本書『相撲よ!』は2010年初版で、白鵬初の著書です。
御存知の通り、白鵬は日本人女性と結婚しているとは言え、モンゴル出身です。
この本は、口述筆記(語り下ろし)で編まれた書籍です。
出版当時、横綱・白鵬(当時)は横綱・大鵬の大記録「幕内優勝回数32回」を抜き、33回を達成しました。
これを好機として、出版されたのが、本書ではないでしょうか。
ブログ管理人 taoは、この本をかなり読み込んだようです。
たくさんの書き込みや線引きがありますから(笑)。
それでは、書籍紹介を簡単に始めます。
章立て紹介
いきなりですが、まず章立て紹介から。
目次をそのまま載せるのは、著作権に触れるとか。なので、あえて章タイトルは付けずに、章毎の内容を簡単にまとめますね。
- 第1章
- 「もやしのように細い少年」だった白鵬が、モンゴルから日本へ来て、辛い相撲人生をスタートさせるお話。
- 第2章
- モンゴル相撲の横綱だった父のこと、モンゴル相撲のことなど。
- 第3章
- お世話になった同郷の関取たちや、妻との出会いなど。そして、結婚。
- 第4章
- 相撲道について。白鵬が考える相撲道と、その取組姿勢について。
- 第5章
- 伝統としての大相撲。
書籍帯紹介
前述の章立て紹介を補足する意味で、本書籍の帯の宣伝コピーを列挙させていただきます。
- 双葉山との夢の中での対戦
- 天皇陛下からのお言葉
- モンゴルの英雄である父
- 蒙古斑と誕生の秘密
- “力士スカウト・ツアー”で来日
- 相撲部屋からは注目されず
- 国技の伝統を守ること
- 大相撲問題からの教訓
第4章からの抜粋
私 taoは、この本をかなり読み込んだようで、マーカーや線引き、書き込みで汚れています。そして、一番、汚れている(笑)のが、第4章。
そこで、マーカーを引いた第4章の部分を、少しだけ抜粋して紹介します。
ちなみに、第4章タイトルは「相撲の道」です。
今回、この本を書くにあたって、自分なりに振り返ってみたが、頭に浮かぶいちばん大きな理由は、教えられた稽古が正しいものであったこと、そして人よりも少しだけまじめに稽古をしたことだろうか。
『相撲よ!』P106〜107から引用(注記は、tao記述)
(中略)
親方が指示したのは、力士が伝統的に取り入れてきた稽古方法だった。その稽古とは、「四股」と「鉄砲」、そして「すり足」である。
(中略)
実は私自身も、最初は、この繰り返し[注:四股などの基本稽古のこと]の重要さがわかっていなかったが、相撲を取るうちに身にしみてわかるようになった。
こうした稽古[注:四股などの基本稽古のこと]のよいところは、相撲をとるのに適した筋肉がほどよくつく点だ。ウェイトトレーニングで鍛えると、比較的硬い筋肉ができあがるのに対し、伝統的な稽古でできる筋肉は柔らかい。
『相撲よ!』P110〜111から引用(注記は、tao記述)
(中略)
ベテランの関取の中にも、筋トレをやっているから、いかにも強そうだが、身体が硬いので、よくケガをしている人がいる。組んでみるとわかるが、上半身の力が強いから、上半身に任せた相撲を取るわけだ。そうすると、身体の他のところに無理な力がかかる。だからケガをしやすくなるのではないか。
私はまったく逆で、上半身の力はさほど強くない。いわば幕内レベルだ。しかし足腰は太ももが83センチもあるなど、下半身は大関レベル。だから合わせて横綱なのだと冗談で行ったりしている。
後援会の方から[注:白鵬が尊敬してやまない]双葉山関はウェイトトレーニング的な稽古はせずに、実践の稽古の中で鍛えたのだろうと聞かされた。実践の稽古とは当然、四股や鉄砲である。その稽古量はすさまじいレベルだったようだ。
『相撲よ!』P112〜113から引用(注記は、tao記述)
(中略)
