- 2025年7月17日注記:
- 朝乃山は5日目に取組あり、勝ちました。通算で2勝1敗となっています。
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試練と怪我に打ちのめされても、土俵に立ち続ける朝乃山。
かつて大関まで上り詰めた「右四つ」の相撲は、その怪力と盤石の型で多くのファンを魅了しました。
しかし、度重なる負傷は、彼の相撲に変化をもたらしています。全盛期の力強さは失われたのか?それとも新たな境地を開いているのか?
技術的な視点から、朝乃山の相撲の真髄と、今後の復活への鍵を深掘りします。
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1. 大関を掴んだ盤石の「右四つ」
朝乃山の代名詞ともいえるのは、その盤石な「右四つ」の相撲…
中学校時代は押し相撲であった朝乃山は、高校時代に恩師の浦山英樹から四つ相撲を学び、これが大相撲での取り口となりました。
右四つになると非常に強く、右を差して胸を合わせ、足を寄せて寄るか上手投げで仕留める速攻相撲が持ち味でした。懐が深く、廻しを取る手がよく伸びる点も特徴です。
特に、右差しを深くねじ込み、左前みつを掴むと、彼にとって十分な体勢となりました。
2. 全盛期の強さの源泉
元横綱・稀勢の里も認めた圧力と型…
朝乃山の全盛期の強さは、その圧力と確固たる型にありました。左四つの名手である元横綱・稀勢の里も、右四つの強い朝乃山としばしば稽古を行い、「当たりが強い。伸びしろもまだまだある」と高く評価していました。
まわしを引いても安易な投げに頼って墓穴を掘ることが少なくなかったため、師匠の高砂から「攻めろ。四つ相撲でも攻撃的にいかない限り勝てない」と注意を受け、この課題を改善しました。
2019年頃からは、右からの掬い投げも武器にするようになり、立合いの厳しさも増し、左上手が取れない相手には突き放す相撲も取るようになりました。
こうした相撲の幅が、大関昇進へと繋がっていったのです。
3. 怪我による変化
踏み込みの甘さと、前に落ちる相撲…
大関陥落の要因となったのは、新型コロナウイルス対応ガイドライン違反と虚偽報告という不祥事でしたが、復帰以降、朝乃山は度重なる大怪我に見舞われ、その相撲内容にも変化が見られます。
特に深刻だったのは、2024年7月場所での左膝前十字靭帯断裂、左膝内側側副靭帯損傷、左大腿骨骨挫傷という大怪我です。この怪我は、関係者から「1年は土俵に戻れないかもしれない」と言われるほどのものでした。
また、2024年5月場所も右膝靭帯損傷で休場しており、この1年間で本場所を3度途中休場しています。 巡業においても、2023年秋巡業での左ふくらはぎ肉離れ、2024年春巡業での右膝靭帯損傷、夏巡業での右足親指の負傷 など、「ケガのオンパレード」となっています。
親方からは、「故障箇所をかばって、別の部位に負担がかかっていることもあるかもしれない」との指摘もあり、焦って無理な体の使い方をしている可能性も指摘されています。
これらの怪我は、本来の彼の強みである盤石な右四つの相撲における踏み込みや、相手に圧力をかける動きに影響を与えていると考えられます。
4. 現在の戦い方は…模索中?
勝ちに徹する相撲と、見え隠れする本調子とのギャップ…
現在の朝乃山の相撲は、怪我の影響を受けつつも、勝ちに徹する姿勢がうかがえます。
2025年3月場所では、235日ぶりに土俵に復帰し、三段目で7戦全勝優勝を果たしました。この場所では、師匠や母親からの支えが原動力になったと語っています。
しかし、復帰後も試練は続いています。2025年5月場所では、十両復帰がかかる一番で黒星を喫し、十両復帰が消滅しました。現在は西幕下筆頭の地位にあり、まだ本調子とは言えない状況です。
2024年7月場所からは、これまでの漆黒のものではなく、鮮やかな輝く緑色の締め込みに変えたとコメントしています。これは「土俵に上がれる喜び。これを大事にしたい」という彼の前向きな気持ちの表れと言えるでしょう。
一時期はちゃんこ番や雑用もこなしながら、地道に稽古を重ねてきた朝乃山。「三役復帰へ一から出直したい」と語る彼の「禊」の道のりは、まだ続いています。
5. 朝乃山の技に関する、よくあるQ&A 5つをリスト
朝乃山の技に関する、よくあるQ&Aをまとめました。
- Q1: 朝乃山の最も得意な技は何ですか?
- A1: 朝乃山は「右四つ」の相撲を得意としています。右を差して胸を合わせ、相手を土俵際まで寄るか、上手投げで仕留めるのが持ち味です。
- Q2: 全盛期の朝乃山の相撲の強さはどこにありましたか?
- A2: 全盛期は、右四つからの強烈な圧力と、そこからの速攻相撲が強みでした。元横綱・稀勢の里もその「当たり」を評価し、高砂からの指導で「攻める四つ相撲」を確立しました。
- Q3: 怪我は朝乃山の相撲にどのような影響を与えましたか?
- A3: 特に左膝前十字靭帯断裂などの度重なる大怪我は、得意の右四つにおける「踏み込みの甘さ」や、前に出る相撲の安定感を損なう影響を与えています。怪我をかばうことで、他の部位に負担がかかることも指摘されています。
- Q4: 朝乃山は今後、相撲の型を変える必要があるのでしょうか?
- A4: 怪我の影響で全盛期の「型」を完璧に取り戻すのは難しい可能性があり、現状を乗り越えるために新しい戦い方や引き出しを増やすことが完全復活への鍵となるかもしれません。
- Q5: 現在の朝乃山はどんな相撲を取っていますか?
- A5: 現在は怪我からの回復途上にあり、勝ちに徹する慎重な相撲が見られます。怪我を抱えながらも、土俵に上がれる喜びを胸に、一歩ずつ番付を上げていくための相撲を取っています。
まとめ
完全復活への鍵は「新しい型」の確立にあるのか…
朝乃山の復活への道は、単に失った番付を取り戻すだけでなく、怪我という肉体的な課題を乗り越え、いかに自身の相撲を再構築できるかにかかっています。
全盛期の代名詞であった「右四つ」の盤石な型は健在ですが、度重なる膝の負傷は、その踏み込みや圧力に影響を与えている可能性があります。
横綱・照ノ富士が「死」と向き合う中で相撲を変革させたように、朝乃山もまた、自身の肉体の現状を受け入れ、それに対応した「新しい型」を確立することが、完全復活、そしてその先の栄光を掴むための鍵となるでしょう。
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