- 2025年7月17日注記:
- 朝乃山は5日目に取組あり、勝ちました。通算で2勝1敗となっています。
_/_/_/
幕内から二度も転落した朝乃山の土俵人生は、自らの過ちと非情な運命が交錯するドラマです。
一度目は、新型コロナウイルス対応ガイドライン違反と虚偽報告による失墜で三段目まで堕ちました。
そこから復活して、再入幕&再三役(小結)。しかし、大けがで再び、三段目まで堕ちました。
今は、そこからの二度目の復活の真っ最中。
朝乃山のファンたちは、元横綱・照ノ富士(現・伊勢ヶ濱親方)の奇跡的な復活のデジャヴを期待しています。果たして、多くのファンたちの夢は叶うのか…。
_/_/_/
こちらの記事もどうぞ。




1. なぜファンは朝乃山に照ノ富士を重ねるのか
なぜ、朝乃山のファンは、彼に照ノ富士の奇跡の復活を重ねるのか…
朝乃山の大相撲人生はすさまじい。大関経験者でありながら、不祥事による番付降下と復活、そして度重なる大怪我に見舞われての陥落。その再起の道のりは、多くの相撲ファンの心を揺さぶり続けています。
ファンが彼の復活に期待を寄せる時、しばしば横綱・照ノ富士の「奇跡の復活劇」が引き合いに出されます。照ノ富士は、怪我のため大関から序二段まで番付を落とし、医師から「余命宣告」を受けるほどの絶望的な状況を乗り越え、横綱にまで昇り詰めた稀有な力士です。
果たして朝乃山も、照ノ富士のように再び大関、あるいはその上の地位を目指せるのでしょうか。
両者の道のりを詳細に比較し、その共通点と決定的な相違点から、朝乃山の復活の可能性と課題を冷静に考察していきます。
2. 比較分析①【転落の原因】
照ノ富士の復活劇との一つ目の違い、それは、自業自得の「過ち」 vs 不可抗力の「悲劇」。
朝乃山と照ノ富士、両者ともに大関の地位から大きく番付を落としました。しかし、その転落の主な原因には決定的な違いがあります。
朝乃山の場合、その転落は新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン違反による出場停止処分に端を発しています。キャバクラ通いが発覚し、当初は虚偽報告をしていたことも重なり、異例の6場所出場停止という重い処分を受けました。これは、彼自身の「過ち」に起因するものであり、相撲ライターからは「“大関”の自覚はなかったのか」と憤りを感じる声も上がっていました 。
一方、照ノ富士の転落は、度重なる両膝の怪我に加え、2型糖尿病やC型肝炎といった生命を脅かす内臓疾患が主な原因でした。医師からは「このままでは2年近くで死ぬ」という「余命宣告」まで受けたことが彼の著書に綴られています。これは、彼にとっては不可抗力の「悲劇」と言えるものでした。転落の原因が「自己責任」と「病気・怪我」という点で、両者の出発点は大きく異なります。
3. 比較分析②【どん底の質】
両者が経験した「どん底」の状況も、その質が異なります。
番付においては、照ノ富士が序二段48枚目(上から5番目の階級、下から2番目の階級)まで降格したのに対し、朝乃山は三段目21枚目(上から4番目の階級、下から3番目の階級)まで落ちました。番付上の最低位という点では、照ノ富士の方がさらに深い場所からの再出発となりました。
肉体的な状態では、照ノ富士が「両膝の変形性膝関節症、糖尿病」という診断を受けて3場所連続で全休するなど、複数の重病に苦しみました。彼自身が「ケガで番付が落ちたと思われてるみたいですけど、決してそうではないんです。膝のケガをしてからも大関を維持できていたから、ケガだけが原因じゃないんです。そこで糖尿病に罹ったり、C型肝炎にもなってしまった。あと腎臓結石も」と語るほど、複合的な疾患が彼の肉体を蝕んでいました。
対して朝乃山は、出場停止処分からの復帰後も怪我に悩まされ続けています。特に2024年7月名古屋場所で負った左膝前十字靭帯断裂は、左膝内側側副靭帯損傷と左大腿骨骨挫傷も併発する重傷で、関係者からは「1年は土俵に戻れないかもしれない」という声も出ました。彼はこの怪我に対し、左膝靭帯の再建手術を受けています。彼の肉体は、「怪我の連鎖」という形でダメージを蓄積しており、特に得意とする「右四つ」の相撲スタイルが膝や足首に大きな負担をかける可能性が指摘されています。
4. 比較分析③【精神と支え】
「死の淵」からの生還 vs 「信頼回復」。精神的な側面においても、両者の復活劇は異なる性質を帯びています。
照ノ富士は、余命宣告を受けながらも「奈落の底から見上げた明日」という著書に、絶望とそこからの生還、そして支えとなった妻の存在や「イケイケだった」自己評価から感謝の心への劇的な心境の変化を綴っています。彼が戦ったのは、番付やライバルだけでなく、自身の「死」そのものでした。
