起きました。
しかも、その2つの当事者が同じでした(当事者が悪いという意味ではありません!)。
それが、大関・琴櫻です。
□ □ □
前振りが長くなりました。
この記事では、今場所、琴櫻戦で起きた「2つの疑惑の判定」について記すとともに、その問題の本質について迫ります。
琴櫻戦で起きた2つの疑惑の判定
筆者 TOPIOは、今場所(2024年秋場所)の全ての取組を見ているわけではありません。
幕内の戦いをテレビ観戦(あるいはネット観戦)しているだけです。
だから、疑惑の判定は、今回指摘する2つ以外にもあるかもしれませんが、ここでは琴櫻戦に起きた2つの疑惑の判定について語ります。
3日目結びの一番、対・翔猿戦
右のぞかせた琴櫻の右脇の下に頭を突っ込んだ翔猿がしきりに反り技狙うを阻まれて青房詰まっての下手投げで土俵這わすもほぼ同時に飛び出して惜敗。
引用元:日本相撲協会、取組結果「取組解説」より
この公式の取組解説によれば、「翔猿が(琴櫻と)ほぼ同時に飛び出して惨敗」となっています。
NHKテレビ放送をリアルタイムに見ていて、「物言い」がつかないことに違和感がありました。
NHKでビデオをスローで流してくれていたのでそれを確認しても、「物言い」がないのはおかしいと感じていました。
翔猿の身体の大半が土俵に出て(つまり、死に体状態)いるものの、右足だけは確実に土俵のなかにあり、しかも、甲が沿った状態ではない。そんな瞬間、すでに琴櫻は土俵外に「手をついている」のです。
これ、この記事を書くにあたって、改めて、NHK動画をコマ送りのようにして確認しました。
ちょっとスクショしますね。
これは、「物言い」がついてもおかしくない、というかつかなければおかしい判定でしたが、後の祭り。
「物言い」で、行司差し違えで翔猿の勝ち、もしくは、「同体で取り直し」でも良かった。
気持ちが悪い取組結果となりました。
琴櫻が白星を一つ得した、翔猿が白星を一つ損した…そんな感じが残りました。
繰り返しますが、「琴桜が悪い」ということは全くありません。
力士は下された審判に異議を申し立てできないですからね。
過去には、そういうことをやらかした関取がいましたが…。
12日目結びの一番、対・大の里戦
疑惑の判定、またしても結びの一番で、琴櫻。
これは対・翔猿戦とは逆で、「本当は琴桜が勝っていたのではないか」…というものです。
「取り直し前」の一番ですが、これは行司審判通り、琴櫻の勝ちだったのではということです。
以下は、「取り直し」の一番についての「取組解説」。
右のぞかせて出た大の里と突き落とした琴櫻土俵もつれて物言いが着いて結局同体取り直しになるや、こんども右のぞかせた大の里が右に逃れる琴櫻を一層厳しく攻め立てて正面制して1敗堅持の12勝目。
引用元:日本相撲協会、取組結果「取組解説」より
繰り返しますが、疑惑の判定は、取り直し前の判定です。
確かに微妙な判定だったので、「物言い」がついたのは当然といえば当然。
そして、ビデオ判定などを交えての判定が「取り直し」です。
これもリアタイでNHKを見ていましたが、そして、NHKが流したスロー動画を見ても、違和感が残りました。
それは、多くの相撲ファンが指摘していますが、大の里の左手指先が土俵に触れているのではという点。
これ、NHK動画のコマ送りで確認しようとしましたが、NHK動画は「取り直しの一番」しかアップされていません。
なので、YouTubeから、この一番を探してコマ送りしてみました。
結果は、微妙すぎてわかりません。
NHKのリアタイで見ていた、スロー動画では、左指先が土俵をすっているように見えたのですが…。
一応、前述動画のスクショを載せますね。
大の里の左指先が土俵をすっているかどうかは、わかりません。
ところで、2人が土俵を割る瞬間、これを見る限り、大の里はすでに身体が浮いており、ほぼ土俵外。
しかし、琴櫻は「死に体」状態ではあるものの右足はしっかり土俵のなかにあります。
う〜ん、やはり琴櫻の勝ちで良かったのでは…。
これについては、一つの意見として、大相撲データアナリスト・横尾誠氏の意見を引用させてもらいます。
■「誤審」で勝った大の里
引用元:大相撲データアナリストの大相撲日記
最初、私には琴櫻はそれを見ていて土俵を割ったようにも見えた(リプレイで確認してでの感想だが)。最初に見た時は、琴櫻が大の里が土俵を飛び出すより先に土俵の外に足をついた。おそらく琴櫻の負けなのだろうが大の里の体が飛び出ていると判断されれば、取り直しもあり得るなと感じた。だが、リプレイを見ると、どう見ても大の里の手が土俵の砂を掃いていた。琴櫻はそれを見ていて足を出したようにも思えた。もし、琴櫻は大の里の手が見えていたのなら、悔やむに悔やみきれないところはあるだろう。とはいえ、取り直し前の一番、琴櫻、大の里ともに良いところを見せただけに、取り直し後の一番は大の里の強さだけが目立ち、琴櫻が一方的に敗れてしまったこと。ここは琴櫻は反省せねばならないところだろう。
なお、取り直し前の取組について、大の里自身が言及しています。
その言及した理由については語っていませんが…。
最初の一番は左での上手を許したものの、相手の投げに対応して攻め返し、土俵際でもつれた。軍配は大関に。物言いがつき、「勝ちはないかなと正直、思った」そうだが、「気持ちを切らさずに」と誓い、取り直しの一番に臨んだ。
引用元:JIJI.COM
もうひとつ、エックスからポストを掲載させていただきますね。
2つの疑惑の判定、何が問題?
