2025年7月場所序盤を4勝1敗で乗り切った東前頭筆頭・安青錦(あおにしき)。
安青錦の序盤戦は横綱・大の里には完敗だったものの、大の里以外の上位陣、すなわち横綱・豊昇龍、大関・琴櫻、関脇・霧島、関脇・若隆景を撃破。この強さは本物です。
6日目から始まる中盤戦で、小結・欧勝馬、小結・高安、西前頭筆頭・若元春を撃破すれば、あとは下位者のみ。安青錦は無双状態になってしまうかもしれません。それは…
- 今場所、安青錦の幕内初優勝もあり得る
ということです。
十両昇進以降、4場所連続での2桁勝利をあげている安青錦。「5場所連続」も確実になってきています。結果、来場所の関脇昇進の可能性も高くなってきました!
ところで、あなたは安青錦の強さの源泉を語れますか?
この記事では、そんな安青錦の強さを分析しました。これ以降は、この記事を土台にして、あなたが分析したように振る舞っても結構ですから、安青錦の強さを喧伝してください!
なお、過去のこの記事もぜひ、お読みください。

安青錦の7月場所序盤戦を振り返る
この章では、安青錦は進化している!ということをお伝えします。
7月場所初日、大関・琴櫻戦
過去対戦は、安青錦の0勝1敗。
5月場所の11日目、小手投げで負けています。このとき、安青錦は立ち会いから低く頭をつけるいつもの形に持っていこうとしますが、琴櫻がそれをさせてくれません。最後は、安青錦の下手投げ、琴櫻の小手投げと投げの打ち合いですが、こうなると力の差が出てしまいます。ほぼ同体のような感じでしたが、安青錦は琴櫻の小手投げに敗れました。物言いはつきませんでした。
今場所の対戦です。先場所の反省を踏まえてか、安青錦は立ち会いから得意の形(頭をつけ低い体勢)に持って行くことに成功します。その後、琴櫻の不意をつく見事な内無双で勝利ゲット!
7月場所2日目、横綱・大の里戦
過去対戦は無く、初顔合わせ。
安青錦は前日、絶妙な内無双で大関・琴櫻を撃破。得意の「頭をつけた低い形」に持って行けば、安青錦に勝機あり、でしたが…。
立ち会いからの横綱・大の里の馬力になすすべも無く粉砕(押し出し)されてしまいました。この反省を来場所にどう生かすか、いまから楽しみですね。
7月場所3日目、横綱・豊昇龍戦
横綱・大の里戦と同じく、過去対戦は無く、初顔合わせ。
勝機があるとすれば、毎回書いていますが「安青錦得意の頭をつけた低い体勢」に持って行くことです。
立ち会い、そうそうにその形が出来た安青錦。豊昇龍はそれをほどこうとくるくると回り込みます。豊昇龍のその早い動きに、臆すること無くついていった安青錦。豊昇龍のスキをついての渡し込みで初金星です。
しかも、この金星には「初土俵から12場所目での金星獲得は、付け出しを除けば年6場所制となった1958年以降で最速記録」と大記録付きでした!
一方、安青錦戦で序盤連敗を喫した豊昇龍。その後、5日目から休場となってしまいます。今振り返れば、この安青錦戦が休場の遠因になったのかもしれません。それくらい「鮮やかすぎる横綱の負け」でしたから…。
7月場所4日目、関脇・若隆景戦
過去対戦は、安青錦の0勝1敗。先場所の10日目でした。かねてから、若隆景に尊崇の念が強く、その憧れの関取との初戦でしたが、肩透かしで黒星。
先場所の戦いを振り返ります。安青錦の戦いは決まっています。必勝パターンの「頭をつけて低くする体勢」を早くつくることです。立ち会いから突っ張り合いの攻防を続けるも、いよいよその体勢を作ることができた安青錦。そのまま土俵際まで攻め込みますが、いかんせん体勢が少し不十分でした。そのスキをついて、若隆景が肩透かし。やはり、若隆景は相撲がうまい、土俵際の粘りは一品です。
さて、そんな先場所の反省を踏まえた安青錦。当然狙うのは、いつものパターン・体勢です。まるで先場所のデジャヴのような展開。立ち会いの攻防のなかで、必勝パターン体勢を狙う安青錦。そして、その体勢をつくりあげました。そのまま、先場所同様に土俵際まで追い込みます。先場所と違うのは、常に若隆景に対して前向きの体勢をキープしたことです。これには若隆景もたまらず、引くしかない。そこをついて押し出し。先場所のリベンジを果たしました。
この一番を見て筆者 TOPIOは確信しました。
安青錦は現段階で十分に関脇以上の力があると..。
