大相撲2025年7月場場所は、前頭15・琴勝峰がまさかの初優勝で幕を閉じました。
「まさか」と書いたのには理由があります。琴勝峰、序盤戦5日間で3勝2敗。一方、7月場所で新入幕を果たした弟の琴栄峰も仲良く3勝2敗。このまま、兄弟仲良く勝ち越してくれれば…と筆者 TOPIOは考えていました。
4日目・5日目に連敗をした琴勝峰は、6日目以降、日増しに琴勝峰の勝ち方に凄みがで、勢いは終盤戦に続きます。
12日目に小結・高安、13日目に新横綱・大の里(初金星!)、14日目に関脇・霧島と連勝し、とうとう単独トップになりました。
そして、迎えた千秋楽。この日の対戦は、7月場所の話題を一番集めた前頭1・安青錦。その話題の安青錦を数秒で退け、圧倒的な優勝を果たしました。
ところで…
琴勝峰に対して、みなさんはこれまで強いなという意識があったでしょうか。
琴勝峰は2023年1月場所で、貴景勝と優勝争いをしました。つまり、優勝争いそのものは経験済みでした。この場所、琴勝峰は11勝同士で千秋楽に貴景勝と対戦。結果は貴景勝が勝ち、12勝3敗で優勝を果たしたのです。
さて、そんなこともあった琴勝峰ですが、この2023年1月場所以外では、目立った活躍がありません。幕内の通算勝率も「.477」と5割を切る関取です。
もう少し詳しく書くと、琴勝峰はこれまで幕内は通算25場所経験。うち、勝ち越しは10場所のみ。そして、その10場所中、6場所が8勝7敗。ギリの勝ち越しです。
琴勝峰は、身長 190cm、体重 167kgと恵まれた体格なのですが、それが生かし切れていません。理由は、怪我が多いからです。
琴勝峰の怪我については、元関脇の貴闘力が「股関節が硬すぎる」と指摘しています。
さて、このような琴勝峰ですが、来場所も引き続き活躍できるのか、もっというと、近い将来大関を狙える関取なのか、その上はどうなのかなどなどを探ってみました。
佐渡ヶ嶽部屋入門まで!
琴勝峰(本名:手計 富士紀、てばかり としき)は、幼稚園のとき、地元の柏市相撲スポーツ少年団に入って相撲を始めます。
小学4年生時には、わんぱく相撲全国大会3位入賞。中学3年生時には、全国都道府県中学生相撲選手権大会個人戦無差別級に優勝。
高校は、大相撲力士は輩出している埼玉栄高校に進学。そこでは、同級生に納谷(現・王鵬)、塚原(現・栃大海)がいました。凄い高校ですね。1年生からレギュラーとなった手計少年は、2年生・3年生のときに、高等学校相撲金沢大会で団体戦連覇。一方、個人戦での優勝はありませんでした。
このような輝かしいアマチュアでの経験と実績を積んだ手計少年は、高校3年生時の在学中に佐渡ヶ嶽部屋に入門。2017年11月場所に初土俵(前相撲)となりました。
入門後、初入幕まで
アマチュアでそれなりの力をつけていた手計は、2018年1月場所からスタート。
序ノ口・序二段をそれぞれ1場所で通過。三段目を2場所で通過したのち、2018年9月場所には幕下になるも負け越しで、翌11月場所は三段目。これを1場所で通過して、その後、幕下5場所で、2019年11月場所には十両昇進を果たします。
序ノ口から数えて12場所目で晴れて関取(十両以上)は、かなり昇進は早いといえます。
この間、手計は優勝経験はありませんでした。序ノ口のとき、チャンスがあったのですが、埼玉栄高校の同級生・塚原に負けて優勝を逃します。この塚原は、のちの栃大海(現十両)です。
なお、手計は十両昇進を機に、四股名を「琴勝峰」に変えました。
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琴勝峰は十両を3場所で通過。2020年5月場所には新入幕を果たしますが、残念ながらこの5月場所は感染症で場所が中止となりました。従って、琴勝峰の幕内は、翌7月場所からとなりました。
ちなみに…
琴勝峰が新入幕を決定づけた2020年3月場所は十両優勝をしました。琴勝峰、初めての「優勝」です。
新入幕後は、二刀流が空回り?
