夏の猛暑が厳しさを増す中、「熱中症警戒アラート」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、この制度がいつから始まったのか、どのような条件でいつ出される(発令される)のか、そして実際に発令されたらどう対応すべきか。これらをを正確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
熱中症警戒アラートは、熱中症による健康被害を未然に防ぐための重要な情報システム体制です。特に学校の部活動やプール活動、保育園での外遊びなど、子どもたちの安全を守るためには欠かせない判断材料となっています。
本記事では、熱中症警戒アラートの制度概要から具体的な対応方法まで、知っておくべき情報を詳しく解説します。
なお、熱中症関連としては、次の記事も参照ください。


熱中症警戒アラートはいつから始まった?制度の背景と歴史
制度開始の経緯
熱中症警戒アラートは、2020年7月から関東甲信地方で試行運用が開始され、2021年4月28日から全国で本格運用がスタートしました。
この制度は、環境省と気象庁が共同で運営しており、熱中症による死亡者数や救急搬送者数の増加を受けて導入されました。
導入の背景
近年の気候変動により、日本各地で記録的な猛暑が頻発するようになりました。
特に2018年の「災害級の暑さ」と呼ばれた猛暑では、熱中症による死亡者数が過去最多を記録し、社会問題となりました。
このような状況を受け、より効果的な熱中症予防対策が求められるようになったのです。
制度の特徴
熱中症警戒アラートの最大の特徴は、気温だけでなく湿度も考慮した「暑さ指数(WBGT)」を基準としている点です。
これにより、従来の気温情報だけでは判断できない、より実態に即した熱中症リスクを評価できるようになりました。
熱中症警戒アラートはいつ出る?発令条件と予測システム
発令の基準
熱中症警戒アラートは、暑さ指数(WBGT)が33以上になると予想される場合に発令されます。
この判定は、各都道府県内の暑さ指数情報提供地点のうち、一つ以上の地点で基準値に達する予想となった場合に行われます。
発表のタイミング
熱中症警戒アラートは、以下のタイミングで発表されます:
前日の午後5時頃:翌日の予測情報として発表
当日の午前5時頃:当日の最新予測情報として発表
これにより、学校や企業、個人が事前に対策を検討し、適切な判断を行うことができます。
対象地域の詳細
発令は都道府県単位で行われますが、各都道府県内に複数の観測地点が設置されており、そのうち一つでも基準値に達する予想となれば、その都道府県全体に警戒アラートが発令されます。
予測精度の向上
気象庁の予測技術の向上により、熱中症警戒アラートの予測精度は年々向上しています。これにより、より確実な予防対策が可能になっています。
学校・保育園での対応 – 部活中止、プール中止、外遊び制限の判断基準
部活動での対応
熱中症警戒アラートが発令された場合、多くの学校では以下のような対応が取られています:
屋外での部活動中止:
原則として屋外での激しい運動は避けるべきとされています。特に野球、サッカー、陸上競技などの屋外スポーツは中止または延期が推奨されます。
室内での軽い活動への変更:
エアコンが効いた室内での軽い練習や戦術練習に変更することが多くあります。
時間帯の変更:
早朝や夕方の比較的涼しい時間帯への変更も検討されます。
プール活動での判断
プール活動についても、熱中症警戒アラート発令時には慎重な判断が必要です:
プール中止の判断基準:
水温が高い場合や、プールサイドでの待機時間が長い場合は中止を検討します。
短時間での実施:
実施する場合も、通常より短時間での活動に制限されることが多くあります。
監視体制の強化:
教員や監視員の配置を増やし、子どもたちの体調変化により注意深く対応します。
保育園での外遊び制限
保育園では、熱中症警戒アラート発令時の外遊びについて、以下のような対応が一般的です:
外遊び時間の短縮:
通常の外遊び時間を大幅に短縮し、室内活動を中心とした保育に変更します。
水分補給の徹底:
こまめな水分補給を促し、子どもたちの体調管理を強化します。
室内活動の充実:
外遊びの代替として、室内での運動や創作活動を充実させます。
各施設での判断基準統一の重要性
各教育機関では、熱中症警戒アラート発令時の対応マニュアルを策定し、職員間での判断基準を統一することが重要です。これにより、一貫した安全対策が実施できます。
個人・家庭での熱中症対策 – 運動禁止と日常生活での注意点
運動禁止の判断基準
熱中症警戒アラート発令時には、個人レベルでも運動に関する厳しい判断が必要です。
激しい運動の禁止:
屋外での激しい運動は原則として避けるべきです。ジョギング、サイクリング、テニスなどの運動は中止または延期を検討しましょう。
軽い運動でも注意:
散歩などの軽い運動であっても、長時間の屋外活動は避け、こまめな休憩と水分補給を心がけます。
室内運動への変更:
エアコンが効いた室内でのストレッチや軽い筋トレなどに変更することが推奨されます。
日常生活での注意点
外出時の対策:
- 帽子や日傘の使用
- 涼しい服装の選択
- こまめな水分補給
- 無理のない行動計画
室内での対策:
- エアコンの適切な使用
- 扇風機との併用
- 室温の管理(28度以下が目安)
- 湿度のコントロール
高齢者・子どもへの特別な配慮
高齢者や子どもは熱中症のリスクが特に高いため、警戒アラート発令時には以下の点に注意が必要です:
高齢者への配慮:
- のどの渇きを感じにくいため、定期的な水分補給を促す
- 室内でも熱中症になる可能性があることを認識
- 家族や近隣住民による見守り体制の構築
子どもへの配慮:
- 体温調節機能が未発達なため、大人以上の注意が必要
- 遊びに夢中になって水分補給を忘れがちなため、大人が声かけを行う
- 症状を適切に伝えられない場合があるため、観察を怠らない
職場での対策
屋外作業の管理:
- 作業時間の短縮や休憩時間の延長
- 作業場所の見直し
- 作業員の健康管理の徹底
室内作業でも注意:
- 適切な室温管理
- 水分補給の促進
- 体調不良時の早期対応
まとめ
熱中症警戒アラートは、2021年から全国で本格運用が開始された重要な熱中症予防システムです。暑さ指数(WBGT)が33以上になると予想される場合に発令され、前日の午後5時頃と当日の午前5時頃に情報が提供されます。
学校や保育園では、アラート発令時に部活動の中止、プール活動の制限、外遊びの短縮など、子どもたちの安全を最優先とした対応が取られています。個人レベルでも、激しい運動の禁止や日常生活での注意深い行動が求められます。
特に高齢者や子どもは熱中症のリスクが高いため、周囲の大人が適切な配慮と見守りを行うことが重要です。熱中症警戒アラートを正しく理解し、発令時には適切な対応を取ることで、熱中症による健康被害を未然に防ぐことができます。
猛暑が続く夏季においては、この制度を有効活用し、自分自身や家族、地域の人々の健康と安全を守っていきましょう。
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