7月場所5日目、関脇・霧島戦
安青錦、連日の関脇戦。過去対戦は無く、初顔合わせ。
初顔合わせだろうが、過去対戦があろうが、安青錦の戦いはぶれません。立ち会いから得意の型(頭をつけて低くする体勢)に持って行くだけです。そして、安青錦はここまでの4戦中、2戦でその得意の型をつくることに成功しています。相撲好者の霧島に対して、勝機があるとすれば、やはり、得意の型しかありません。
さて、立ち会いから約12秒の攻防の後、安青錦は得意の型をつくりました。こうなると霧島はどう攻めるか迷うハズ。しかし、その迷う間を持たせることなく、初日・琴櫻戦のデジャヴが…。見事すぎるほどの内無双で初顔合わせを白星で飾りました。
安青錦は、過去対戦の反省を糧にする力があるだけでなく、とにかく得意の型に持って行くのに長けている。そして、頭がいい展開をする。そう、すでに無双状態になっているのかもしれません。
安青錦の強さを分析〜過去60戦績を振り返る
安青錦は、2024年11月場所に十両となって以来、連続2桁の白星をあげてきました。
- 2024年11月場所 東十両11 10勝5敗
- 2025年1月場所 西十両5 12勝3敗
- 2025年3月場所 東前頭15 11勝1敗
- 2025年5月場所 東前頭9 11勝1敗
見事です。見事過ぎます。そこで…
安青錦のこの4場所の戦いを、NHKの相撲動画を活用して、すべてチェックしました。結果、ものすごいことがわかったのです。
2024年11月場所 東十両11 10勝5敗
以下、2024年11月場所の安青錦の15番すべてをチェックしました。下記に「型」と書いてあるのは安青錦の得意の型「頭を相手の胸につけて低い体勢をとる」ことです。NHKの相撲解説者が過去語っていましたが、力士にとってこの形はとても辛く苦しいものだそうです。
しかし、7歳から母国ウクライナで相撲を始めた安青錦は、いつの間にかこの型を身につけてしまいました。彼にとって、「普通の力士ならば辛く苦しい型」が「必勝の型」となっていたのです。
- 初 日(⭕勝):十両10・藤青雲
- 型を狙うも、出来ず。それでも勝ちました。
- 2日目(⭕勝):十両12・大青山
- 型を実現。
- 3日目(⭕勝):十両10・阿武咲
- 型を実現。
- 4日目(⭕勝):十両9・大翔鵬
- 型を実現。
- 5日目(×負):十両14・欧勝海
- 型を一時実現するも、途中から頭があがってしまい追い込まれました。
- 6日目(⭕勝):十両14・生田目
- 型を実現。
- 7日目(×負):十両12・栃大海
- 型を狙うも、出来ず。
- 8日目(⭕勝):十両13・琴栄峰
- 型を実現。
- 9日目(×負):十両7・剣 翔
- 型を実現。
- 10日目(×負):十両4・玉正鳳
- 型を狙うも、出来ず。
- 11日目(⭕勝):十両11・千代丸
- 型を実現。
- 12日目(⭕勝):十両13・若 碇
- 型を実現。
- 13日目(⭕勝):十両9・大奄美
- 型を実現。
- 14日目(⭕勝):十両4・志摩ノ海
- 型を実現。
- 千秋楽(×負):十両1・金峰山
- 型を狙うも、出来ず。
ここで気づいていただきたいことが3つあります。1つ目、それは…
- 気づき1:すべての取組で安青錦は愚直に得意の型を狙った
これです。
徹底的に自分の得意の型にこだわり、その実現に集中し、邁進したのです。ただし、戦いは相手があるので、毎回、得意の型が実現できるとは限りません。相手が「それが安青錦の必勝の型」だと知っていれば、なおさら、それをさせまいとするでしょうから。
そこで、気づいていただきたいことの2つ目です。それは…
- 気づき2:狙った型が実現する率が、67%と高い
これです。この場所、15戦すべてで得意の型を狙うも、実現できたのは10戦。でも、この「狙った型を実現できた率が67%」というのはものすごく高率です。格闘技の世界では、信じられないくらいの高率です。
ちなみに、筆者 TOPIOはかつて実際に打ち合う空手をやっていました。大会の優勝経験もあります。得意の型があります。当然、毎回それを狙いますが、型どおりになれる確率は…5割もなかったのです。相手がいますから。
次に、気づいていただきたいことの3つ目です。それは…
- 気づき3:型にハマったときの勝率が90%と高率!
