2024年11月1日から、自転車運転中の「ながらスマホ」に対する罰則が大幅に強化されます。
これまでにもスマートフォンを操作しながらの運転は危険だとされてきましたが、事故件数の増加や社会的な要請により、今回の改正道路交通法で厳罰化されることになりました。
本記事では、新たな罰則内容や他にも遵守すべき自転車の交通ルールについて詳しく解説し、安全な自転車利用のためのポイントをお伝えします。
自転車に関する個人的な「ヒヤリハット」
本文に入る前に、筆者 taoが個人的に体験した自転車のヒヤリハットを1つ。
数年前、ロードバイクでロングライドをしていたときのことです。
その日の総距離は230kmほどになったので、帰宅1時間前には、夜間に突入。
当然ですが、ライトをつけ、車道左側を慎重に(15km/h以下のゆっくり速度で)走っていました。すると…
前方から突然、自転車が現れました。
なぜ、私は気づかなかったのか…。
なぜ、前方の自転車は私に気づかなかったのか…
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前方からの自転車は、車道右側通行で、かつ、無灯火。おまけに…
スマホ操作しながらなので、ライトを点灯しているこちら(私)に気づかなかったようです。
私は、とっさに車道側に倒れるような形で難を逃れました。
対向の自転車は一言も発することなく、そのまま走り去りました。
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件の自転車乗りは、高校生(制服らしきものを来ていました)で、夜間無灯火・ノーヘルメット・ながらスマホ。
危険走行の山盛りです。
ここでのポイントは「高校生」ではありませんので、その点は誤解なきよう願います。
この体験以降、とくに「ながらスマホ」は気になり、自転車や車運転中に注意していますが、結構な数、目撃します。
自転車に関する改正道路交通法の概要
さて、2024/11/1施行の改正道路交通法のうち、自転車に関わる改正の概要です。
自転車運転中のながらスマホ(スマホ操作)禁止
2024年11月1日から施行される改正道路交通法では、自転車運転中にスマートフォンなどの電子機器を操作する行為が明確に禁止され、その罰則が大幅に強化されました。
具体的には、道路交通法第71条5の5で…
- 自動車を運転する場合においては、当該自動車が停止している時を除き、携帯電話用装置を通話のために使用し、表示された画像を注視しないこと
とあります。 つまり、スマホなどを手に持って操作する、または画面を注視すること自体が違反になります。
この改正は、ながらスマホによる事故が増加している現状を受けて導入されたものであり、特に都市部では多くの自転車利用者が影響を受ける改正となります。
事故を起こした場合の罰則強化
さらに、自転車運転中のながらスマホによって事故を引き起こした場合、その罰則はさらに重くなります。
具体的には、「6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金」に処されます(改正道路交通法118条1項4号)。
また、「ながらスマホ」は「自転車運転者講習」の対象となります。
このような厳しい措置は、歩行者や他の自転車利用者との接触事故が増加している背景から導入されたものであり、特に人身事故の場合には厳しい処罰が下されることになります。
自転車運転者講習とは…
自転車運転者講習制度は、全国的に導入されている制度であり、自転車運転中に危険な交通違反を繰り返した者に対して、都道府県公安委員会が講習の受講を命じるものです。
この制度の目的は、交通事故の防止と自転車運転者の安全意識の向上です。
なお、この自転車運転者講習の受講命令を受講しないと、受講命令違反で「5万円以下の罰金」に処されます。
【制度の概要】
- 対象者: 自転車運転中に信号無視や一時不停止などの危険な交通違反を3年以内に2回以上繰り返した14歳以上の者が対象となります。
- 講習内容: 講習では、交通ルールや安全運転の重要性について学び、具体的な危険行為の事例を通じて理解を深めます。受講者は、交通事故のリスクを認識し、今後の運転行動を見直すことが期待されています。
- 受講命令: 講習は、都道府県公安委員会から受講命令書が交付された後、3ヶ月以内に受講する必要があります。受講時間や手数料は地域によって異なる場合があります。
【全国的な取り組み】
この制度は、全国の都道府県で実施されており、各地域の警察が中心となって運営しています。
自転車の利用が増加する中で、交通安全を確保するための重要な施策として位置付けられています。
特に、都市部では自転車利用者が多く、交通事故のリスクが高いため、講習制度の重要性が増しています。
このように、自転車運転者講習制度は、全国的に交通安全を促進するための重要な取り組みとして機能しています。
自転車運転者が安全に道路を利用できるよう、制度の周知と受講の促進が求められています。
自転車運転者が守るべきその他の交通ルール
ながらスマホ以外にも、自転車運転者が遵守すべき交通ルールは多岐にわたります。
ここでは、その代表的なルールについて解説します。
車道通行と歩道走行
日本では、自転車は原則として車道を左側通行することが義務付けられています。
自転車は、道路交通法に基づき、車道の左側を通行することが原則とされています。
このルールは、自転車が「軽車両」として位置付けられているため、自動車と同様に左側通行が求められています。
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一方、歩道を走行できる例外としては、「自転車通行可」の標識がある場合や、小学生以下の子供、高齢者など特定の場合のみです。
歩道を走行する際も歩行者優先であり、徐行しなければなりません。
これらのルールを守らないと、重大な事故につながるリスクがあります。
なお、自転車の歩道通行原則禁止は全国的に適用されており、各都道府県や市町村で具体的なルールが定められています。
自転車利用者は、地域の交通ルールを確認し、遵守することが重要です。
特に、歩道通行に関する規則は地域によって異なる場合があるため、注意が必要です。
2.2 信号遵守と一時停止
自動車と同様、自転車も信号や一時停止などの交通標識を守る必要があります。特に交差点で信号無視をすると、大規模な事故につながりかねません。
また、一時停止標識がある場所では必ず停止し、安全確認を徹底しましょう。
2.3 夜間ライト点灯
夜間やトンネル内で自転車を運転する際には、ライト点灯が義務付けられています。