結局、相撲はたんなる腕力の競争ではなく、足腰が決め手なのだ。
(中略)
千代の富士関のビデオも見たが、筋肉がすごい。ただ、あの筋肉は筋トレではできないような気がする。柔らかさがあるからだ。おそらく稽古場で四股や鉄砲を繰り返した結果ついた筋肉だろう。千代の富士関は肩をよく脱臼していたけれども、その癖を治すためには、筋トレはふさわしくない。細かい筋肉を鍛えながらでないと脱臼癖は治らないからだ。
小錦関も、大関時代の体重は230キロくらいあったかも知れないけれど、あの体重を支えられたのは、若いころに下半身を相当に鍛えていたからだと思う。だからこそ、その体重を生かした相撲を取ることができたのだ。
全体をみながら身体を包み込むように鍛えていくには、四股、鉄砲、すり足といった伝統的稽古に軍配があがる。
『相撲よ!』P115から引用(注記は、tao記述)
(中略)
それにしても、長く相撲をみてきたはずの日本人が、古来、伝統的に受け継がれてきた稽古方法よりも欧米の筋トレに流れ、他国から来た私が、伝統的な稽古方法のよさがわかるというのも不思議である。
とりあえずの引用紹介は以上です。
私 taoがなぜ、この部分を引用紹介したのには理由があります。
当時、この書籍『相撲よ!』を読んでいたとき、私の中には一つの疑問があったのです。それは主に2点。
- 白鵬は何故、強いのか?
- 白鵬と他の関取との違いは何なのか?
その答えが『相撲よ!』の第4章にあったと分かり、みなさんに紹介した次第です。
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ところで、横綱・白鵬は、日本の大相撲の伝統・しきたりを知らないとか、取り口が汚いとか、横綱らしくないと揶揄されてきました。
それは外野からだけではなく、身内からもそういう声があがっていました。
白鵬は、『相撲よ!』のエピローグにて、大相撲が抱える問題を憂いています。
もしかしたら、大相撲に強く関わる人達のなかに、問題点の視点が違うことがあるのかもしれません。
それこそが、一番憂うべき「大相撲問題」なのかもしれません。
まとめ
白鵬の初の著書『相撲よ!』の書籍紹介をさせていただきました。
相撲に似つかわしくない容姿で日本に来た少年が大横綱になるまでの流れがよく分かる本です。
また、なぜ、白鵬が強かったのか、日本人関取と何が違ったのかが良くわかる本でもあります。
伝統が全てと言うつもりはありませんが、脈々と流れてきた歴史のなかに答えがある場合もあるのです。
白鵬は現在、宮城野親方として後継育成をしています。
宮城野親方の薫陶を受けた関取たちが、未来の大相撲界を変え、ひっぱっていくことを期待しています。
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以下、私 taoが読んだ白鵬関連本を再掲しますね。
- 『勝ち抜く力』白鵬翔著(悟空出版)
- 幕内優勝最多三十三勝目を挙げたの白鵬の言葉
- われ未だ白鵬たりえず
- 幕内優勝最多三十三勝目を挙げたの白鵬の言葉
- 『相撲よ!』白鵬翔著(角川書店)
- 終章の結論は・・・
- 相撲は神事
- 終章の結論は・・・
- 『白鵬伝』朝田武蔵著(文藝春秋)
- 297日ぶりの黒星(対・稀勢の里戦)
- 茫然自失から
- 297日ぶりの黒星(対・稀勢の里戦)
- 『白鵬のメンタル』内藤堅志著(講談社新書)
- スポーツトレーナーである著者の言葉
- 強さには理由があります。成功にも理由があります。しかし、それは決して盤石なものではなく、つねに弱さも含んでいます。大事なのは、誰もが持っている「弱さ」とどう向き合うか、たえず襲ってくる「ストレス」をいかにコントロールし、自分らしさを発揮しつづけるかです。
- スポーツトレーナーである著者の言葉