これです。
これまた筆者の空手の実体験から。得意の型にハマったとしても、100%勝つことは無いのです。それでも7割前後は、それで勝ちます。この体験からすると、型にハマれば9割勝つというのは、もの凄いことなのです。
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しつこいですが、重要なことなので、気づき3つをまとめますね。
- 気づき1:すべての取組で安青錦は愚直に得意の型を狙った
- 気づき2:狙った型が実現する率が、67%と高い
- 気づき3:型にハマったときの勝率が90%と高率!
以上を踏まえて、残り3場所も分析してみましょう。
2025年1月場所 西十両5 12勝3敗
- 初 日(⭕勝):十両5・志摩ノ海
- 型を狙うが組むこと出来ず、それでも勝ちました。
- 2日目(×負):十両6・友 風
- 型を狙うも、出来ず。
- 3日目(⭕勝):十両6・英乃海
- 型を実現。
- 4日目(⭕勝):十両7・栃大海
- 型を実現。
- 先場所負けた栃大海に勝つ!
- 5日目(⭕勝):十両8・藤青雲
- 型を実現。
- 6日目(⭕勝):十両2・紫 雷
- 型を実現。
- 7日目(⭕勝):十両9・大青山
- 型を実現。
- 8日目(⭕勝):十両3・剣 翔
- 型を実現。
- 先場所負けた剣翔に勝つ!
- 9日目(⭕勝):十両1・嘉 陽
- 型を実現。
- 10日目(⭕勝):十両1・佐田の海
- 型を狙うも、出来ず。
- 11日目(⭕勝):十両2・朝紅龍
- 型を狙うも、相手が小さく出来ずだが勝つ。
- 12日目(×負):十両4・獅 司
- 型を狙うも、出来ず。
- 初のウクライナ対決は、先輩・獅司が勝ちました!
- 13日目(×負):十両3・竜 電
- 型を実現するも、勝てず。
- 14日目(⭕勝):十両4・白 熊
- 型を実現。
- 千秋楽(⭕勝):十両14・生田目
- 型を狙うも、出来ず。
この場所で、3つの気づきがどうなっているかをリストします。
- 気づき1:先場所同様、すべての取組で安青錦は愚直に得意の型を狙った
- 気づき2:狙った型が実現する率は53%と、先場所の67%を下回った
- それでも、5割以上、狙った型が実現するのは素晴らしい
- 気づき3:型にハマったときの勝率が100%、先場所の90%を上回った
- まさに安青錦の得意の型は「必勝型」である!
この場所で、安青錦のすごさ(気づき3点)が再認識されました。
2025年3月場所 東前頭15 11勝1敗
いよいよ安青錦、新入幕。
前相撲を除き、2023年11月場所・序ノ口、2024年1月場所・序二段を優勝で通過。三段目を1場所で通過した後、幕下を3場所、十両を2場所で通過しての新入幕です。
- 初 日(×負):前頭14・美ノ海
- 型を狙うも、出来ず。
- 2日目(×負):前頭16・朝紅龍
- 型を狙うも、出来ず。
- 3日目(⭕勝):前頭15・佐田の海
- 型を実現。
- 4日目(⭕勝):前頭17・御嶽海
- 型を実現。
- 5日目(×負):前頭14・竜 電
- 先場所のデジャヴ、型を実現するも、勝てず。
- 6日目(⭕勝):前頭13・獅 司
- 型を実現。
- 先場所に続き、2回目のウクライナ対決。前回の負けを雪辱。
- 先場所負けた獅司に勝つ!
- 7日目(⭕勝):前頭18・時疾風
- 型を実現。
- 8日目(⭕勝):前頭17・白 熊
- 型を実現。
- 9日目(⭕勝):十両5・生田目
- 型を実現。
- 先場所は、型を狙うも出来ず、それでも勝ちました。
- 今場所は、しっかり型を実現した上で勝ちました。
- 10日目(⭕勝):前頭16・琴勝峰
- 型を実現した瞬間に勝ち。
- 11日目(⭕勝):前頭9・伯桜鵬
- 何回も型を狙うも、出来ず、しかし流れのなかで勝つ。
- 12日目(⭕勝):前頭11・明 生
- 型を狙うも、出来ず、しかし流れの中で勝つ。
- 13日目(×負):関 脇・大栄翔
- 型を狙うも、出来ず。
- 12日目までの9勝3敗が評価されてか、いきなり三役の対戦が組まれました(実際は11日目までの8勝3敗が評価された結果でしょう)。
- 14日目(⭕勝):前頭6・尊富士
- 型を実現。
- 千秋楽(⭕勝):関 脇・王 鵬
- 型を実現。
- 13日目に続き、またしても関脇戦。でも得意で粉砕。
この場所で、3つの気づきがどうなっているかをリストします。
- 気づき1:先場所同様、すべての取組で安青錦は愚直に得意の型を狙った
- 気づき2:狙った型が実現する率は53%と、先場所同様。
- 5割以上、狙った型が実現するのは素晴らしい
- 気づき3:型にハマったときの勝率が100%で先場所同様。
- まさに安青錦の得意の型は「必勝型」である!