ライトを点灯せずに走行すると、他の車両や歩行者から認識されづらくなるため非常に危険です。
また、多くの自治体では反射材やリフレクター付きベストなども推奨しています。
なお、夜間にライトや尾灯(反射器材)を点けないで走ると5万円以下の罰金。
2.4 飲酒運転禁止
自動車と同様、自転車にも飲酒運転は禁止されています。
飲酒運転によって他人に危害を加えた場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金という厳しい罰則が科せられます。
また、自分自身もバランス感覚や判断力が鈍り、大きな事故につながるリスクがあります。
2.5 ヘルメット着用(努力義務)
2023年4月から、自転車利用者全員に対してヘルメット着用が「努力義務」として推奨されています。
これは法律上義務ではありませんが、安全性向上のため、多くの自治体や警察署で積極的に啓発活動が行われています。
特に子供や高齢者などは、頭部への衝撃から身を守るためにもヘルメット着用が推奨されています。
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筆者はロードバイクやマウンテンバイクが趣味なので常にヘルメットは着用しています。
走行中の点灯は数え切れないくらいあります。
なかでも、ヘルメットを装着していたので、頭を強く打ったものの大過なく済んだ経験が何度かあります。
具体的には…
- 転倒で道路に頭を強打が1度
- 転倒で電柱に頭を強打が1度
- 山を走行中、10mほど滑落が1度
どのときにも、ヘルメットで頭だけは大怪我を防ぐことができました。
ちなみに、転倒でヘルメットを地面などに強打した場合、そのヘルメットは安全性が大きく毀損されているので、必ず買い替えます。
なぜ厳罰化されたのか?背景と目的
今回の改正道路交通法で、自転車関係で厳罰化されたその背景と目的について。
自転車事故の増加
近年、自転車による事故、とりわけスマートフォン操作中による事故件数が増加しています。
警察庁による統計では、近年「ながらスマホ」が原因となった自転車事故件数は毎年増加傾向にあります。
この背景には、スマートフォン普及率の上昇とともに、多くの人々が移動中でもSNSやメッセージアプリなどを頻繁に使用していることがあります。
その結果として注意力散漫となり、歩行者との接触事故や単独事故につながっています。
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より具体的には、次のようになっています。
- 全体の交通事故件数
- 2023年の全交通事故件数は307,930件で、前年とほぼ同じ水準を維持しています。
- 自転車事故件数
- 自転車事故は2023年に72,339件発生し、これは前年の67,673件から増加しています。この増加は、全交通事故件数の中で自転車事故が占める割合が23.5%に達していることを示しています。
- 事故の割合
- 自転車事故の割合は、2019年には12.7%だったのが、2023年には13.6%に上昇しています。これは、全体の事故件数が減少傾向にある中で、自転車事故の割合が増加していることを示しています。
- 特定の事故の増加
- 自転車と歩行者の事故も増加しており、2023年には過去20年間で最も多い3,208件が発生しています。そのうち約40%は歩道。で起きていることが報告されています。
社会的要因と法律整備
また、社会全体として「安全意識」の高まりも今回の厳罰化につながっています。
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自動車だけでなく、自転車も一つの「交通手段」として認識され始めており、その責任も重くなっています。
自転車事故の増加は、特に「ながら運転」や「酒気帯び運転」が原因とされており、これらの行為に対する罰則が強化されることになりました。
結果、改正道路交通法が、2024年11月1日から施行され、これにより自転車運転者の安全意識を高めることが期待されているということなのです。
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また、自転車事故は特に若年層や高齢者に多く見られ、事故の発生を抑制するための対策が求められています。
改正法の施行により、これらの事故を減少させることが期待されています。
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以上のような背景から法律整備が進み、自動車同様、自転車にも厳しい規制と罰則が設けられるようになりました。
安全な自転車利用に向けた今後の取り組み
今後、日本全国で自転車利用者向けの安全啓発活動や教育プログラムがさらに強化されていく見込みです。
例えば、多くの自治体では子供向け交通安全教室や高齢者向け講習会などを実施しており、安全意識向上を図っています。
また、自動車保険同様、自転車保険への加入も推奨されています。
一部自治体ではすでに保険加入義務化が進んでおり、この流れは全国的にも広まっていく可能性があります。
都道府県別・自転車保険加入対応
以下、国土交通省の情報です。
2024年6月1日現在、自転車保険加入を義務としているのは34都府県です。
より具体的に考えてみましょう。
あなたが茨城県(保険加入は努力義務)に済んでいて、ツーリングで東京都(保険加入は義務)や埼玉県(保険加入は義務)に向かったとします。
その場合、あなたが自転車保険に加入していないと、東京都に入った時点で違反となります。
ただし、現状は義務を課している34道府県すべてで、違反に対する罰則はありません。
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自転車保険に関しては、義務・努力義務というような視点ではなく、万一、事故を起こしてしまった場合の賠償のことを考えてみるのがいいのではないでしょうか。
最近では、自転車による対人事故において、高額な賠償金が請求されるケースが増えています。
特に、賠償金が1億円に達する事例も存在し、これは自転車事故が引き起こす経済的な影響の大きさを示しています。
まとめ
2024年11月1日から施行される改正道路交通法によって、自転車運転中の「ながらスマホ」への罰則は大幅に強化されます。
しかし、この規制強化はあくまで安全性向上を目的としており、一人ひとりがルールを守って安全運転することで、多くの事故は防げます。
また、「ながらスマホ」以外にも多くの交通ルールがありますので、それらもしっかり遵守し、安全で快適な自転車ライフを送りましょう。