朝乃山の戦いは、自身の「過ち」によって失った「信頼回復」が大きなテーマとなっています。処分期間中は、若い衆用の部屋で生活し、雑用やちゃんこ番も行っていたと報じられています。師匠である高砂親方(元関脇朝赤龍)は、朝乃山の不祥事発覚時に「師匠として私の不徳の致すところ」と監督責任を認め、彼を支え続けました。高砂親方は朝乃山が気持ちが落ち込んでいた時期を振り返りつつ、「くじけそうになったこと?休んでから(昨年)秋ごろ、半年以上は気持ちも上がりづらかった」「体も大きく戻ってきている。気持ちも落ち着いているような、自分で受けて入れているような感じはあるんじゃないかな」と語っています。また、朝乃山は不祥事を起こしたため、自身の本名にちなんだ四股名に改名し「不祥事を起こし先生の名前を名乗れない」と述べています。故郷・富山の人々も、処分軽減を求める署名活動を行うなど、彼を見捨てずに応援し続けてきました。朝乃山自身も「もう1度、富山のスーパースターになるために頑張りたい」と語り、支えへの感謝と再起への意欲を示しています。
肉体の状態については、朝乃山が2025年3月場所で三段目全勝優勝を果たし、235日ぶりに土俵への復帰を飾りました。彼は「ヒザに向き合いながら稽古に精進したい」と語り、来年初場所(2025年1月)での復帰を目指してリハビリを開始したと報じられています。また、彼は「次にけがした場合、どうにもならない」という厳しい現実を自覚していることも示唆されています¹。
5. 照ノ富士復活との比較に関する、よくあるQ&A
照ノ富士の奇跡の復活との比較に関する、よくあるQ&Aをまとめました。
- Q: 朝乃山は照ノ富士のように復活できる可能性はありますか? A: 照ノ富士と同様に大関経験者であり、番付を大きく落としてからの復活優勝(三段目優勝)を果たしている点では希望はあります。しかし、転落の原因や肉体の状態、精神的な戦いの質が異なるため、照ノ富士と全く同じ道のりでの復活は難しいと考えられます。
- Q: 朝乃山の転落と照ノ富士の転落にはどのような違いがありますか? A: 朝乃山は新型コロナウイルスガイドライン違反と虚偽報告という「過ち」が主な原因で、6場所出場停止となりました。一方、照ノ富士は両膝の怪我に加え、糖尿病やC型肝炎といった重い病気による「悲劇」が主な原因でした。
- Q: 両者の肉体的な「どん底」の状態はどう違いましたか? A: 照ノ富士は両膝の手術だけでなく、余命宣告を受けるほどの糖尿病やC型肝炎といった内臓疾患にも苦しんでいました。朝乃山は、出場停止後の怪我の連鎖に悩まされ、特に左膝前十字靭帯断裂という相撲人生を左右する大怪我を負い、再建手術を受けています。
- Q: 精神的な面での戦いはどのように異なりましたか? A: 照ノ富士は「死の淵」から生還し、絶望の中で感謝の気持ちを見出すという劇的な変化を遂げました。朝乃山は、自身の過ちによって失った「信頼」を取り戻すための、より人間的な再生と反省の日々を送っています。師匠や故郷の人々の支えが、彼の大きな原動力となっています.
- Q: 朝乃山が真に復活するために最も重要な課題は何ですか? A: 最も重要なのは、怪我の再発を防ぎ、長期的に土俵を務められる強靭な肉体を取り戻すことです。また、彼が得意とする「右四つ」の相撲スタイルが肉体に与える負担をどう軽減し、新しい技術を確立していくかも大きな鍵となるでしょう。
6. まとめ
朝乃山が歩むべき「自分だけの復活ロード」とは…
朝乃山の復活劇は、照ノ富士のそれとは異なる様相を呈しています。照ノ富士が「死の淵」からはい上がり、肉体的・精神的な変革を遂げた「奇跡の物語」であるとすれば、朝乃山は自身の「過ち」と向き合い、失われた「信頼」と、度重なる「肉体の限界」を克服していく「人間的成長の物語」を紡いでいると言えるでしょう。
彼の得意な右四つの相撲スタイルは、その力強さゆえに身体への負担も大きいと考えられます。復帰後の怪我の連鎖は、その肉体がまだ大関時代の激しい相撲に耐えきれていないことを示唆しているかもしれません。左膝前十字靭帯断裂という大怪我からの復帰は、まさに正念場です。
しかし、朝乃山は「終わったわけじゃない。しっかり切り替えてやるしかない」と前向きな姿勢を見せています。師匠の高砂親方や故郷富山の人々の変わらぬ支援は、彼の大きな支えであり、彼の「信頼回復の戦い」の証でもあります。朝乃山が目指すべきは、照ノ富士の「奇跡の設計図」をなぞることではなく、彼自身の怪我と肉体、そして過去の経験と真摯に向き合い、新たな相撲スタイルと精神的な強さを確立する「自分だけの復活ロード」なのではないでしょうか。その道のりは決して平坦ではありませんが、彼が再び輝く日を多くのファンが待ち望んでいます。
コメント