琴勝峰は、押し相撲、四つ相撲のどちらでも相撲が取れる万能型の関取です。
とくに、身長190cm、体重167kgの体格を生かした突き押しの威力は素晴らしいものがあります。
7月場所では、次の対戦で突っ張りで勝ちました。
- 6日目・嘉陽戦
- 7日目・時疾風戦
- 8日目・正代戦
- 10日目・美ノ海戦
- 12日目・高安戦
- 14日目・霧島戦
このなかで、一番良かったと筆者 TOPIOが感じたのは対・美ノ海戦。しかし、日本相撲協会の動画が見当たらなかったので、本章の冒頭には対・高安戦動画を載せました。
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繰り返しますけど、琴勝峰は器用な関取です。四つは基本右ですが、左でもとれます。そして、体格を生かした突っ張りにも威力がある。
琴勝峰は新入幕に際して、二刀流宣言をしています。
2020年の新入幕時点では突き押し、四つのどちらかに絞ることは考えておらず、「押すにしても組むにしても、自分から攻めていきたい。その時の流れを大事にしていきたい。両方を磨いていけたら」と”二刀流”を宣言している。
引用元:WikiPedia
しかし、幕内での活躍は思わしくはなかったのです。
もしかしたら、その器用さ(二刀流?)が、怪我を呼び込んでしまったのかもしれません…。
2度の十両陥落からのカムバック
琴勝峰は、2020年7月場所で幕内をスタートするも、翌年5月場所には十両陥落。十両5場所目となる2022年1月場所で十両優勝(2回目)を果たして、翌3月場所には再入幕。
2023年1月場所には、前述したように大関・貴景勝と優勝争いをするも千秋楽で逃します。そして、同年11月には再び十両陥落。しかし、その場所を十両優勝(3回目)して、十両は1場所で、2024年1月場所には3度目となる入幕を果たします。
しかし、2024年1月場所から2025年5月場所までの9場所、勝ち越しは5場所(うち、4場所が8勝7敗)、4場所負け越し(うち、2場所が途中休場)という、ちょっと残念な成績でした。
理由は怪我です。少し前のことになりますが、2023年5月場所は大変だったのです。
5月場所は2日目から8連敗と苦しみ、10日目の大栄翔戦で「左反復性膝蓋(しつがい)骨亜脱臼」の診断書を提出し、休場した。約5日間の休場および安静加療を要する見通しとなったが、14日目から再出場。
引用元:WikiPedia
今場所(2025年7月場所)も、場所前には怪我の心配があったと聞き及んでいます。それが序盤で3勝2敗という結果を生んだのかもしれません。
しかし、どこでスイッチが入ったのでしょうか。4日目・5日目の連敗のあと、6日目の対・嘉陽戦からは日に日に強さが目立ち、白星を重ねます。そして、終盤戦は「完全覚醒」の感がありました。故障していても、前に出る相撲を取れば勝てるという実感を得たのでしょうか。
とにもかくにも、前頭15枚目からの13勝2敗での優勝は、りっぱ以外の何ものでもありません。
来場所以降の琴勝峰をどう見るか?
琴勝峰が来馬氏以降活躍し続けるための課題は3つでしょうか。
- 現状の故障箇所をできる限り癒やすこと
- 怪我をしない身体作りに専念すること
- 身体を生かした前に出る相撲に徹すること
この結果として、幕内での通算勝率「.477」をどこまで伸ばせるか。
単純ですが、通算勝率がここまで低い関取が大関になった事例は無いかもしれません。
直近の何人かを調べました。
- 正 代 .536
- 御嶽海 .537
- 霧 島 .595
- 琴 櫻 .599
- 朝乃山 .615
- 豊昇龍 .619
- 大の里 .747
- 照ノ富士 .639
幕内の通算勝率を上げるということは、安定的に勝つということです。
そのための条件が前述の3つであり、とくに②と③が重要です。
「前に出れば勝てる!」と、琴勝峰は今場所体感したのではないでしょうか。
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筆者 TOPIOは、琴勝峰の今場所の活躍を考慮して、来場所の琴勝峰の番付予想を東前頭筆頭としました。
8番勝てば、11月場所の三役入りは当確となるでしょうけれど、その後の大関までの昇進を考慮すると、2桁以上の白星、出来れば幕内連続優勝を狙ってもらいたい。
それくらい、力のある関取だと今場所、強く認識させていただきました。
まとめ
筆者 TOPIOは、正直、今場所(7月場所)までに琴勝峰に注目したことはありません。
しかし、これを機に、いろいろと調べました。そして、ポテンシャルの大きさに驚きました。
現状の幕内通算勝率は「.477」と極めて低いですが、前述の「琴勝峰が活躍するための3つの課題」を克服することで、大関以上も狙える関取だということを再認識しました。
これからの大相撲界を支える人材として、来場所以降の活躍も願っています。
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