ここまで3場所を見てきたけど、この気づきの3点は確実に安青錦のすごさの源泉です。
2025年5月場所 東前頭9 11勝1敗
それでは5月場所もNHKの相撲動画で確認した結果をリストします。
- 初 日(×負):前頭8・金峰山
- 型を狙うも、全く手も足も出ずに粉砕されました。
- 狙ったと認定したのは、立ち会いの形がいつもと同様だったからです。
- 2日目(⭕勝):前頭7・美ノ海
- 型を実現。
- 先場所負けた美ノ海に勝つ!
- 3日目(⭕勝):前頭8・阿武剋
- 型を実現。
- 4日目(⭕勝):前頭10・明 生
- 何回も型を狙うも、出来ず、しかし流れのなかで勝つ。
- 5日目(⭕勝):前頭9・翠富士
- 型を実現。
- 自分より小さい相手でも、躊躇無く型を実現してしまう。
- 6日目(⭕勝):前頭10・正 代
- 型を実現するも、崩れるが、流れのなかで勝つ。
- 7日目(⭕勝):前頭10・遠 藤
- 型を実現。
- 8日目(⭕勝):前頭6・翔 猿
- 何回も型を狙うも、出来ず、しかし流れのなかで勝つ。
- 小さい相手に型を適用するのは簡単ではない。
- 9日目(⭕勝):前頭5・千代翔馬
- 型を実現。
- 10日目(×負):小 結・若隆景
- 型を実現。
- 11日目(×負):大 関・琴 櫻
- いったん型がハマるが外れ、投げの打ち合いで負け。
- 初の大関戦。
- 12日目(×負):関 脇・大栄翔
- 型を狙うも、全く手も足も出ず。
- 先場所のデジャヴで負ける。
- 狙ったと認定したのは、立ち会いの形がいつもと同様だったからです。
- 13日目(⭕勝):前頭7・伯桜鵬
- を実現。
- 12日目までの9勝3敗が評価されてか、いきなり三役の対戦が組まれました(実際は11日目までの8勝3敗が評価された結果でしょう)。
- 14日目(⭕勝):前頭12・熱海富士
- 型を実現。
- 千秋楽(⭕勝):前頭13・佐田の海
- 型を実現。
いつものように、この場所で、3つの気づきがどうなっているかをリストします。
- 気づき1:先場所同様、すべての取組で安青錦は愚直に得意の型を狙った
- 気づき2:狙った型が実現する率は53%と、先場所同様。
- 5割以上、狙った型が実現するのは素晴らしい
- 気づき3:型にハマったときの勝率が88%で、先場所の100%を下回る。
- それでも安青錦の得意の型は「必勝型」である!
まとめ
過去4場所の安青錦の60番をNHKの大相撲動画を活用して、分析しました。
もう、あなたはおなかいっぱいかもしれませんが、あえて書きます(笑)。
安青錦の強さの源泉、それは3点あります。
- 強さの源泉1:すべての取組で安青錦は愚直に得意の型を狙う。
- 強さの源泉2:狙った型が実現する率は平均5割以上と極めて高い。
- 強さの源泉3:型にハマったときの勝率は、ほぼ9割以上と極めて高い。
- 得意の型は「必勝型」である!
これに併せて、過去4場所の分析のなかで「先場所負けた美ノ海に勝つ!」のような表現を覚えているでしょうか。
安青錦は頭のいい力士で、結構研究を重ねて、先場所負けた相手に勝っているのです。
以上をまとめると、
- 安青錦には必勝の型があり、毎回の取組で愚直に狙い続け、それを勝ちに結びつけている
- 負けた相手は研究を重ね、次には勝つ
これですね。これを続けられる限り、「横綱・安青錦」も夢ではないでしょう。
懸念するとすれば、怪我、おそらく首の怪我になります。
これからも(今日からも)、安青錦の活躍を楽しみにしています!
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