2つの疑惑の判定内容については、以上の通りです。
2つの疑惑の判定、どうすればいいの?
格闘技の判定は、難しい。
だからこその、行司判定、それをカバーするための5人勝負審判制度です。
- 行司審判に疑念があれば、ただちに「物言い」をつける。
- 「物言い」の説明においては、明確に論点を説明して審判を下す。
- 判断に迷う微妙さならば、「取り直し」。
これだけです。
つまり、問題は次の2点です。
- 3日目の「琴櫻 vs 翔猿」戦では、「物言い」をつけるべきところに、何もしなかった。
- 13日目の「琴櫻 vs 大の里」戦では、「物言い」をつけたものの、素人(相撲ファンのことね)の多くが疑念を持った大の里の左指先の「擦り手」に言及することがなかった。
いずれも、すべきことをしなかったことが、モヤモヤを残す原因となりました。
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問題があれば改善するだけです。
3日目の「物言いなし」は、内部で検証し、それが改善に結びついたのでしょうか。
13日目の「物言い」は、その改善結果なのでしょうか。
今場所だけに限ってみれば、疑惑の判定の改善はうまくいっていいないのかもしれません。
2つの疑惑の判定で分かった琴櫻の難点?
これから横綱昇進を狙う大関として辛口に…。
意外と、土俵際が弱い。
横綱として活躍し続けるならば、土俵際で際どい取組をしているようでは…ね。
そして、意外と体力がない(今場所は体調との関係で稽古不足?)。
取り直しの大の里戦では、体力の無さが歴然。
琴櫻が、近い将来の「横綱昇進」を実現し、そして、「横綱として活躍し続ける」ための課題が見えてきたように思います。
頑張れ、琴櫻!!!
大の里の大関昇進がほぼ確実になって、貴景勝引退?
13日目の疑惑の判定の結果、取り直しで大の里が12勝目をあげ、これで場所後の大の里大関昇進が「ほぼほぼ確実」となりました。
これに呼応したのでしょうか、貴景勝が現役引退を表明しました。
首の怪我は深刻だったようです。
これまで本当にお疲れさまでした。
後進を育ててください。
そして、怪我をしにくい体制を大相撲界全体でつくりあげることに寄与してください。
まとめ
たまたまですが、今場所、琴櫻戦で2番、疑惑の判定がありました。
そのことについて書かせていただきました。
今場所は、大の里の2回目の幕内優勝でほぼ決まり状態です。
大の里ファンとしては、それはそれで嬉しいのですが、疑惑の判定や関取陣の怪我の多さなど、問題山積だなと感じています。
一方、NHKで相撲を見ていて、解説の親方が根性論的な解説を繰り返しているのを見聞きして、大相撲界の改革は難しいなと感じてしまうのは、私だけでしょうか。
力士と怪我の問題、他競技とくらべて力士の報酬の少なさ問題、部屋制度の問題点等々。
あるいは、公益財団法人として日本相撲協会が今のような規模感で大相撲を興行しているままでいいのか問題。
これから親方となる貴景勝たち若い人たちが、どう大相撲界を改革できるのか。
それに期待しています。
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